手しごとって素晴らしい! エルメスのアトリエが表参道に

2017.03.30

シルクスクリーンの製版には、スタイラスペンが用いられる。実物大の手書きの原画を慎重にデジタル化して、製版する。職人はツールを使い、デザインを色別に分解するのだ。

スカーフに最後の仕上げ、つまり縁かがりだ。「ルロタージュ」と呼ばれるフランス特有の巻き縫いだ。

 

〝アトリエを飛び出してきた〟のは、ジュエリーの石留め職人、シルクスクリーンプリント職人、スカーフの縁かがり職人、時計職人、ネクタイ縫製職人、シルクスクリーン製版職人、磁器絵付け職人、鞍職人、皮革職人、手袋職人の総勢10名のアルチザンたち。広いスペースに作業机、道具、素材などを並べ、黙々と、あるいは来場者の質問に雄弁と答えながら、手しごとを続ける姿は壮観そのものだ。基本的には伝統工芸に立脚した作業が大半を占めるので、職人たちの手技は使い込まれた道具を駆使した昔ながらの技術だ。しかし、シルクスクリーンの製版職人現場では、スタイラスペン(グラフィックタブレット用のツール)を使ったデジタルの技術で手書きの原画をトレースする作業も見られて非常に興味深かった。気になる時計職人のコーナーは、エルメスが採用する幾つかのエボーシュを組み立てる基礎的な内容であったが、多くの来場者は初めて目にする機会とあってか、通訳を通じて質問を投げかけていた。

 会場の入口すぐ正面、つまり一番目立つ場所にスペースを構えていたのは、〝Le Sellier〟(鞍職人)である。いうまでもなく、馬具工房を創業の起源とするエルメスならではのレイアウトだ。会場をぐるぐる回っていると、ハサミやハンマーといった道具類の奏でる音が次々と耳に響いてきて、実に心地よい。品質と価格に対するエルメスのエクスキューズとしては最上の催しとなった。

Contact info: エルメスジャポン Tel.03-3569-3300