東京 芝 とうふ屋うかい(芝公園)/この世ならぬ美味のクリエイター

LIFEIN THE LIFE
2023.09.10

東京タワーの麓、約2000坪の敷地に広がる「東京 芝 とうふ屋うかい」。国内外のゲストに愛される古き良き空間と看板料理の魅力を、料理長の小林 幹氏が語る。

豆水とうふ

豆水とうふ
北海道産の「音更大袖振」「ゆきほまれ」、長野県産の「なかせんなり」、佐賀県産の「ふくゆたか」など、極上の大豆をブレンド。「豆水とうふ」ならではの大豆本来の濃厚な風味となめらかな口当たりを感じる仕上がりになるよう、熟練した職人の目利きで時期によって種類や配合比率を変えている。最初はそのまま味わい、残りは塩昆布を添えると一層甘味を感じる。
外川ゆい:取材・文 Text by Yui Togawa
三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
[クロノス日本版 2023年9月号掲載記事]


情緒漂う一軒で粋な豆腐を食す贅

小林 幹

小林 幹(Takashi Kobayashi)
1966年、東京都生まれ。和菓子職人だった父親を見て育ち、料理人を志す。国内の日本料理店で研鑽を積んだ後、「東京 芝 とうふ屋うかい」が開業した2005年に株式会社うかいへ入社。14年に「とうふ屋うかい 鷺沼店」料理長に就任し、23年3月より現職。

「のれんをくぐれば、そこは江戸」というコンセプトはまさに。築200年の造り酒屋や豪農の屋敷の古材を使用した建物、樹齢100年以上の松などの樹木、錦鯉が泳ぐ池……。一歩敷地に足を踏み入れれば、都会の中心にいることを忘れてしまう。「東京 芝 とうふ屋うかい」は、東京タワーの麓にありながら、食事を楽しむ個室からは一切望むことができない。そこは、江戸の食文化を伝える一軒だからだ。随所に飾られた品々も秀逸で、美術館や博物館のようだと喜ぶゲストも多いと聞く。

 名物の「豆水とうふ」は、厳選した4種類の大豆をブレンドして作った豆腐を、豆乳と秘伝の特製出汁で味わう逸品。「厨房には豆腐場があり、専属の料理人がいます。コトコトし始めたらすぐに火を止め、蓋をしてお客様のもとへ。ゆっくり熱が伝わる有田焼の鍋の余熱によって最適な状態で召し上がっていただけます」。

こう話すのは、料理長の小林 幹氏。艶やかな豆腐は、潔いほどに白一色。優美な正方形で誤魔化しが利かない。口へと運ぶと味覚がリセットされるような清らかな心地に。日頃、食する機会の多い豆腐という食材ゆえに、その味わいの違いに心を打たれるのかもしれない。夏場に訪れるならば、丸くくり抜いた豆腐をじゅんさいと共に涼やかに浮かべた冷製の「松前とうふ」も捨てがたい。

 もうひとつの名物である「あげ田楽」は、中庭の田楽処で焼き上げられ、裁着袴をまとった接客担当が機敏に運んでいく。それはまるで、窓の外に繰り広げられる映画のワンシーンのようだ。ふたつの名物を主軸に職人技を感じる繊細な料理で構成されるコースは、季節の移ろいを届けてくれる。小林氏は、料理を仕立てることはもちろんだが、ゲストと接する時間が好きだと語り、感動や喜びを届けたいという信条で腕を振るう。

 食事を終え、再び東京タワーを望み、現実に戻る時。うかいの空間、料理、接客といった“おもてなし”に、心が豊かに満たされたことに気づく。


東京 芝 とうふ屋うかい

東京 芝 とうふ屋うかい

都会の中心に店を構えながら、55部屋もの個室を完備。海外の要人をもてなす接待などに重宝されるほか、お食い初めなどのお祝い膳も用意する。敷地内のお土産処では、お持ち帰り用の販売も。

東京都港区芝公園4-4-13 Tel.03-3436-1028
月曜定休(祝日の場合は営業)
12:00~L.O.14:30、17:00~L.O.19:00、
土・日・祝11:00~L.O.19:00
平日限定の昼コース8800円~、夜1万4000円~
(サービス料10%別)


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