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[アイコニックピースの肖像 36]ウブロ クラシック・フュージョン(3/3) 2016年11月号(No.67)

受け継がれてゆく 〝オリジナル・ウブロ〟のDNA 1st Generation Model

新興のメーカーが単一モデルを発表し、しかもいきなり成功を収めた例は、世界を見渡しても、ウブロの他に、シャネルがあるのみだ。時間をかけてプロダクトを練り上げるというカルロ・クロッコの姿勢は、ウブロに大きな成功と、アイコンとなるだけのDNAを与えるに至った。

“通過儀礼”に必要なツール。ウブロの購入者は、自身に最も合った長さのストラップを選ぶため、店頭で腕のサイズを計測していた。もっとも、バックルの進化とともに、この儀式は廃止となった。 ウブロ「クラシック」の展開図。その複雑な形状は、35回もの冷間鍛造で形づくられたもの。鍛造するたびに、SSは1080℃、18Kは650℃で焼き鈍しを施す。当時クラシックの価格が、途方もなく高価だった一因である。 1984年初出。チタン製のビスを廃した、フラットベゼルを持つダイバーズウォッチ。プロフェッショナルと記してあるように、公的規格に準拠した性能を持つ。太い針を動かすべく自動巻き(Cal.ETA2892A2)を搭載。18KYG(直径36mm)。300m防水。参考商品。

1980年にリリースされた初代クラシック。興味深いことに、そのデザインはひとりのデザイナーが決めたのではなく、複数の関係者が時間をかけて練り上げたものだった。当初のアイデアは、クロッコのスケッチによる。エリック・ボネがそれをプロトタイプに起こし、フランチェスコ・マリア・ヴィメルカーティがシンプルなものに仕立て直した。

 ラバーバンドのアイデアも、こうした過程から偶然に生まれたものであった。あるプロトタイプが完成した際、黒い布が、あたかも腕輪のように置かれていたという。それを見たクロッコは、ストラップを布ではなく細長いラバーで作るべき、と考えた。「そのときまで、誰もゴールドケースの高価で上品な時計にゴム素材を採用していなかった。ですが、私はこれを良い考えかも知れないと思うようになりました」(『ウブロ 王の時計』より。一部筆者改訳)。カルロ・クロッコの美点を挙げるならば、完璧主義者だった点だろう。ラバーを使うというアイデアに魅了されたクロッコは、当時不可能とされた切れにくく、臭いもせず、アレルギーを起こさないラバーストラップの開発に挑んだ。

 解決策を提示したのは、イタリア国立研究機関CNRのエンジニア、グイド・ガンベリーニである。彼は医療分野のノウハウを転用することで、50㎏の抗張力を持つラバーストラップを作り上げた。加えてラバー特有の臭いを消すために、レ・ユニオン島製のバニラエッセンスが混合された。面白いことに、このストラップでは、〝カットできない点〟が強調されていた。なお80年代に登場したポルシェデザインの時計は、同様のラバーストラップを持っていたが、ユーザーは自分の腕周りに合わせて自在にカットすることができた。

 ではなぜウブロは、カットできない仕様を選んだのか。ジャーナリストであるアウグスト・ベローニはラバー=チープという印象を消したかったためと記している。もっとも、抗張力を高めるため、ストラップのケース側とバックル側にスティールのプレートを入れた時点で、カットはそもそも不可能だった。

 ただ完璧主義者のクロッコは、購入者の腕周り応じて、複数のストラップを用意した。モデルに応じて10〜18種類もの数があり、購入者は時計店に足を運び、自らに合わせたストラップを選ぶという「通過儀礼」を受けることとなった。これはウブロの時計が二次マーケットに流れることを難しくしたが、自分だけの時計を望む当時の顧客に歓迎されたのは事実だった。今でこそ忘れられているが、1970年代後半から80年代初頭にかけて〝腕時計のパーソナライズ化〟は、時計メーカーが避けて通れない一大トレンドだった。

 独創的なデザインとユニークなストラップで消費者たちの関心を惹いたウブロ。しかし同社はたちまちふたつの問題に直面した。ひとつは模造品の出現、もうひとつはバリエーションの少なさである。とりわけ前者は、創業間もないウブロの経営を危機に陥れるほどの大きなインパクトを与えた。それに対する回答のひとつが、1984年に登場したダイバー Ref.1552である。面白いことに、ウブロはクラシックのデザインに対して一切特許を取っておらず、それが模造品の流行に拍車をかけた(セクターでさえ、ウブロに酷似したモデルを発表した)。対して84年のダイバーは、新バリエーションというだけでなく、デザイン特許も取ることで対抗した。

 1984年以降、1999年に至るまでのクラシックの変遷を挙げてみよう。

1984年、ダイバーモデルを追加。
1986年、ホワイト文字盤を追加。
1987年、フレデリック・ピゲ製自動巻きを載せた3針モデルを追加。
1988年、フレデリック・ピゲ製メカクォーツを搭載したモデルを追加。
1990年、GMTモデルを追加。
1991年、ETA製自動巻きを載せた「オートマティック91」を追加。
1992年、フレデリック・ピゲ製の1185を搭載したモデルを追加。
1993年、ブルー文字盤を追加。
1995年、自動巻きをレギュラー化。
1996年、メタルブレスレットを追加。
1997年、「エレガント」を追加。
1998年、サイズを5つに拡大。
1999年、エレガントにパワーリザーブ付きの自動巻き、女性用の自動巻きを追加。ウブロのクラシックマキシに自動巻きを搭載。ダイバーモデルをリニューアル。

 もっとも、コレクション数の限られたウブロのビジネスは、時計のトレンドがスポーティーに向かうと、急速に困難さを増した。加えてウブロが機械式ムーブメントの採用に消極的だった点も、やがてビジネスの足を引っ張ることとなった。クロッコは、スウォッチ グループで辣腕を振るった、ジャン-クロード・ビバーを招聘。ウブロの全面的な立て直しを依頼した。2004年5月のことである。

 ではビバーはクラシックをどう変えたのか? 彼は名称をトラディション(現クラシック)に変更し、自動巻き中心のコレクションに仕立て直した。当時の彼がフュージョンを旗印に、「ビッグ・バン」の進化にフォーカスしていたことは間違いない。しかし関係者に話を聞くと、彼は、旧クラシックこと、トラディション(現クラシック・フュージョン)にも大きな可能性を見出すようになったようだ。ブランパン在籍中に薄型時計のコレクションを広げたビバーは、当時時代遅れとみなされていたクラシックを、薄型コレクションの核に据えようと考えたのである。

2008  2005  2005  1988  ビッグ・バンのデザインをより反映したのが本作である。ケース長が伸びたほか、ベゼルが太くなり、ビスが6つに減らされ、秒・分針がインデックスに届いた。基本スペックはRef.1915に同じ。18KRG×セラミックス(直径45mm)。10気圧防水。 右モデルの文字盤違い。ケースから飛び出した弓管や細身のストラップが示すように、デザインはクラシックを踏襲する。しかしビッグ・バンに倣ってインデックスが立体的に改められ、文字盤の発色も改善された。ただしケースの仕上げはやや甘い。 “ビバー以降”の新作。名称がトラディションに改められたほか、ベゼルとビスの高さが面一になった。自動巻き(Cal.ETA2892A2)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径40mm)。5気圧防水。 フレデリック・ピゲ製のメカクォーツ、Cal.1270を搭載したモデル。スポーツウォッチはショックに弱いという考えのもと、ウブロは1990年代に入るまで、機械式ムーブメントの採用に懐疑的だった。クォーツ。SS(直径36mm)。5気圧防水。

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