レトロウォッチ愛好家にすすめたい、ハミルトン「カーキ パイロット パイオニア メカ クロノグラフ」

FEATUREWatchTime
2023.06.08

レトロなデザインで、基本的な機能を持ち、日常使いに向いた、信頼性の高いムーブメントを搭載するエントリーレベルのクロノグラフウォッチ。そんな腕時計を探している人に紹介したいのが、ハミルトンの「カーキ パイロット パイオニア メカ クロノグラフ」だ。オリジナルの要素を残しながら現代的にアップデートされた、完成度の高い復刻モデルだ。

カーキ パイロット パイオニア メカ クロノグラフ

ハミルトン「カーキ パイロット パイオニア メカ クロノグラフ」
手巻き(Cal.H-51-Si)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40mm、厚さ14.35mm)。10気圧防水。31万1300円(税込み)。
Originally published on watchtime.com
Text by Alexander Krupp
2023年6月8日掲載記事


独特なヴィンテージのミリタリー・アビエーションデザイン

 “レトロな時計”には、さまざまな疑問がついてまわる。レトロであるために必要なことは何なのか? 何をすることが許されているのか? 

 例えば、歴史的なモデルでは風防にアクリルガラスが使われてることが多いが、サファイアクリスタルは許容されるのか? オリジナルが手巻きだった場合、自動巻きムーブメントを搭載してもいいのか? 現在では多くの人が基本的性能としてとらえているデイト表示についてはどうだろう。

 ハミルトンは「カーキ パイロット パイオニア メカ クロノグラフ」で、オリジナルモデルとの整合性と現代的なアップデートのバランスを取ることに成功した。ふたつのカウンターを備え、デイト表示を持たないこの時計は、1970年代にハミルトンがイギリス空軍に供給したパイロットウォッチの復刻版である。

 オリジナルと同じく手巻きのムーブメントを搭載することで、十分なクリック感と巻き上げの感触を楽しめる、メカニックのファンにとってたまらない1本となった。ムーブメント自体は最新型であり、オリジナルよりも長い約60時間のパワーリザーブに加え、耐衝撃性と耐磁性、温度変化への耐性に優れたシリコン製ヒゲゼンマイを備えている。

 風防はオリジナルを踏襲したボックスシェイプだが、キズのつきやすいアクリルではなくサファイアクリスタルが採用されている。

 こうしてオリジナルモデルの要素と現代的な要素をうまく組み合わせることで、カーキ パイロット パイオニア メカ クロノグラフは多くのことが可能な時計となった。一方で、自動巻き、60時間の積算計、デイト表示などのいくつかの機能は省かれている。

 しかし、手巻きだからこそ、朝起きた時に大ぶりなリュウズを回して時計を巻き上げる楽しみが生まれるのだ。また、整然とした文字盤によって、昼夜を問わず時刻とクロノグラフの計測時間がはっきりと読み取れる。針と文字盤の蓄光塗料は、経年変化したラジウム塗料を思わせるヴィンテージ調の色合いが味わい深い。


バルジュー製ムーブメントに範を取った手巻きムーブメントを搭載

 ケースバックの仕様については、変更の余地があるように思われる。カーキ パイロット パイオニア メカ クロノグラフはステンレススティール製のケースバックを採用し、控えめなエングレービングが施されている。これは初期の軍用時計のミリタリーマークを彷彿とさせるが、現代の嗜好からすると非常にシンプルなものだ。

 サファイアクリスタル製のケースバックであれば、搭載されている手巻きムーブメント、Cal.H-51-Siを鑑賞することができただろう。高級腕時計ほどのレベルではないが、カバープレートにはエングレービングが施されている。

H-51

ETAのCal.A05.291をベースにした手巻きムーブメント、Cal.H-51-Si。シリコン製ヒゲゼンマイを搭載し、約60時間のパワーリザーブを備える。

 オリジナルモデルではベースムーブメントにバルジュー 7753が採用されていた。Cal.H-51-Siでは、バルジューの堅牢な構造を引き継いだETAのCal.A05.291をベースとしている。

 パワーリザーブやヒゲゼンマイの改良は、日常的に使用することでその価値を実感できる、いわばプラスアルファの要素だ。Watchtime.net編集部が所有するWitschi社の歩度測定器で調査したところ、日差は+4.8秒、最大姿勢差は2秒と、良好な精度であることがわかった。

 さらに喜ばしいのは、個々の数値がクロノグラフ駆動時もさして変わらなかったことだ。装着後の日差は+4秒で、装着前と比べてもあまり変化していない。


快適な装着感

 今回のテストでは2週間の着用期間を設けたが、装着感は非常に良く、夜になっても外す必要を感じないくらいであった。また、通常ではブラウンカラーの夜光塗料が暗所ではグリーンに光り、デジタルのアラーム時計とほとんど同じくらいの明るさを発揮していた。

 快適な着け心地は、緩やかに湾曲したミドルケースや、直径40mmというサイズによって実現されている。軍用時計の復刻モデルらしく頑丈な外観のケースは、幅22mmのカーフレザーストラップと好相性だ。このストラップはヴィンテージ風に仕上げられており、先端にはハミルトンの「H」を模したバックルがついている。

カーキ パイロット パイオニア メカ クロノグラフ

しっかりとしたカーフレザーストラップもレトロな雰囲気だ。バックルは、ハミルトンの「H」を模したデザインになっている。

 ストラップについて言えば、時計本体と同様、細工やデザインが高度に洗練されているわけではない。だが、復刻モデルとしては非常に成功しており、ミリタリーの過去を持つレトロウォッチとして見事に完成されている。

 カーキ パイロット パイオニア メカ クロノグラフの価格は、税込みで31万1300円だ。ハミルトンの製品のなかでは比較的高価だが、最もエキサイティングなモデルの1本だと言えるだろう。ブランドの歴史にインスピレーションを得たデザインが好きで、リュウズを回して巻き上げるという毎日の儀式が好きな人にはうってつけだ。なお、新型ムーブメントのおかげで、巻き上げは1日おきでも十分である。



Contact info: ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン Tel.03-6254-7371


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