受け継がれるジラール・ペルゴのフィロソフィーと進化する意匠「ロレアート」

FEATURE本誌記事
2023.08.12

ロレアート

Photographs by Masahiro Okamura (CROSSOVER)
Edited & Text by Yuzo Takeishi
[クロノス日本版 2023年9月号掲載記事]


HISTORY
革新的タイムピースから躍進するコレクションへ

 2017年のコレクション再始動は、「ロレアート」にとって絶好のタイミングであったと言うほかないだろう。ほぼ時を同じくして巻き起こったラグジュアリースポーツウォッチのブームも手伝って、この腕時計が再び脚光を浴び、現代のジラール・ペルゴを代表するコレクションへと急成長したのだから。

初代ロレアート

1975年
八角形のベゼルにケースとブレスレットを一体化させたデザインを取り入れ、周波数3万2768Hzの自社製クォーツムーブメントを搭載して、1975年にリリースされた初代ロレアート。そのネーミングは、当時のジラール・ペルゴ イタリア代表が「資格を有するもの」の意味を持つイタリア語「Laureato」を提案したことに由来する。また初代モデルは、マイク・ニコルズ監督、ダスティン・ホフマン主演の映画「卒業(イタリア語でIl Laureato)」のタイトルとリンクしたことも影響し、人気を獲得した

 ロレアートが最初に注目を集めたのは、このファーストモデルが誕生した1975年のこと。奇しくもスティール製スポーティーウォッチの第1次ブームと重なるタイミングではあったが、当時人気を博した要因はデザインだけではない。1791年に時計師のジャン=フランソワ・ボットが時計製造会社を設立してから約230年。かつての代表作「スリー・ゴールド ブリッジ トゥールビヨン」にも見られるように、ジラール・ペルゴが長年にわたって追求し続けてきた、高精度と洗練された造形のいずれもが、ロレアートには備わっている。

ロレアート 8010、ロレアート 80000

1995年
1984年に初のH型ブレスレットを採用したロレアートは、95年にさらなる進化を遂げる。この年に発売された「ロレアート 8010」は中駒に立体感を持たせた新しいH型ブレスレットを組み合わせ、さらにコレクション初となる自社製の自動巻きムーブメントCal.GP3100を搭載。ケースサイズも初代モデルの直径30mmから36mmへと拡大し、視認性も向上させた。また同年には、クォーツムーブメントを搭載した直径28mmサイズのレディースモデル「ロレアート 80000」もリリースされた。

 とりわけ、初代ロレアートの評価を高めたのが自社開発クォーツムーブメントの採用だ。1950年代、スイスの時計メーカーは電子腕時計を発展させるべく共同開発を行っていたが、ジラール・ペルゴは独自に開発を推し進め、69年にクォーツムーブメントに使用する電子モーターの特許を取得。70年にはブランド初となるクォーツ腕時計を、翌71年には現在の国際規格である3万2768Hzの振動数を持つクォーツモデルを発表し、ヌーシャテル天文台の証書も取得することで高精度をアピールしたのである。初代ロレアートはこの高精度クォーツムーブメントを搭載し、さらにトレンドであったスポーティーなデザインを取り入れることで好評を博す。

ロレアート オリンピコ

1996年
1996年に開催されたアトランタオリンピックを記念し、同年にはクロノグラフ機能を搭載した「ロレアート オリンピコ」を発売。写真のブルーのほか、シルバー、ブラックの3モデルが各色333本限定で展開された。

 その後のロレアートは進化を続け、84年には初のH型ブレスレットを採用。90年代以降は自動巻きムーブメントの搭載や、時代の潮流に合わせてシルエットを改良するのみならず、コンプリケーションモデルもラインナップに加えるなど、創業以来、革新性を追求し続けてきたジラール・ペルゴの姿勢が、ロレアートには見て取れる。

ロレアート Evo³

2006年
2003年には八角形ベゼルとケース一体型ブレスレットの意匠はそのままに、よりマッシブなケースと、滑らかなラインのブレスレットを採用したクロノグラフモデル「ロレアート Evo³」をリリース。06年にはビッグデイトとムーンフェイズを搭載したモデルも発表するなど、機能を充実させていった。
2010年のロレアート

2010年
ジラール・ペルゴが初のクォーツ腕時計を発表してから40年の節目を迎えた2010年には、これを記念した直径42mmのクォーツモデルを発売。文字盤には格子パターンが施され、モダンな印象を強めた。


DETAILS
進化を止めない洗練の意匠

 創業225周年の節目を迎えた2016年、ジラール・ペルゴはこれを顕彰して「ロレアート」の限定モデルを発表した。そのデザインは、1975年の初代モデル、またはその意匠を色濃く受け継ぐ、95年発売の第2世代を想起させる内容で、ベーシックな佇まいの中にもモダンでスポーティーな雰囲気を漂わせる均整のとれたルックスは高い評価を得た。この限定モデルがフックとなり、翌2017年、ジラール・ペルゴはロレアートをレギュラー展開することをアナウンス。これが、現在まで続く第4世代の出発点である。

2016年のロレアート

2016年
ジラール・ペルゴが創業225周年を迎えた2016年に限定発売された「ロレアート」は、初代モデルや1995年の第2世代モデルのデザインを踏襲していたことで好評を得た。ケースサイズは現行よりもわずかに小さい直径41mmで、八角形ベゼルの表面にもポリッシュ仕上げが施されている。

 現行ロレアートのデザインは、初代モデルや第2世代モデルはもちろん、2016年発売の限定モデルからもさらにブラッシュアップされている。八角形ベゼルや、ケースと一体化したH型ブレスレット、ダイアルに施されたクル・ド・パリ装飾といったアイコニックなディテールを踏襲することで、ロレアートらしい意匠はしっかりとキープ。そのうえで、従来よりもインデックスを太くしているため、視認性が向上しているのはもちろん、スポーティーウォッチにふさわしい力強さも与えることになった。

ロレアート

現行「ロレアート」のデザインは、従来モデルをブラッシュアップ。八角形とラウンドを組み合わせたベゼルは、初代モデルから継承される象徴的な意匠。

 さらに、ケースとベゼルにはサテンとポリッシュ仕上げを交互に施すことで立体感が生まれ、高級時計に求められるエレガンスがこれまで以上に感じられるようになったのも、ジラール・ペルゴのクリエイティビティが進化していることの表れと言える。2018年にはロレアート コレクションにクロノグラフが追加されるが、このモデルのみケースとブレスレットに904Lステンレススティールを採用。ベーシックな316Lステンレススティールよりも耐腐食性に優れるため、実用的であるのはもちろんのこと、上質な輝きは着用したときの満足感も高めてくれる。

ロレアート

(左)ダイアルにはクル・ド・パリ装飾が施される。フランス語で“パリの爪”を意味するこのディテールは、光の当たり具合によって上品なニュアンスをもたらす。
(右)サテン仕上げをベースに、ベゼルの側面やケースの稜線にポリッシュ仕上げを施すことで立体感が生まれている。

 ベーシックな3針モデルやクロノグラフモデルを筆頭に、現在のロレアートは機能やデザインを拡充させているが、いずれのモデルも実際に手にし、細部まで眺めてみると、妥協のない作り込みに間違いなく目を奪われるはずだ。

ロレアート

(左)蓄光塗料を塗布した幅広の時分針とインデックスにより、スポーティーモデルらしい力強さが生まれている。
(右)十分な可動域によって装着感を高めたH型ブレスレット。クロノグラフモデルでは904Lステンレススティールが用いられ、優れた耐腐食性に加え、上品な輝きも実感できる。


CURRENT COLLECTION

ロレアート アブソルート

ロレアート アブソルート ライト&シェード

ロレアート アブソルート ライト&シェード
81071-43-2022-1CX。自動巻き(Cal.GP01800)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。サファイア×Tiケース(直径44mm、厚さ11.56mm)。30m防水。1310万1000円(税込み)。

 オリジナルのコンセプトを踏襲しながらも、ケース素材を替えることで、よりモダンで都会的なムードを漂わせる「ロレアート アブソルート」。現行の「ロレアート アブソルート ライト&シェード」ではグレイッシュなサファイアクリスタルケースにスケルトナイズしたムーブメントを組み合わせ、近未来的な雰囲気を強めている。

ロレアート スケルトン

ロレアート スケルトン

ロレアート スケルトン
自動巻き(Cal.GP01800-0006)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。100m防水。(左)81015-11-001-11A。SSケース(直径42mm、厚さ10.68mm)。573万1000円(税込み)。(中)81015-32-001-32A。セラミックケース(直径42mm、厚さ11.13mm)。656万7000円(税込み)。(右)81015-52-002-52A。18KPGケース(直径42mm、厚さ10.68mm)。1035万1000円(税込み)。

 ステンレススティール製の特徴的な外装はそのままに、スケルトナイズされたムーブメントを組み合わせたシリーズ。ダイアルから可視化されるのは自社製の自動巻きキャリバーGP01800-0006で、手作業による透かし彫りに加え、チャコールグレーのルテニウムでガルバニック処理を施し、外装とも調和した現代的な表情を見せる。

ロレアート クロノグラフ 42mm

ロレアート クロノグラフ 42mm

ロレアート クロノグラフ 42mm
自動巻き(Cal.GP03300)。63石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。(左)81020-11-131-11A。SSケース(904Lグレード/直径42mm、厚さ12.01mm)。100m防水。244万2000円(税込み)。(右)81020-11-431-11A。SSケース(904Lグレード/直径42mm、厚さ12.01mm)。100m防水。244万2000円(税込み)。

 3インダイアルのレイアウトによってスポーティーな雰囲気を一層強めたクロノグラフ機能搭載モデルで、このシリーズのみ、ケースとブレスレットに優れた耐腐食性を持つ904Lステンレススティールを採用する。シルバーダイアルにブラックインダイアルを組み合わせた“パンダダイアル”をはじめ、軽快感のあるカラーバリエーションが揃う。

ロレアート クロノグラフ 42mm

ロレアート クロノグラフ 42mm
自動巻き(Cal.GP03300)。63石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。(左)81020-11-631-11A。SSケース(904Lグレード/直径42mm、厚さ12.01mm)。100m防水。244万2000円(税込み)。(右)81020-52-432-BB4A。18KPGケース(直径42mm、厚さ12.01mm)。アリゲーターストラップ。50m防水。546万7000円(税込み)。

ロレアート 42mm

ロレアート 42mm

ロレアート 42mm
自動巻き(Cal.GP01800)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。(左)81010-11-431-11A。SSケース(直径42mm、厚さ10.68mm)。100m防水。188万1000円(税込み)。(右)81010-11-131-11A。SSケース(直径42mm、厚さ10.68mm)。100m防水。188万1000円(税込み)。

 八角形ベゼルやブレスレット一体型ケース、クル・ド・パリ装飾を施したダイアルなど、オリジナルのデザインコードを継承した、コレクションを代表するモデル。高い人気を誇るブルーダイアルを筆頭に、ピンクゴールドケースのモデルやアリゲーターストラップを組み合わせたモデルなど、幅広いバリエーションが揃うのも魅力だ。

ロレアート 42mm

ロレアート 42mm
自動巻き(Cal.GP01800)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。(左)81010-11-634-11A。SSケース(直径42mm、厚さ10.68mm)。100m防水。188万1000円(税込み)。(右)81010-11-3153-1CM。SSケース(直径42mm、厚さ10.68mm)。100m防水。188万1000円(税込み)。

ロレアート 42mm

ロレアート 42mm
自動巻き(Cal.GP01800)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。(左)81010-52-3118-1CC。18KPGケース(直径42mm、厚さ10.68mm)。アリゲーターストラップ。50m防水。441万1000円(税込み)。(右)81010-52-3118-1CM。18KPGケース(直径42mm、厚さ10.68mm)。50m防水。713万9000円(税込み)。

ロレアート 38mm

ロレアート 38mm

ロレアート 38mm
81005-11-3154-1CM。自動巻き(Cal.GP03300)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径38mm、厚さ10mm)。100m防水。195万8000円(税込み)。

 シェアウォッチにも適している直径38mmケースのモデル。新たにラインナップに加わったコッパーカラーのダイアルは直径42mmモデルと同様、クル・ド・パリ装飾が施され、光の当たり具合によってブラウンやピンクがかったゴールドなど、さまざまな色調へと変化。ステンレススティールとのコントラストによって、ダイアルの存在感が際立っている。

ロレアート 34mm

ロレアート 34mm

ロレアート 34mm
クォーツ(Cal.GP013100)。30m防水。(左)80189D11A131-11A。SSケース(直径34mm、厚さ7.75mm)。163万9000円(税込み)。(中)80189D11A431-11A。SSケース(直径34mm、厚さ7.75mm)。163万9000円(税込み)。(右)80189D56A132-56A。18KPG×SSケース(直径34mm、厚さ7.75mm)。258万5000円(税込み)。

 女性向けにデザインされた直径34mmケースのクォーツモデル。コレクションに共通するデザインコードはそのままに、ベゼルには4種類のブリリアントカットダイヤモンドをセットし、スポーティーな造形とエレガンスが融合。このシリーズのみ、ピンクゴールドとステンレススティールを組み合わせたコンビネーションケースをラインナップしている。



Contact info: ソーウインド ジャパン Tel.03-5211-1791
www.girard-perregaux.com


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