セラミックスを高級素材に高めたシャネルのクリエイティビティ

2017.03.16

バゲットカットされたブラック ハイテク セラミックは貴石同様に21のファセットを施された後、手作業でブレスレットのリンクにセッティングされる。さらに、そのリンクも手作業で組み立てられ、J12のブレスレットが完成する。

同じく、ブラック ハイテク セラミックのバゲットがあしらわれた18Kホワイトゴールド製ベゼルを、ルーペを使って検品する様子。検品も手作業で行われる。


 筆者が、このG&Fシャトランを訪れ、ハイテク セラミックケースの製造工程を目にする機会を得たのは、工房公開の約3年3カ月後の2012年6月のことであった。だが、見学は許されたものの、撮影は一切NG。ここからも、その工程のひとつひとつが社外秘のノウハウの塊であることがうかがえる。

 驚いたのは、J12のハイテク セラミックケースは、原料を型に射出成型して出来たケースの成形体を焼成した時点で、ほぼ完成しているという事実を目の当たりにした時だ。焼成後は、2回の研磨と、ムーブメントや風防、裏蓋などを組み込むために微調整の切削が若干施されるが、基本的なケース形状の成形に切削は使用されていないというのだ。セラミックスは焼結の際、約20%縮む。この焼結による縮小を厳密に計算して、そこから逆算して原料を射出する型を作らなければ到底できない芸当だが、時計のケースはラウンドした面を持ち、4本のラグが突出した立体造形物だ。この入り組んだ形状の成形体は熱によって一様に縮むわけではないことは、素人でも想像に難くない。