G-SHOCK「GM-B2100PC-1AJF」をレビュー。“フルメタル”最新作の実力とは?

FEATUREインプレッション
2023.10.24

 今回インプレッションするのはカシオ「G-SHOCK GM-B2100PC-1AJF」である。アナログ-デジタルモデルの人気コレクションへと成長した「2100」のデザインをそのままにフルメタル化したモデルであり、そこに本作の特徴としてブルー系のグラデーションをインデックスと時分針に採用している。ツールウォッチとして優れたパッケージングと、色鮮やかなインデックスおよび時分針のマッチングはいかほどか。レビューしてゆこう。

G-SHOCK GM-B2100PC-1AJF

佐藤しんいち:文
Text and Photographs by Shin-ichi Sato
[2023年10月24日公開記事]


フルメタルG-SHOCK「GM-B2100PC-1AJF」

 今回インプレッションするのは、G-SHOCK「2100」デザインのフルメタルモデルであるカシオ「GM-B2100PC-1AJF」である。2100のデザインは、登場から4年程度で人気コレクションへと成長している。そのデザインに準拠しつつ本作は、堅牢なステンレススチール製のケースとブレスレットに、ブルー系のグラデーションを施したインデックスと時分針を組み合わせている。

GM-B2100PC-1AJF

カシオ「G-SHOCK GM-B2100PC-1AJF」
クォーツ(モジュール)。タフソーラー(パワーリザーブ パワーセービング状態で約18ヵ月)。SS(横44.4mm、縦49.8mm、厚さ12.8mm)。20気圧防水。8万300円(税込み)。

 今回のインプレッションで最初に感じたのが優れたパッケージングである。ケースサイズやブレスレット、そしてバランス良い重量感がもたらす、快適な着用感に加えて、基本性能も十分で高評価である。一方、絶賛というわけでもなかった。理由は視認性である。周囲が暗くなった際の視認性の低下度合いが大きく、これは汎用的なツールウォッチにとって減点要素であると判断したためだ。そこで、先に全体のパッケージングについて述べてゆきたい。


人気を集める「2100」シリーズの出自

 八角形のベゼルと円形のダイアル、アナログ表示の2100デザインの登場は、「GA-2100」が発売された2019年8月である。そのコンセプトは、初代G-SHOCK「DW-5000C」(オリジン)のデザインテイストを継承したアナログモデルを作ることであった。念のため補足すると、DW-5000Cは樹脂パーツで覆われた“奇抜なデザイン”で驚きの耐衝撃性能を実現した、文字通りエポックメイキングなモデルである。

GA-2100をフルメタル化した「GM-B2100」。今回レビューしたモデルは、このGM-B2100のインデックスがグラデーションカラーとなった華やかなタイムピースとなる。

 23年10月現在、2100のデザインは様々なカラーバリエーションや、やや小型の「GMA-S2100」、および本作のようなフルメタルモデルが「GM-B2100」としてリリースされている。GA-2100発表から4年経ってなお、デザイン上のテコ入れ無く展開され、しかもそれが市場に受け入れられていることは、2100デザインの完成度が高いことに加えて、G-SHOCKのブランディングの上手さの表れである。

 今回インプレッションする「GM-B2100PC-1AJF」は、Bluetooth機能を備えた樹脂ケースモデルの「GA-B2100」をフルメタル化したものだ。ケースに注目すると、ベゼルとケースサイドはサテン仕上げで、それ以外はポリッシュ仕上げとなっている。ベゼル上の「G-SHOCK」のロゴや「PROTECTION」の表記は、太く、かつ深く掘り込まれている。また「MODE」などの表記は細いが十分に深く、明所では十分な視認性が確保されている。8万300円という価格を考えれば、手が込んだ加工である。

 そして本作の特徴は、各時のインデックスがグラデーションを成すように、11時方向が鮮やかで、5時方向がダークとなるように調色されたブルー系のカラーリングが施されている点だ。このカラーは、ライトブルーやターコイズ、パープルやレッドに近い色味に変化するもので、チタンの焼き色を思わせる質感を備える。また、同様の質感で時分針が縁取られている。


馴染みあるサイズ感と良好な着用感

 ケースはステンレススチール製のベゼルとケースの間にファインレジン製の緩衝材を設けたものだ。樹脂製の従来モデル同等の耐衝撃性能を実現しており、懸念点は一切無い。

一体成型されたインデックスは、組み立て工数を抑えつつ、脱落を防止して耐衝撃性能を高めるためと予想される。スクリューバックの採用はDW-5000Cとの共通点でもある点にも注目。なお、画像はGM-B2100D-1AJFである。

 ケースサイズは、カタログスペックを並べれば横44.4mm、縦49.8mm、厚さ12.8mmとなる。G-SHOCK愛用者であればお馴染みのサイズ感であるし、厚さ11.8mmのGA-2100よりも厚いが、ツールウォッチとしては標準的な範囲であって、実用上はその差が気にならない人も多いのではないだろうか。周長約18cmの筆者の手首の上に収まりが良く、着用時の重量バランスも良好である。

 本作のケースとブレスレットの接続部分はケース側が三本足となっていて強固に接続されている。タフさを追求するG-SHOCKならではであるが、その構造故に可動域がほとんどない。そのため、筆者よりも腕が細い人はラグ部に隙間が生じてフィット感に不満を覚えるかもしれない。店頭での要チェックポイントである。

G-SHOCK GM-B2100PC-1AJF

ミリタリー系のジャケットとの組み合わせは良好である。ややカジュアルなビジネススタイルにもマッチしそうで、幅広く組み合わせられそう。なお、写真よりも実際の方が手首への収まりが良く見える。

 ブレスレットは剛性感がありながら適度な遊びがあり、可動範囲が広くて着用感が良い。リンクはバネ棒で固定されているため長さ調整が簡単で、ねじ式や割ピン式に比べて調整時に損傷する可能性が低い。毎度のことながら感心する構造だ。プレス成形されたクラスプにはブレスレット固定位置調整用の穴が開いており、フィット感を調整できる。簡素で古典的な構造であるが、薄くて軽く、ロバストであるので、ツールウォッチに最適な選択である。


Bluetooth通信機能とタフソーラーを備える実用性の高いモジュール

 本作に搭載されるモジュール「5691」は、9時位置に機能表示とパワーリザーブ表示を兼ねたインジケータを備える。Bluetooth通信機能も備え、アプリ「CASIO WATCHES」によって時刻修正や各種設定が可能である。このアプリでは、基本的な設定に加えてワールドタイム機能を管理できることや、G-SHOCK側から携帯電話を探索できる機能が便利である一方、タイマー設定を転送可能であるもののタイマースタートができないことや、時計との接続にはCASIO IDへの登録も必須である点から、人によって評価が分かれそうだ。

 そのほか、評価の高いタフソーラーを搭載する。一度満充電してしまえば機能使用状態かつ充電されなくても約7ヵ月間の稼働が可能だ。ダイアルのほとんどが受光部分となっているので発電効率は高そうであるし、パワーリザーブ表示も備えるため充電不足で困る可能性はかなり低いのではないか。


鮮やかではあるが暗所での視認性の低下が気になるインデックスと時分針

 インデックスと時分針には、本作の特徴となるグラデーションが施されている。ひとつひとつのインデックスのカラーは均一とし、配置個所によって少しずつ色の変化を与えている点が面白い。バイク用チタン製マフラーの焼け色に興奮する人間(筆者のことだが)にとっては魅力的に映ることだろう。

G-SHOCK GM-B2100PC-1AJF

光が射し込むと鮮やかに反射する点は本作の見どころ。視認性も良好に保たれる。5時方向の液晶が暗転しているのは撮影時の偏光フィルターが原因である。タイミング的に撮り直しできなかったのでご容赦いただきたい。通常はカレンダーと秒が表示されている。ダイアルのほとんどはタフソーラーの受光部分となるが、それと分からない優れた質感を備える。

 では、筆者が本作のウィークポイントであると感じた視認性について述べよう。本作の時分針の蓄光部はグレーであり、光が差し込む環境であれば縁取りのグラデーションが輝いて視認性は良好である。問題は、周囲が少し暗くなった場合である。まず、5時方向のダークな色調のインデックスがダイアルに溶け込み始める。そして、やや暗めのおしゃれなカフェ程度の照度では、グレーの蓄光部とダイアルとのコトントラストが低く、縁取りの輝きも得られないため針の視認性が悪化し始める。見えないことはない。しかし、期待しているよりも読み取りづらく、蓄光部の発光も控えめで、僅かな注視を必要とする。

 今回のインプレッションでは、視認性の評価の加減が難しかった。本作をインフォーマルウォッチと捉えるなら必要十分の視認性と評価するレベルであるのだ。本作をどの枠組みで捉えるかはユーザーの自由であると前置きした上で、本作をシビアなコンディションでも使用する汎用ツールウォッチと捉えるなら、筆者は視認性に物足りなさを感じた。少なくとも、筆者の所有するGA-2100ETと比べて視認性に明らかな差がある。

G-SHOCK GM-B2100PC-1AJF

ツールウォッチとしては視認性に物足りなさがあるなら、視点を変えて本作をインフォーマルウォッチとして捉えてみる。すると外装面で気になるところが出てくる。例を挙げれば、ブレスレットがサテン仕上げであるのに対して、ケース側のブレス接続部がポリッシュ仕上げであってデザイン上の繋がりに違和感を覚えるかもしれない。


好みに合えば選んで間違いなし

 筆者がこのインプレッションを締め括ろうと推敲を始めたとき、厳しく評価し過ぎただろうかと悩みが生じた。ただし、注意すべきことは、本作のデザイン、特に視認性に対する筆者の評価がどうあっても、それは個人の感想に過ぎないことだ。先に書いた通り、本作のパッケージングを始めとした基本的な性能は客観的に見て非常に高い。本作のデザインが気に入った方は選んで間違いは無い。

 本作をはじめとした2100デザインには多くのバリエーションがあり、次々に新作が追加されている。筆者同様に本作の視認性が懸念点となる方は、これぞというデザインを見つければよい。また、今は無くてもG-SHOCKなら各位の好みにマッチするモデルを必ずや提供してくれるはずだ。そのような懐の深さもまた、G-SHOCKの魅力である。



カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-08-8925



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