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無垢な時間 穢れなき時計(2/2) 2016年11月号(No.67)

原始ピュアネスを伝えるソリッドゴールド

 ローマン・ジュエラーにしてウォッチメゾンたるブルガリを象徴する腕時計が「ブルガリ・ブルガリ」だ。ロゴを大きく刻んだデザインは、時代の要請やその時々のデザイナー、経営者の試みや思惑などが交錯して、時々刻々と変化を遂げた。メンズモデルに限定すれば、ここ数年は——CEOジャン-クリストフ・ババンの意向が強かろう——よりマッシブなスタイルのモデルが多い。2016年にリリースされた「ブルガリ・ブルガリ カーボンゴールド」のダークネスな色使いはその顕著な例ではなかろうか。

 そんななか、ブルガリ・ブルガリの起源はゴールドウォッチにある。1975年の「ブルガリ・ローマ」、あるいは77年の「ブルガリ・ブルガリ」スナップバックの市販最初期モデルはともに、ベゼルとミドルケースを一体化させた18Kイエローゴールドの堂々たる体躯であったことを思い出してほしい。

「王侯貴族や限られた階級層の愛好品だったブルガリを広く一般層に」の合言葉で世に問われた原始ブルガリ・ブルガリのピュアネスを知りたければ、ゴールドのモデルを手にすべきだ。アイボリーの文字盤は光にうっすらととけこみ、幅のせまいベゼルには、ごく浅く、BVLGARIのロゴが刻まれている。インデックス、針ともに同系色でまとめているのは、老舗ジュエラーの見識だ。ブランドの基礎哲学を見事に投影した出来映えは、時代を超えた価値に満ちている。

《マイスタージンガー》Circularis Automatic 《ブルガリ》 ブルガリ・ブルガリ  今号の特集でも大いに話題を呼んでいるETA、もしくはセリタ製の汎用ムーブメントを積むのが他の中堅メーカー同様、マイスタージンガーの特徴だが、このモデルは例外。スイスはビエンヌにあるサプライヤーが開発したエクスクルーシブのオリジナルムーブメントを積んでいる特別品だ。自動巻き機構をオミットした手巻きモデルもあるのがとりわけユニーク。自動巻き(Cal.MSA01)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SS(直径43mm)。5気圧防水。62万円。モントレックス03-3668-8550 初期型ブルガリ・ブルガリとは異なるスリーピースケースながら、幅の狭いベゼル、艶やかなラッカー文字盤など、70年代中頃のエッセンスを巧みに織り込んだ傑作。湾曲したベゼルと風防は、凸面状に膨らませたケースバックとの対比が、立体感と良好な装着感を生み出している。自動巻き(Cal.ソロテンポ)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KPG(直径39mm)。50m防水。213万円。ブルガリ ジャパン03-6362-0100

針1本で突き詰めた良質な判読性の正体

 マイスタージンガーを知っているだろうか? ドイツのミュンスターに本拠を構える中堅ブランドだが、とても興味深い試みを行っている。そのラインナップはすべて、針1本で時分を刻むワンハンド仕様(Salthora Meta Trans parentはジャンピングアワー付き)。日時計の刻時に精密さを兼ね合わせたような、アンビバレント加減。大きなアラビア数字、メーター類を想起させるテーパードの針、5分刻みのインデックスは、ワンハンドウォッチの弱点たる(曖昧回避をしないのがこの仕様の本質なのだが……)脆弱な判読性を見事に補っている。基本構成を整えているので、デイト表示、クロノグラフ、セカンドタイムゾーンといった付加機能が付いてもなお、生来のピュアネスさは失われない。2針、デイトなしの薄型ドレスウォッチ信奉者にこそ、ぜひ手に取ってもらいたい佳品だ。

 マイスタージンガーは特性の多いメゾンだ。特性は個性と換言してもよいだろう。ミドルケースとラグは一体成形を思わせる古典的なカラトラバスタイル。時折、グリーンなどというヴィヴィッドな色を使ってくるカラーに対する自由な精神は、ミニマリストの禁欲さとは無縁の開放感に満ちている。苦境に陥る欧州市場を主戦場にしているにもかかわらず、年産が9500本に達しているという事実もまた、根強い人気の証左だ。全てが特別、といったら褒めすぎだろうか?

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