ドバイ ウォッチ ウィーク詳報

2017.01.27

フィリップ・デュフォー氏
「デュアリティ」や「シンプリシティ」でおなじみのマスターウォッチメーカーが、ワークショップにおいて地元の女性にパーツの仕上げや工具の手入れ方法などをレクチャー。

クルト・クラウス氏
IWCの名設計者として名を馳せたクラウス氏は、自社のシンプルなキャリバーを教材に使って分解の手順などを地元のジャーナリストたちに教えた。


 最後は「マスタークラス」について。これは毎日異なるブランドや団体がプロデュースして、地元の関係者に時計の基礎的な構造や実際に機械式ムーブメントの分解の手順などをレクチャーする、いわゆるワークショップである。独立時計師アカデミー(AHCI)が派遣した時計師は、アントワーヌ・プレジウソ氏、フィリップ・デュフォー氏、ヴィアネイ・ハルター氏、アンドレアス・ストレーラー氏など錚々たる面々だ。事前登録制で集まった地元のジャーナリストを相手に、彼らが機械式時計の構造を熱心に伝えるさまは、草の根運動の一環として価値がある。また、いくつかの大手ブランド(パネライ、ジャガー・ルクルトなど)は自社の時計師を連れてレクチャーを行ったが、最も驚かされたのはIWCだ。なんと招聘したのは伝説のひと、クルト・クラウス氏。偉大なるエンジニアの姿を一目見ようと、聴講生以外にも多くの関係者が集まった。彼はIWC製の手巻きキャリバー98200を教材にして、なんと分解の仕方をいちから聴講生たちに教えたのである。ドライバーの立て方やパーツの名称、分解手順をクラウス氏が直々に教えることなどめったにないだろう。IWCの関係者たちが温かい眼差しを終始クラウス氏に向けていたのがとても印象的だった。

屋外のプレススペースでインタビューを受けるジャン-マルク・ヴィダレッシュ氏。その後ろには関係者の時計を撮影するSJX 氏と、それを眺めるマイケル・テイ氏の姿が見える。

 関係者の情報共有の場という側面が強いイベントゆえ、会場の中庭に設けられたプレススペースには、連日のようにジャーナリストとブランドの重鎮が談笑、もしくは真剣に取材をしている姿を見ることができた。最終日には、なんと周辺にいた関係者ほぼ全員の腕時計を机に並べた即席の撮影会が開催されたのである。オールドピースから現行の超複雑時計までが並んだ光景は、まさに圧巻そのもの。撮影する面々も実に楽しげであった。

 高級時計を通じた教育の場、もしくは関係者が集まっての意義深い情報共有の場として、ドバイ ウォッチ ウィークは今後も機能していくであろう。ジュネーブからドバイへの直行便が1日2便出ており、飛行時間も約7時間と意外なほどアクセスが良いのも利点だ。個人的にも次なる取材依頼が来ることを心待ちにしたい。

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