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【クロノスドイツ版翻訳記事】「戦争と平和」(4/4) 2016年07月号(No.65)

(左)第1次世界大戦頃のフード付きのポーセリンダイアルを備えた腕時計。風防を保護しつつも、開口部から時刻を読み取ることができる。このフードをメッシュガードと呼ぶ。(中)ブラックポーセリンダイアルを備えたインターナショナルウォッチカンパニーの腕時計。1910年代後半製。(右)6時位置に赤十字が印字されたロンジンの腕時計。衛生兵に支給されたものだろうか?ここで紹介する時計はいずれもワイヤーラグを持つ。時計がポケットから腕上へと場所を移した時期の特徴である。いずれも個人所蔵。

 壊れないガラスに対する研究は、彼の父親の代からの発想だったと思われる。実際に破損防止性のある製品は、1920年代から1930年代にかけて、アメリカ企業であるジャーマナウ・シモン社が初めて世に送り出している。その風防はセルロイド製だった。しかし、セルロイドは可燃性のため、火には弱く、黄ばみがちで、きつい日光を浴びると収縮してしまうというものだった。ドイツのダルムシュタットにある人工素材の専門メーカーであるレーム社が、格段に品質のよいアクリルもしくはプレキシガラスを製品化したのは、1934年のことである。

 20世紀初期の腕時計には、繊細な風防のほかに、もうひとつ弱点があった。伝統的なケースは裏蓋がヒンジ付き式で、風防を嵌め込んだ縁から埃と湿気が内部のムーブメントに浸入しやすくなっている。その場合、巻き上げと針合わせを行うリュウズにはことに問題が起きやすい。

 それに対して、矛盾なく作り上げた最初のひとりが、ジュネーブのパレス・コルナヴァンで活躍したケース製作者のフランソワ・ボーゲルだ。ボーゲルは1891年10月28日に、懐中時計用に賢明な2部品式ドームのケースでスイスの特許第4001号を取得している。1910年頃、このケースは腕時計用にも見られるようになった。この方式だとムーブメントは裏蓋の縁にねじで固定されて格納され、風防とともにねじ込んで包み込まれるようになっている。ケースから突き出ていて、そのために手袋をはめたままでもリュウズがつまみやすいように組み込まれた巻き真は、チューブに包まれているが、その中には極小の螺旋形のバネが入っている。このリュウズをぐっと引き出すと、2部品構造で角材形の巻き真からムーブメントが離れ、ムーブメントの取り出しおよび収納が可能になっている。このボーゲル型ケースを多くの時計メーカーが購入して採用したが、中でも有名どころはシャフハウゼンのIWCである。ボーゲルの発明が大成功となり、結果、多くの腕時計が世に出始め、それが第1次世界大戦時に戦場で使われるに至ったのは、当然の成り行きだったのだ。

1900年頃のオメガの初期の腕時計。

つづきは雑誌『クロノス日本版』でお楽しみください。
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