シルヴァン・ベルネロンの「ミラージュ」は記憶に残る傑作となるだろう非対称時計だ

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2024.01.08

よく知られている通り、自然界において完璧なシンメトリーは珍しいことである。私たちの顔も対称ではない。一方、時計製造では一般的に、デザイナーは可能な限り視認性を上げるためシンメトリーで時間を表示しようと努める。ただ、34歳のフランス人シルヴァン・ベルネロンは例外だ。ブライトリングのデザインなどで知られるシルヴァン・ベルネロンは自身のブランド「ベルネロン」を立ち上げ、斬新な左右非対称の時計、「ミラージュ」を発表した。

シルヴァン・ベルネロン

ベルネロン「ミラージュ」
手巻き(Cal.CH233)。17石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。18Kホワイトゴールドもしくは18Kイエローゴールド(縦37.5×横33.5mm、厚さ7mm)。30m防水。参考価格5万5000スイスフラン(約920万円)。
Originally published on Montres De Luxe
[2024年1月8日公開記事]


数々の有名ブランドで名を馳せた若きデザイナー、シルヴァン・ベルネロンによる非対称ウォッチ

 時計のデザインにおいて左右非対称は珍しい。リシャール・ミルの「RM 70-01 トゥールビヨン アラン・プロスト」や、カルティエの「クラッシュ」、ヴァシュロン・コンスタンタンの「1972 プレステージ」をはじめ、パテック フィリップやグルーベル・フォルセイ、ディオールの「シフル ルージュ」などの例外をのぞけば、時計は均整の取れたデザインを重視しがちである。

 サルバドール・ダリの有名な「Montres Molles(溶ける時計)」は言うまでもないが、時の流れに対する無力感を表現したもので、エントリーレベルのクォーツモデルとして製作され、美術館で販売されることも多かった。

 シルヴァン・ベルネロンは、左右非対称のデザインを用いた「ミラージュ」によってこのニッチなシェイプウォッチに参入し、他とは一線を画す見事な新作を完成させた。彼の時計を紹介する前に、この34歳のデザイナーがすでにBMWや、ポルシェ、ドゥカティ、そしてIWCなどと仕事をしており、ブライトリングでは現在もプロダクト・マネージャーを務めていることを伝えておこう。

シルヴァン・ベルネロン

ミラージュは、ブライトリングなどを手掛けるデザイナー、シルヴァン・ベルネロンが立ち上げた新興ブランド、ベルネロンの新作である。

 つまりブライトリングの仕事と並行して、もちろんジョージ・カーンの了解のもと、シルヴァン・ベルネロンは個人的に「ベルネロン」ブランドを立ち上げ、「ミラージュ」を完成させたのだ。ミラージュは発表されてから、時計関係のメディアにおいて国際的に多くの記事で取り上げられている。

 ミラージュにとって最も重要なのはそのフォルムだ。ケースははっきりとした個性を持っており、ムーブメントもしかりである。生産は少ない故に、価格にもある程度跳ね返ってくる。

 ミラージュはケース、文字盤、針、地板、ブリッジ、ブレスレットのクラスプに至るまで、すべてがゴールド製の時計である。いずれもヌーシャテル地方に拠点を置く職人たちが作ったスイス製である。

シルヴァン・ベルネロン

ケース、文字盤、針に至るまで非対称の独創的なデザイン。

 ミラージュは2モデルの展開だ。イエローゴールド製の「シエナ」と、ホワイトゴールド製の「プロシアンブルー」である。ベルネロンではステンレススティール製の時計は扱っておらず、貴金属製の高級モデルのみを扱っている。

 縦37.5mm×横33.5mm、厚さ7mmというケースは、現代では比較的小ぶりだ。

 砂粒を思わせるケースの形状は、13世紀のイタリアの数学者フィボナッチによって発見された、フィボナッチ数列を想起させる。

シルヴァン・ベルネロン

自然界に多く存在するフィボナッチ数列に、デザイナーたちも魅了されている。

 フィボナッチ数列はそれぞれの数が、直前の2項の和となる数列である。

 有名な黄金比(パテック フィリップのエリプスを筆頭に時計業界ではよく見かける)に関係しており、0と1から始まり、1(0と1の和)、2(1と1の和)、3(1と2の和)、5(2と3の和)、8(3と5の和)と続く。このように限りなく続く。

 科学者やデザイナーがフィボナッチ数列や黄金比に魅了されるのは、これらの定数が数学の世界をはるかに超えているからである。

シルヴァン・ベルネロン

ストラップにはハイブランドでも多く使われているバレニアレザーを採用。

 これらの数列は、私たちを取り巻く自然の中にはあちこちにある。木の枝ぶり、葉の分岐、松ぼっくりの構造、そして最も知られているであろうカタツムリの殻の渦巻などだ。

 ベルネロンがミラージュの創作において触発されたのはこの数列なのである。大胆な形状のベゼルはポリッシュ仕上げで、ケースはサテンとヘアライン仕上げの組み合わせだ。

 文字盤はセクターダイヤルを思わせるもので、インデックスや手仕上げの針は歪み、6時半位置のスモールセコンドも同様である。

シルヴァン・ベルネロン

ケース形状に合わせて開発されたムーブメント。凝った装飾にも注目である。

 魅力溢れるこの時計は、一部がゴールド製で、非常に豪華な装飾が施された2万1600振動/時の手巻きムーブメントを搭載し、パワーリザーブは約60時間である。裏蓋はトランスパレントバックだ。

 ベルネロンはわずか10年間で、年間24本しか生産しない予定だ。このミラージュは、間違いなくこの10年で最も記憶に残る時計となるだろう。



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