オリエント 日本のスケルトンを持つ矜恃

2017.02.03

オリエントスター スケルトン WZ0041DX
視認性と実用性、そして、スケルトンとしての“抜け感”を兼ね備えたモデル。ムーブメントの原型は、1991年に発表された「モンビジュ」にさかのぼる。しかし、スモールセコンドの追加など、大々的な改造が施された。手巻き(Cal.48E51)。23石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径39mm)。5気圧防水。24万円。

46周年を迎えたオリエント46系ムーブメント最進化形

実用時計メーカーながら、熱狂的な愛好家を擁するオリエント。
手の届く価格帯で、他の時計メーカーが行わない試みを続ける同社が、コレクターを刺激しないはずがない。
そんなオリエントの姿勢は、最も「らしからぬ」と思われていたスケルトンも例外ではない。

奥山栄一:写真
Photographs by Eiichi Okuyama
広田雅将(本誌):文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

高い視認性をもたらすダイヤモンドカットされたインデックスと針。パワーリザーブインジケーターやスモールセコンドの外周も同様にダイヤモンドカットが施されている。面白いのは、別部品で貼り付けられたロゴの位置。耐久性を持たせるため、このスケルトンは手巻き機構の周りを抜いていない。見栄えは悪くなるが、そこにロゴをプリントしたプレートを貼り付けて、巧みに余白を埋めている。

量産メーカーとしては珍しい、スケルトン専用のリュウズ。引きやすく、回しやすい形状が与えられている。


 単価を上げたい実用時計メーカーが好んできた手法は主にふたつある。プチコンプリケーションの搭載と、ムーブメントのスケルトン化だ。とりわけ既存のムーブメントの地板と受けを抜くスケルトンは、時計に高級感を与えやすい手法として、主にスイスの時計メーカーが好んできた。
 しかし実用時計メーカーが使うムーブメントは、基本的にはスケルトン加工に向かない。というのも生産性と頑強さを考慮した実用機は、いわゆる高級機のように、肉を抜いて見せる構成を持っていないからである。

 しかし何事も例外はある。日本のオリエントは、実用機のスケルトン化に挑戦し、四半世紀をかけて進化させてきた。しかもその完成度は、実用機ベースの水準をはるかに超えている。

 オリエントの基幹キャリバーである46系は、初出が1971年の古典機だ。オリエントがこの実用機から自動巻きを外し、地板と受けをスケルトン化したのは91年のことであった。その手法は実用時計メーカーの定石に沿ったもので、具体的にはムーブメントの剛性を下げない範囲で、地板と受けの肉を抜くというものだった。