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リシャール・ミル 破天荒の証し(4/4) 2016年07月号(No.65)

ノウハウを結集したオートマトンが創造する最後に熟考する10秒間

「RMS 05機械式万年筆」。ガバナーで調速するストライキングウォッチの機構を応用した機械式万年筆。キャップを押し込む際にゼンマイを巻き上げ、キャップを外して万年筆末端のプッシュボタンを押すことでメカニズムが作動し、ホワイトゴールド製のペン先がせり出してくる。押し巻き。Ti×NTPTカーボン×18KWG(縦152.95mm)。非防水。予価1300万円。

 もうひとつ、今年のリシャール・ミルを語る上で忘れてはならないのが、これまで高級時計市場で築いてきた同メゾンの理念や哲学、複雑機構を操るノウハウを時計以外で表現したラグジュアリーアイテム、RMS 05である。リシャール・ミルでムーブメントの設計・開発を担当するサルヴァドール・アルボナ氏は説明する。

「この機械式万年筆の研究と開発には約4年を費やしました。外装にはリシャール・ミルではおなじみのNTPTカーボンを使っています。また、RMS 05のハイライトでもあるホワイトゴールド製のペン先を自動的に露出させる動きを駆動する〝ムーブメント〟の地板にはスケルトン仕上げのチタンを採用し、そもそもムーブメントの構造自体がアンクル脱進機と香箱、ガバナーを持ったストライキングウォッチのメカニズムを応用したものです。つまり、リシャール・ミルの内外装のノウハウの結晶と言えるのです」

 こう言うとアルボナ氏は、恭しく万年筆最後部に配されたプッシュボタンを押し、ゆっくりと10秒ほどかけてNTPTカーボン製の胴からペン先がせり出す様子を見せてくれた。「重要なのは、ペン先が現れるまでの、このわずかな時間です。私たちは、この特別な万年筆を特別な場面で使っていただきたい。例えば、非常に重要なプロジェクトの契約など、契約を交わすためにサインする最後の約10秒間、ペン先が現れるまでにもう一度熟考する時間を創ったのです」。

 ファブレスマニュファクチュールから始まり、内外装のマニュファクチュールと呼ばれるほど、有能な外部のエキスパートたちと緊密なパートナーシップを築き上げ、今や、ベーシックなムーブメントの開発を自社で手掛けるリアルマニュファクチュールへと、常に変化を遂げてきたリシャール・ミル。今年の新作は、たとえレディスと銘打たれていたとしても、現時点において最もリシャール・ミルの本質を凝縮し、体現したモデルであることを、果たしてどれだけの時計業界関係者が見抜いているのだろうか? 同メゾンが正しい意味での〝破天荒〟すなわち道なき道を切り拓く前人未踏のマニュファクチュールであることを証明し、それを突きつける稀有な新作であることを明記して筆をおきたい。

(左)ペン先は、キャップの先端に組み込まれた六角形の専用工具で取り外し可能。(右)ペン先をせり出すメカニズムはサファイアクリスタルでトランスパレント化された胴の一部から見ることができる。キャップを締めると、左下の写真のように櫛歯が押し込まれ、その動きによってゼンマイが巻き上げられる。右下はペン先がせり出し、ゼンマイがほどけた状態。櫛歯がペン先側に移動しているのが見て取れる。
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