ラドー セラミックスの魔術師

FEATURE本誌記事
2023.06.23

時計業界でいち早くセラミックスをケースに使用し「マスター・オブ・マテリアル」の名声を確立したラドー。金属とも見間違うほどの硬質感や艶感を持つプラズマハイテクセラミックスは、40年近くにわたり不断の研究開発を重ねたラドーのセラミックス製造技術の結晶と言っても過言ではない。先進素材は今、新たなスタンダードとして成熟期を迎えた。

トゥルースクエア スケルトン

トゥルースクエア スケルトン
モノブロック構造のケースとブレスレットの全面にプラズマハイテクセラミックスを採用したモデル。精緻な研磨加工が与えられ、金属のような質感と光沢を放つ。自動巻き(Cal.R808)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。プラズマハイテクセラミックケース(縦44.2×横38.0mm、厚さ9.7mm)。5気圧防水。39万4900円(税込み)。
吉江正倫:写真 Photographs by Masanori Yoshie
髙井智世:文 Text by Tomoyo Takai
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年7月号掲載記事]


ラドーの代名詞となったハイテクセラミックス

トゥルースクエア スケルトン

トゥルースクエア スケルトン
キズや汚れを気にすることなく、ピュアホワイトのクリーンな印象を存分に味わえることがハイテクセラミックスの醍醐味だろう。針とインデックスにはイエローゴールドPVDが施され、スポーティー感が高まった。3モデルとも共通で、ロゴの上部にはラドーの自動巻きモデルのシンボルである可動式の錨マークがあしらわれている。

「マスター・オブ・マテリアル」の名のもと、たゆまぬ進化を続けるラドー。その精神の新たな発露となるのが、「トゥルースクエア スケルトン」である。まず目を引くのはシースルーダイアルだ。メインフレームは2本の細いブリッジとフランジが一体化した独特な構造を持つ。これによりムーブメントが広く露出され、ニヴァクロンヒゲゼンマイを搭載したテンプや、地板のコート・ド・ジュネーブ装飾などの鑑賞がより興趣に富むものとなった。

 しかしそれ以上に見るべきは、やはり外装である。今やラドーの代名詞となったハイテクセラミックスは、軽量で低アレルギー性、耐久性、耐摩耗性などに優れた特性が周知のものとなった。今作で最も刮目したいのは、プラズマハイテクセラミックスモデルである。顔が映り込むほどの光沢と質感は、金属と見紛うものだ。詳細を知らぬ人がこれを前にしたとき、セラミックス製と言い当てることは可能だろうか?

トゥルースクエア スケルトン

ハイテクセラミックスは焼結されると体積が約23%収縮する。これにより高密度で硬い特性が得られるのだが、研磨加工も相まって無孔質となる。そのためサファイアクリスタルを用いたケースバックには、セラミックスと同様に軽量で低アレルギー性というメリットを持つチタンが採用された。ゆえに装着感は軽快だ。

 プラズマハイテクセラミックスはその名の通り、プラズマ処理により表面改質を図った素材だ。高温で溶解後、射出成形されたハイテクセラミックスは当初、白みを帯びている。メタリックカラーはさらに、プラズマで2万℃に熱せられた窯に入れておくことで得られる。これは高温のエネルギーによる融解や反応から、炭化ジルコニウムの結晶構造を表面に生じさせた結果だ。濃淡の色味は焼成時間に伴うため、一定の発色の担保には厳密な工程管理を要する。ラドーは硬質素材製造を得意とする同じグループのコマデュールと協働し、この高度な技術を確立してきた。本作のシルバーメタリックカラーは、既存作よりもやや明るい。高い艶感と相まって、優美さを重視する今日のラドーらしい出色の仕上がりとなった。

トゥルースクエア スケルトン

トゥルースクエア スケルトン
マットな質感のブラックモデルはローズゴールドPVDの針とインデックス、そしてアンスラサイトカラーのメインフレームを備え、エレガントな仕上がりだ。ラドーが1986年に初めて採用したハイテクセラミックスはブラックだったこともあり、ブランドと同素材の歴史を最も感じさせる。なお、スペック・価格は3本とも共通だ。



Contact info: ラドー/スウォッチ グループ ジャパン Tel.03-6254-7330


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