セラミックスを高級素材に高めたシャネルのクリエイティビティ

2017.03.16

ハイテク セラミックの材料であるペレット。二酸化ジルコニウムとイットリウムに加え、漆黒もしくは純白の色味を出すための色素、そして、結合材からなる。これらを最適な温度と圧力でペースト状にし、パーツの型に射出成型して成形体を作る。

J12が使用するハイテク セラミック製パーツを焼成する窯。


 J12を発表した2000年当時、セラミックスは高級素材ではありませんでした。私たちシャネルがJ12のクリエイションによって、セラミックスに〝高級感〟を創出したのです」。シャネル パリ 時計部門 インターナショナル ディレクターのニコラ・ボー氏は言う。

 あくまで、工業用素材の延長として見られていたセラミックスを高級時計の外装にふさわしいマテリアルへと昇華させた立役者がJ12であり、J12が採用する「ハイテク セラミック」である。

 2009年3月、ボー氏は、シャネルの自社工房の公開にあたって、次のように述べた。「シャネルは自社でケースやブレスレットなどの外装部品を製造していることを喧伝してこなかった。しかし、J12が広く市場に認知されるにつれ、シャネルのタイムピースが単なるファッションアイテムではなく、〝伝統が育んだ秘術と素粒子レベルの最新技術との出会い〟でもたらされる極めて高度な工業製品であることを知らしめる必要が生じてきた」と。シャネルの自社工房はG&Fシャトランとして知られるが、1993年にシャネルが経営権を引き継いだまさにその年に、J12の開発は始まった。発表まで7年の歳月を費やして、シャネルの求める美観を備えたハイテク セラミックをまとったJ12は世に出たのだが、その内製化が達成されたのは、自社工房公開の約2年前だという。

焼成されたハイテク セラミック製ブレスレットのリンクは2回ポリッシュされるが、これは最初の研磨。この1回目の研磨で各リンクの大きさと厚さが調整される。2回目の研磨ではセラミックスの粒子と研磨剤を交ぜた容器にリンクを封入し、工作機械で特定の振動を加え、リンクに最適な丸みと光沢を与える。この振動数もノウハウのひとつだという。

こうして磨き上げられたブレスレットのリンクは、ひとつひとつ手作業で組み立てられる。