モリッツ・グロスマン あるマイスター時計師が語る半生とグラスヒュッテ高級時計産業の歩み

2016.12.02

Wiederauftritt vom Debütanten “BENU”
als das limitierte Modell in Japan.
モリッツ・グロスマンの初作「ベヌー」、日本限定で復活

BENU PURE “Japan Limited”
ベヌー・ピュア “ジャパンリミテッド”

機械としての熟成改良が進んだ「アトゥム・ピュア」をベースに、初代ベヌーに準じたダイアルデザインを組み合わせた日本限定モデル。手巻き(Cal.201.0)。20石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径41.0mm、厚さ11.35mm)。日本限定20本。180万円。

 モリッツ・グロスマンが2016年のバーゼルワールドで発表した新しい試みが“ピュア・シリーズ”である。ブランド初となるスティールケースの採用と、“よりスタンダードなグラスヒュッテ様式”に沿ったムーブメント装飾の手法を採り入れ、プライスレンジも大幅に引き下げられた。装飾面での大きな変化は、2/3プレートを含むジャーマンシルバー製の部品が全て、50ミクロンのガラスパールを極低圧で吹き付ける、ブラスト仕上げとなった点だ。従来機に用いられてきたストライプ仕上げの起源は、工作技術が未熟だった時代に、分割された受けの高さがどうしても揃わないために行う、最後の切削工程という意味合いが強かった。対して輪列受けを分割せず、大きな2/3プレートにまとめるグラスヒュッテ様式の設計では、本来は不要な工程とも言える。グラスヒュッテ本来の様式に則った作法としては、その名の通り、より“ピュア”な手法である。

 アトゥムが搭載する「Cal.100.1」をベースとしたピュア・フィニッシュ機「Cal.201.0」は、平ヒゲゼンマイへの変更に伴い、調速脱進機のシステムにも改良が加えられている。新規設計された可動ヒゲ持ちは、受けの下にブッシュを設け、かつヒゲ持ち受け自体をネジ固定としたことで、歩度を固定したまま片振り調整することが可能となっている。これも大きな進化のひとつだ。

 日本限定でプロデュースされた「ベヌー・ピュア」は、このCal.201.0を搭載しつつ、すでに生産が終了している初代ベヌーのダイアルデザインを採用したもの。SSケースのトップにはサテン仕上げが加えられ、ブランド初となるブラックダイアルをよりシックに見せている。時分針はベヌー・パワーリザーブと同様のハイセラム針。ブラックポリッシュされた丸穴車や、ゾネンシュリフが加えられた角穴車など、上位機種譲りの贅沢なディテーリングが秀逸である。