ブライトリング「クロノマット B01 42」を着用レビュー! 万能性を追求したチタンケースの出来はいかに!?

FEATUREインプレッション
2024.04.15

今回インプレッションするのは、ブライトリングのコアコレクションである「クロノマット B01 42」のチタン製モデルである。クロノマットは、2020年の刷新により「オールパーパスウォッチ」として定義されており、今回のインプレッションはその意味を探りつつ、本作の魅力について考察した。ツールウォッチのストイックさとシックなテイストが同居するデザインで、さまざまなスタイリングとの相性が良かった。また、チタン製ケースによる軽快かつ良好な着用感はオールパーパスを実現するのに欠かせないものであった。

佐藤しんいち:文・写真
Text and Photographs by Shin-ichi Sato
[2024年4月15日公開記事]


クロノマット B01 42 チタン


「クロノマット B01 42」のチタン製最新作をレビュー

 今回インプレッションするのは4月3日に発表されたばかりのブライトリングの最新作「クロノマット B01 42」のチタン製モデルである。クロノマットはブライトリングのコアコレクションであり、2020年に従来モデルに対してデザインを大きく変更した経緯がある。

 デザインのリニューアルは顧客離れにつながる恐れもあるため勇気が必要なことだ。筆者の肌感覚では現在のクロノマットの人気は引き続き高いようで、それと呼応するようにキープコンセプトのまま新作が次々に投入されている。

ブライトリング クロノマット B01 42

ブライトリング「クロノマット B01 42」Ref.EB0134101M1S1
自動巻き(Cal.ブライトリング01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径42mm、厚さ15.1mm)。200m防水。130万3500円(税込み)。

 今回のインプレッションはいつもにも増してタイトスケジュールであったため、webChronos編集部からは「対応可能ですか?」と控えめに打診されたのであるが、筆者はこれに即答で快諾した。クロノマットの実力を体感したかったのだ。

 果たしてそれは大正解だった。ボリュームのあるヘッドでありながら手首へのフィット感が良好で、存在感がありながら日々の生活になじんでくれる。落ち着いた雰囲気をたたえながら格好良い。これらの相反するようにも思える魅力は、現在のクロノマットのコンセプトである「オールパーパスウォッチ」が体現されているからであると筆者は考えた。この点について、インプレッションを通じて述べてゆきたい。


「クロノマット」の系譜をおさらい

 現在のクロノマットの直接的な祖となるモデルは、1983年に有名なイタリアのアクロバット飛行隊とのコラボレーションモデルとして開発された「フレッチェ・トリコローリ」、あるいは翌年の84年にデビューしたクロノマットである(本記事ではこれを初代と記述する※)。その後、時代に合わせてモダンに、そしてマッシブに進化を続けてきた。

フレッチェ・トリコローリ

1983年に当時のCEOだったアーネスト・シュナイダー主導で開発された「フレッチェ・トリコローリ」。比較すると、クロノマット B01 42には、特徴的なルーローブレスの他、ケースサイドからブレスレットにつながるラインを描くシルエットなども継承されていることが分かる。

 転機は2020年。ブライトリングは初代クロノマットのデザインを元に、モダンさと高い外装品質を加えて「クロノマット B01 42」として発表した。この刷新の外観上のポイントは、ケース径が44mmから42mmにサイズダウンされて初代に近付いたこと、初代のアイコニックな「ルーローブレスレット」が復活したことである。

※厳密には、最初に“クロノマット”の名称が与えられたのは、1941年発表モデルだ。対数計算尺を備えており、「Chronograph for Mathmaticians」がその名の由来である。しかし、そのクロノマットの名は70年代にいったん途切れ、1984年まで復活を待たなければならない。最初のクロノマットとフレッチェ・トリコローリ&クロノマット(Chronograh Automatic)の間には40年近くの時間が空いていること、これら2モデルのキャラクターが大きく異なること、そして以降のクロノマットシリーズが、フレッチェ・トリコローリの系譜を引いたデザイン・キャラクターを持つことから、84年のクロノマットをファーストモデルとするのが一般的だ。

「オールパーパスウォッチ」として再定義されたクロノマット

 ブライトリングは、提供するいずれのモデルも「プロフェッショナルのための計器である」との哲学がある。以前の筆者はブライトリングに対し、ダージリンティーの香りよりも焼けたオイルの匂いと緊迫感の漂う現場の方が似合うと思っていたし、実際にブライトリングは現在でも航空機パイロット、特にアクロバット飛行チームの活躍と共にある。またクロノマットは、その出自から考えてもプロフェッショナル向け計器のテイストおよびイメージの強いコレクションであった。

クロノマット B01 42 チタン

 20年の刷新でクロノマットは「オールパーパスウォッチ」として再定義された。オールパーパスとは、公式の言葉を借りれば「自宅でもレッドカーペットの上でもビーチでも、あらゆる要望に応えるブライトリングの万能ウォッチ」とのことだ。単純に解釈すれば、カジュアルからスーツスタイルにもマッチするスタイリングが与えられたと考えてよさそうだ。この再定義に伴って、サイズダウンと共にベゼルやラグがスリムに改められ、エレガントさが加えられたのはその一環である。


クロノマットがオールパーパスウォッチである理由

 これらの背景を踏まえると、クロノマット B01 42およびチタン製ケースを持つ本作を深く理解するには、どのような点がオールパーパスを実現しているのか? を考察するのが近道でありそうだ。


優れた着用感はチタンによる軽量さだけではない

 手首周長約18cmの筆者が着用してみると上手くフィットしてくれて着用感が良い。ケース径42mm、時計仕上がり厚さ15.1mmというスペックよりもコンパクトに感じる。その理由は、縦幅50.5mmと短く、ケースバックの飛び出しを小さく仕立てているためだろう。

 ラグ裏と手首の間の空間も小さく、時計が手首の上でしっかりと座っているのを感じる。数値よりも薄く感じて驚いた点も付記しておこう。

クロノマット B01 42 チタン

アイコニックなルーローブレスレットを模した形状を持つユニークなラバーストラップ。薄手ながらコシがあり、しなやかで非常に良い。このストラップが良好な着用感に寄与しているのは間違いない。

 このようにケース設計の素性が良く、これを比重の小さいチタンで製作した本作は、ラバーストラップ仕様で実測103gであり、その軽量さが良好な着用感の一助になっていることは間違いない。

オールパーパスのコンセプトを表現するデザイン

 コンパクトに感じたのはデザインによるところもある。細めの回転ベゼル、ダイアルいっぱいに配置されたインダイアル、スケールなど機能に必要な表示は緻密に、それ以外はシンプルにまとめていることで引き締まった印象を受ける。プッシャーやリュウズガードの存在感が控えめである点も効いていそうだ。

クロノマット B01 42 チタン

モダンでありながら、どことなくクラシカルな印象があるのは、初代クロノマットのデザインを取り入れているためか。レザーストラップを組み合わせればシックな印象が強まりそうで試してみたいと感じた。

 アンスラサイトグレーのダイアルには縦方向の筋目仕上げが施される。このカラーが本作を落ち着きのあるシックなテイストにまとめてくれているのに加え、光の反射によって表情の変化を生んでいる。アイスブルーのクロノグラフ秒針は本作の特徴のひとつであり、主張し過ぎない挿し色として筆者は好みであった。

 クロノグラフモデルは必要な要素が多いためデザインが煩雑になりやすい。ツールウォッチに振り切るなら視認性を最重視すればよいが、オールパーパスとなるとそうもいかない。その点で本作は、計器としての機能性を確保しながら、クラシカルさもある引き締まったデザインにまとめ上げられている。

シックなテイストを生み出すケースの仕上がりの良さ

 チタン製ケースの質感は非常に高い。整った面にきめの細かいサテン仕上げと、メリハリの効いたポリッシュがエッジ部に施されている。チタン特有のややダークな色調は本作のカラーコーディネートにマッチしている。

 この上質なチタン製ケースは、本作の印象を引き締め、オールパーパスウォッチとするためのシックなテイストを生み出すのに欠かせないものと言ってよいだろう。なお、ステンレススティール製ケースのモデルの仕上がりも良好なので、ぜひ店頭にてチェックしてみて欲しい。

クロノマット B01 42 チタン

ベゼル上の凸部はライダータブと呼ばれるもの。ベゼル外周のビスを外して分解することでライダータブは外れ、入れ替えることでカウントアップとダウンを用途によって変更することができる。


オールパーパスとはいかなるものであったのか?

 さて、前半部で、以前の筆者はブライトリングに対してオイルの香りと緊張感が漂う現場が似合うイメージを持っていたと語った。本作に対して、どう感じたか述べよう。

 まず、その本質は変わっていない。本作は、プロフェッショナルのための計器たらしめる要素の積み重ねの上にある。クロノグラフを作動/停止させればクロノグラフ秒針が緻密に描かれたスケールの上にピタッと止まる。風防はクリアで斜めから見ても視認性が良い。強い光が射し込んだ際は、ダイアルに反射はするがコントラストはあって視認性が確保される。

 ベゼルの操作感はカリカリと明確で操作しやすく、リュウズを締め込むと部品精度の高さが指から伝わってくる仕上がりで、200mの防水性能も有している。プッシャーの操作性はやや硬いものの誤操作の危険性を考えれば適正だ。これらが積み重なって、端正かつストイックなツールウォッチとしての格好良さを本作は有している。

 カジュアルスタイルとのマッチングの良さは自明であると考えて、本作の着用例で筆者は、オールパーパスであることを確かめるべくスーツに合わせてみた。ケース径42mm、厚さ15.1mmの本作をコンパクトと評するのは気が引けるが、スーツとのマッチングに必要と筆者が考えるある種のコンパクトさを備えている。

クロノマット B01 42 チタン

スーツとのコーディネート例。ラバーストラップはスポーティーなテイストが強くなるため、見栄えが非常に良い純正のルーローブレスレットの方がスーツには合いそうだ。

 飛び出しを抑えたシンプルさや、落ち着いた色調がそう感じさせるのだろう。筆者がスーツスタイルに合わせるなら、その質感が良好であると評判のルーローブレスや、レザーストラップを組み合わせてみたい。

 以上より、カジュアルとスーツスタイルを行き来するようなライフスタイルや、ジャケットパンツスタイルを好む人には好適な選択となることだろう。航空産業に携わる方、またはそれらを愛する方、あるいはエンジニアが、スーツに合わせるための1本として、自身の属性が反映される本作を選ぶのも良い選択だと感じる。

 良好な着用感とシックな印象から、インプレッション期間中はいつでも身に着けていたいと感じた。これならばアフタヌーンティーを楽しむ優雅な時間にもマッチすることだろう。


チタンの採用はオールパーパスウォッチのコンセプトの体現につながっている

 チタンは、よりスポーティーでストイックなツールウォッチに用いられることが多い素材だ。それは、チタンが航空機やモータースポーツにて使用されてきた背景があり、軽量で軽快な着用感がスポーティーなモデルに好適だからだ。

 では本作はどうか。チタンを採用したことによる軽快さは着用感の向上に寄与している。良好な着用感は身に着けることへの心理的ハードルを下げ、連れ出す機会は増えることだろう。そして、本作のデザインはさまざまなシーンに受け入れられるシックなテイストにまとめられている。

 ブライトリングは、クロノマットを更なるオールパーパスウォッチとして仕立てるために、外装に加工の難しいチタンを採用し、優れた仕上げをそこに施したのだろう。これは単なる派生モデルではない。筆者はそう結論付けた。



Contact info: Contact info: ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707


〝インフォーマル〟で 〝オールパーパス〟なブライトリング「クロノマット B01 42 ジャパン エディション」

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愛好家がコレクションと共にひもとく、ブライトリング「クロノマット」の魅力

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