タキメーターを備えた腕時計。クロノグラフの歴史とともに魅力に迫る

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2023.12.19

スポーティーな腕時計が好みなら、タキメーター付きのクロノグラフを選択肢のひとつに加えてみてはどうだろう。そこでまず、タキメーターとはどういったものなのか、どのように使うのかを知って時計選びに役立てよう。タグ・ホイヤー、オメガ、ゼニスの3ブランドから、タキメーター付きのおすすめモデルも紹介する。

タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ


腕時計のタキメーターとは

タキメーターは元々レーサー向けに作られた機能で、多くのクロノグラフモデルに備わっている。これからクロノグラフモデルを購入しようと考えているなら、まずはタキメーターの用途や役割、魅力も押さえておくといいだろう。

クロノグラフに備わった計算尺

クロノグラフの文字盤の外周またはベゼルには、目盛りが刻まれたモデルが多く存在する。そもそもクロノグラフは、ストップウォッチ機能を持つ腕時計や懐中時計の総称だ。時間だけでなく、各種メーターと組み合わせて使うことで速度や距離の計測も可能になる。

そのひとつであるタキメーターは平均速度を測るための目盛りで、ストップウォッチ機能と併用すれば平均速度が分かる機能だ。数字が刻まれており、12時位置から時計回りに小さくなる。

サイクリングやランニングのスピードが計測できるのはもちろん、仕事でひとつのタスクにかかる時間をチェックするのもひとつの活用方法だ。

クロノグラフの魅力を際立たせる機構

スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル

オメガの「スピードマスター」は、1957年に発表されたファーストモデルより、タキメータースケールをベゼルに刻印。その後のクロノグラフモデルにも影響を与えた。写真はセドナゴールドケースを採用した「スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル」。

クロノグラフの腕時計は、メカニカルな見た目が魅力だ。多くのモデルでリュウズとは別にスタート/ストップボタン、ゼロリセットボタンが設けられており、装飾品というより機器に近い見た目である。

さらにクロノグラフには、30分積算計、12時間積算計といったサブダイアルが設けられている。デザインが煩雑になるという意見も聞かれるが、メカニカルなデザインが好きな人であれば、その複雑さは逆に魅力的に映るだろう。

タキメーターは、そんなクロノグラフの魅力をさらに補強する要素になっている。文字盤の外に目盛りがあることで、よりメカニカルかつスポーティーな見た目になるのだ。


腕時計のクロノグラフがたどった歴史

タキメーター付きのクロノグラフモデルに興味がある人は、クロノグラフがどのような道を歩んできたのかについても知っておきたい。腕時計用クロノグラフの誕生と発展を、時計史に残る出来事とともに紹介する。

腕時計用クロノグラフの誕生と発展

1912年にクロノグラフムーブメントCal.13.33Zを開発したロンジンは、35年にフライバック機構の特許を出願。翌36年にはフライバッククロノグラフ機能を有するCal.13ZN搭載のクロノグラフモデルを発表した。

腕時計用クロノグラフムーブメントは、1912年にロンジンが開発したCal.13.33Zから始まる。その11年後にはブライトリングが、リュウズと別にスタート/ストップ操作ができるボタンを備える腕時計用クロノグラフを発表した。

1930年代にはクロノグラフ機構が小型化し、新たな機能が追加されていく。12時間積算計を備えた腕時計用クロノグラフムーブメントの先駆けは、1933年または1934年にマーテルが発表したCal.285である。11時間59分59秒までは目視で経過時間を確認できる、今日のクロノグラフのベースができた。

1936年になるとロンジンが、ふたつのプッシュボタンを備えたクロノグラフムーブメントCal.13ZNを生み出す。Cal.13ZNは、ゼロリセットと再スタートを瞬時に実行できるフライバック機能も搭載していた。

自動巻きクロノグラフの出現

Cal.3019 PHC

ゼニスが1969年に発表した、世界初の自動巻きクロノグラフムーブメントCal.3019 PHC。3万6000振動/時の高速振動に加え、日付表示や50時間のパワーリザーブも備えていた。

腕時計用クロノグラフムーブメントは、誕生から長らく手巻きのみだった。1948年にはエボーシュメーカーであるレマニアが自動巻きクロノグラフを試作したが、厚みが増してしまい製品化を断念している。

後に完成した自動巻きクロノグラフが、1969年に発表されたゼニスのCal.3019 PHC(通称エル・プリメロ)だ。Cal.3019 PHCは半世紀以上たった今も、傑作ムーブメントとして評価されている。

1969年は、クロノグラフの歴史において特別な年だった。3月にはデュボア・デプラ、ホイヤー、ハミルトン、ブライトリングのスイスブランド勢力が、5月には日本のセイコーが相次いで自動巻きクロノグラフムーブメントや、これを搭載したクロノグラフモデルを発表している。

クロノグラフブームを支えたムーブメントの登場

1980年代以降のクロノグラフ人気には、モジュールメーカーのデュボア・デプラが1983年に発表したクロノグラフモジュールDD2000系が一役買っている。

機械式時計のモジュールとは、ベースムーブメントに載せ、エボーシュ(汎用性ムーブメント)として完成させるための機能性部品だ。ムーブメントを改良せずに搭載できるため、汎用性が高く大量生産に向く。

クロノグラフのブームは1980年代半ばにイタリアから始まり、他のヨーロッパ諸国、アメリカに広がっていった。ロレックスの「デイトナ」やブライトリングの「ナビタイマー」など、クロノグラフの代名詞とされるモデルが注目を集め始めた時代である。


タキメーターを備えた腕時計

タキメーター付きの腕時計は、各ブランドから多くのモデルがリリースされている。中でもクロノグラフが高く評価される3ブランドから、それぞれひとつずつおすすめのモデルを紹介しよう。

タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ CBS2210.FC6534

タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ

自動巻き(Cal.TH20-00)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径39mm)。100m防水。80万8500円(税込み)。(問)LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7054

モータースポーツ向けの時計が人気のタグ・ホイヤーからは、2023年の新作「タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ(Ref.CBS2210.FC6534)」をおすすめしたい。ベゼルが設けられておらず、文字盤の外周に直接タキメーターを刻んでいる斬新な仕様が特徴だ。

盛り上がったタキメーター部分からインデックス辺りの位置まで、なだらかなカーブを描くように傾斜が設けられている。ダイアルカラーにブラック、3つのサブダイアルにシルバーを用いた逆パンダダイアルにも注目したい。

ダイアルのデザインはスポーティーでありながら、ブラックのレザーストラップを組み合わせることによって落ち着いた表情にまとめている。

オメガ スピードマスター 38 コーアクシャル クロノメーター クロノグラフ 324.23.38.50.02.002

オメガ スピードマスター 38 コーアクシャル クロノメーター クロノグラフ

自動巻き(Cal.3330)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約52時間。SS×セドナゴールドケース(直径38mm、厚さ14.7mm)。10気圧防水。112万2000円(税込み)。(問)オメガお客様センター Tel.03-5952-4400

オメガは月面着陸にも携行された「スピードマスター プロフェッショナル」をはじめ、高性能なクロノグラフモデルを展開していることで知られる。そのひとつである「スピードマスター 38」は、ケース径を抑えたユニセックスに着けられるクロノグラフだ。

タキメーター付きの腕時計はメカニカルな印象があるが、スピードマスター 38はエレガントなディテールを備えているので、繊細な雰囲気が好きな人にもおすすめできる。

中でも「Ref.324.23.38.50.02.002」は、セドナゴールドとトープブラウンのレザーストラップを採用し、柔らかい色味で統一。サブダイアルと日付窓を楕円形にしてルックスにひと捻りを加えている。

ゼニス クロノマスター スポーツ ブルー 03.3114.3600/51.M3100

ゼニス クロノマスター スポーツ ブルー

自動巻き(Cal.エル・プリメロ 3600)。35石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm)。10気圧防水。133万1000円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861

ゼニスは自動巻きクロノグラフムーブメントの先駆者だ。2021年にリリースされ、世界的に注目を集めた「クロノマスター スポーツ」は、1/10秒まで確認できるクロノグラフ表示を備えたシリーズで、通常60秒に1回転するクロノグラフ秒針を、10秒間に1回転させることで緻密な計測を可能にした。

「Ref.03.3114.3600/51.M3100」は、クロノマスター スポーツから2023年にリリースされた新作である。メタリックブルーをベースとした3色の文字盤とタキメーター、太めの3列リンクブレスレットで、スポーティーな印象を強めた1本だ。


タキメーターを使った計測方法

タキメーター付きの腕時計を手に入れたら、平均速度を測る方法を覚えて活用してみるのもいいだろう。基本的な操作方法とともに、扱ううえでの注意点を解説する。

操作はスタートとストップだけ

タキメーター付きクロノグラフの使い方は、以下の通りシンプルだ。モデルによって細かい操作は違ってくるが、一般的な仕様の腕時計を例に説明する。

  1. 速度を測りたい対象物(自身や自転車など)が動き始めたときに、クロノグラフの2時位置のボタンを押して計測をスタートする
  2. 1km移動した時点で、2時位置のボタンを押してストップする

後はクロノグラフ秒針が止まった位置のタキメーターの数値を確認すれば、平均速度が分かる。例えば1kmを60秒で移動した場合、クロノグラフ秒針は「60(時速60km)」を指しているはずだ。

正しい順番で操作を

クロノグラフは精密な時計であり、操作の順番を間違うと故障する可能性がある。タキメーターを使う場合も使わない場合も、スタート/ストップ、リセットのボタンは正しい順番で操作しよう。

スタートの次はストップ、リセットの順だ。多くのクロノグラフは2時位置にスタート/ストップのボタン、4時位置にリセットボタンを配置している。

また、1カ月に1回はクロノグラフを駆動して潤滑油が固まらないようにしたり、磁気や落下の衝撃に気を付けたりといった注意点もある。


タキメーター付き腕時計でスポーティーなひとときを

タキメーターは、クロノグラフ機能と併用して平均速度を測るための機能だ。タキメーターが備わった腕時計は、クロノグラフの魅力であるメカニカルな様相とスポーティーさが際立つ。

機能美を楽しみたい人や、クルマが好きな人にはタキメーター搭載モデルをおすすめしたい。この記事で紹介した腕時計を参考に、各メーカーのクロノグラフから気に入る1本を見つけてみよう。


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