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ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ ラグジュアリースポーツウォッチの新定義(6/7) 2016年05月号(No.64)

より堅牢性を高めた新基幹ムーブメント

極めてコンパクトなCal.5100の輪列。2番車をセンター位置から、4番車を9時位置から、それぞれオフセットさせた変則的なスモールセコンド輪列だが、ツインバレルを収めてなお、地板の外周部分には大きな余裕がある。ムーブメント単体での剛性を高めつつ、大きな拡張性が期待できる設計だ。

キャリバー5000系の可能性

 2016年に行われたオーヴァーシーズのフルモデルチェンジは、エステティックの全面刷新に加え、搭載ムーブメントの新規開発/自社一貫製造まで含んだ大掛かりなものとなった。

 100%インハウスムーブメントによる、100%ジュネーブ・シールの取得。ヴァシュロン・コンスタンタンが進めるこうしたプロダクトプランの中で、FP1185ベースのキャリバー1137や、JLC889ベースのキャリバー1222SC/1226SCなどを搭載してきた第2世代オーヴァーシーズが、この要件を満たしていなかったためである。加えてこれらのムーブメントは、スポーティモデルに搭載するには、セルモニ氏の言葉を借りるならば〝極めて繊細だった〟のだ。かくしてニュー・オーヴァーシーズへの搭載を前提に、高剛性な新基幹ムーブメントの開発が進められた。キャリバー5000系である。

 5000系のファーストファミリーは、直径30・6㎜の地板にツインバレルを収めたセンターセコンド仕様のキャリバー5100と、同じくクロノグラフ仕様のキャリバー5200。そして地板サイズを22・6㎜に小径化したスモールセコンド仕様のキャリバー5300の3種。2万8800振動/時のハイビートで統一が図られた点も大きな利点だ。

 5000系の大きな特徴は、地板の径に対して、極めてコンパクトにまとめられた輪列配置にある。2番車と4番車をオフセットさせた変則的なスモールセコンド輪列とも言えるが、この輪列配置が5000系の汎用性を担保している点は間違いない。最も基本となるキャリバー5100を例に具体的に見てゆこう。

 センターセコンド仕様のキャリバー5100では、3枚の受け(ローター受けまで一体化されている)を外すだけで、すべての輪列が露わになる。ツインバレルまで含めても、基本輪列のすべては地板の中央部にコンパクトに凝縮され、外周部分には大きな面積が残されていることが分かる。4番車が2層になっているのは、インダイレクトセンターセコンドのための出車だ。巻き上げ用の中間車はやや枚数が多く、ローター受けに2枚、地板側に4枚(リバーサーを含む)が備え付けられているが、地板外周をぐるりと取り囲むような配置に関しては、多分にデザイン的な要素が大きいと思われる。それでもなお、キャリバー5100の地板面積には大きな余裕が残されており、ここが汎用性を高める設計の要点だ。

 クロノグラフのキャリバー5200では、基本輪列を5100と共用しながら、地板外周のスペースに、コラムホイールと各種のレバー類、さらに垂直クラッチを配している。5100に対して厚みが1・9㎜増しているが、高剛性化を目した一体型自動巻きクロノグラフとしては、決してファットな部類には当たらない。

 スモールセコンド仕様のキャリバー5300は最もシンプルだ。5100に見られた地板外周のスペースを捨て去って地板自体を小径化。さらにシングルバレルとすることで、空いたスペースに巻き上げ中間車を収めている。数学的な意味での輪列設計自体は5100と共用と思われるが、軸配置を改めて、9時位置に4番車がくるように整理されている。

 なお第3世代のオーヴァーシーズはトランスパレントバックのため、軟鉄製の耐磁リングでムーブメント外周を覆っている。正確な数値は未公表だが、旧作に遜色のない耐磁性を担保しているようだ。

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