ショパール マニュファクチュール創設20周年 成熟と革新の軌跡

2016.12.02

2016 AUTUMN MODELS

L.U.C フル ストライクの発表に先駆けて、ふたつの実用的なモデルがL.U.C コレクションに加わった。ワールドタイマー付きの「L.U.C タイム トラベラー ワン」と、第2時間帯表示を備えた「L.U.C GMT ワン」である。
L.U.C コレクションがこういったプチコンプリケーションを採用するのは久々だが、ベースムーブメントは熟成しきっているため、信頼性は期待できるだろう。
むしろこの2作で目を引くのは、過去とのつながりを感じさせるデザインにある。

L.U.C
タイム トラベラー ワン

ルイ・コティエ式のワールドタイマーを備えた新作。リュウズにより、都市リングと24時間リングのふたつが操作可能である。ベースムーブメントは、クロノ ワンからクロノグラフ機構を外した01系。堅牢さと精度は申し分ない。ケースや文字盤の仕上げも大変に優れている。自動巻き。SS(直径42mm)。50m防水。157万円。
Cal.L.U.C 01.05-L
L.U.Cのもうひとつの基幹キャリバーが01系。自動巻き機構は標準的なリバーサーだが、遊星歯車を内蔵した、かなり凝ったものである。このムーブメントは文字盤側にワールドタイマーモジュールを追加したもの。直径35.3mm、厚さ6.52mm。39石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。

一部の2016年モデルに対して、ギィ・ボーブ氏は新しいタイポグラフィーを与えた。基本的な形状は、すでにショパールが用いていたもの。しかし、かなり細身に仕立て直された。「L.U.Cには流行廃りを超えたスタイルを与えたい」とボーブ氏は語る。なお、初めて採用されたのは、バーゼルワールドで発表された「L.U.C XPS 1860」。加えて、L.U.C タイム トラベラー ワンでは、英語のタイポグラフィーが都市リングに用いられた。

 2016年10月、LUC コレクションはふたつの新作を加えた。「LUC タイム トラベラーワン」と「LUC GMT ワン」である。この2本、機能としては標準的なワールドタイマーとGMTモデルだ。もちろん、LUCらしい重厚な作りは、リュウズで都市リングや第2時間帯を動かせば実感できる。ただ、この2本でより注目すべきは、機能以上にデザインである。「ショパールで働き始めた時、LUCのDNAを見直そうと考えました。ショパールは1860年から時計作りを行っており、幸いにも過去のアーカイブは豊富でした」(ギィ・ボーブ氏)。ボーブ氏が取り組んできたアーカイブの発掘。その成果が「LUC 1937」や「LUC クアトロ」だ。横に広げた太いローマンインデックスは、19世紀後半のショパールが好んだもの。「デザインに統一性を持たせることはもちろん、ショパールの長い伝統をデザインに反映させました」。

 2016年のバーゼルワールドで発表されたLUC XPS 1860も「デザインは1940年代のショパール製ウォッチに倣ったもの」。アラビア数字とバーインデックスの混在は、40年代の典型的なデザインである。こういったデザインはXPSですでに採用されていたが、LUC XPS 1860のアラビア数字は一層繊細になった。「40年代は、タイポグラフィーでさまざまな実験が行われた時代。LUC XPS 1860ではそういうスタイルを意識しました」。

 このデザインコードを踏襲したのが、タイム トラベラー ワンとGMT ワンである。「新しいふたつのモデルは、旅をイメージしました。いずれもスーツでもジーンズでも似合う時計ですね」。とりわけSSケースのタイム トラベラー ワンは、ジーンズにも映えるようなツール感が強調されている。今までのLUCのデザインコードとは変わった印象を受けるが、ボーブ氏は違う、と述べる。

Cal.L.U.C 01.10-L
01系にGMTモジュールを追加したムーブメント。96系ほど好事家向けの見た目は持たないが、頑強さや巻き上げ効率は勝っている。その堅牢な設計は、リュウズを回せば理解できるはずだ。直径31.9mm、厚さ5.95mm。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。
L.U.C
GMT ワン

こちらは第2時間帯を表示できるモデル。オーソドックスな構成を持つ時計だが、文字盤やケースなどの仕上げは、従来のL.U.Cに増してさらに優れている。とりわけ、巧まぬ立体感の持たせ方は、シンプルな本作では一層際立つ。ラグが短いため、取り回しも良好である。自動巻き。18KRG(直径42mm)。50m防水。236万円。
L.U.C GMT ワンのケースサイド。L.U.Cの特徴である裁ち落とされたラグが分かる。普通、ラグを短く切ると時計は寸詰まりに見えるが、ラグの上面に大きなカーブを付けたため、むしろ好ましい凝縮感が備わった。シリンダー型のケースを平たく見せない手腕は見事だ。

ギィ・ボーブ氏がL.U.Cコレクションで取り組んできたのが、主に立体感の改善である。1996年以降のL.U.Cコレクションは、裁ち落とされたラグは持っていたが、それ以外に造形上の個性は乏しかった。対して、ボーブ氏は、ラグ上面の曲面を拡大。併せて、頂点からベゼルに向けて落とし込むことで立体感を与えた。また、ベゼルも内側をえぐったコンケーブ型に変更された。ボーブ氏いわく「ベゼルは、家の上に雲が浮かんでいる状態をイメージした」とのこと。

「LUCのデザインコードは変わっていません。ケースサイドとラグをつなぎ、ラグは短く切り落とす。そして、ベゼルは内側をえぐったコンケーブ」。基本デザインは、2007年のLUC クロノ ワンにさかのぼる。しかしボーブ氏は、ケースの立体感をさらに改善してきた。

「ラグからケースサイドへの流れに動きを見せるために、ラグとケースのつなぎ目を一段上げて落としています。ラグがフラットになるとミドルケースの造形はシンプルに見えますからね。そして、サイドにサテン仕上げを加えることで、立体感をより強調しました」

 こういったモディファイが可能だったのは、ショパールがケースを自製すればこそ。「かつてショパールはケースを鍛造のみで作っていました。しかし切削を入れることで、より複雑な面を与えられるようになった」。今やケースに明確なコードを与えることに成功したショパール。その結果、ボーブ氏は往年のショパールデザインを、積極的にLUCに反映させることができるようになった。

 2016年、ムーブメント発表から20年を迎えたLUC コレクション。もちろん、見るべきは卓越したそのムーブメントである。しかし、ショパールに時計作りの長い伝統があることは、2016年モデルのデザインが示す通りだ。改めて言うが、ショパールとは、1860年から続く老舗の時計メゾンなのである。

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