リシャール・ミルの〝陰の右腕〟硬く、美しい素材加工の名手

2017.03.30

1969年、スイス・アルベルグに創業したバンゲルターの本社。現CEOは2代目にあたる。当初は機械式時計のムーブメントに使用される人工ルビーを製造していたが、1970年代に機械式時計の不況に見舞われ、人工ルビーから撤退。硬い金属の加工へと移行し、現在はセラミックスやタングステンカーバイドをはじめとする超硬素材の精密加工を手掛ける。自動車部品や医療機器に加え、近年、時計部品の加工も始め、時計産業に再参入を果たした。

 リシャール・ミルが「RM055 バッバ・ワトソン」のベゼルに採用した素材「ATZ」。聞き慣れない素材だが、これは2000気圧で原料を高圧射出することによって密度を高め、結果、20〜30%硬度が高められた強化セラミックスである。このATZは、高硬度ゆえに優れた耐傷性を持ち、加えて、変色しにくいのも重要な素材特性だ。すなわち、RM055のピュアホワイトをいつまでも維持し、かつ傷も付きにくいという最適な素材なのだ。しかし、強化セラミックスという特質上、加工が困難なのが最大のネックである。

 今回、名乗りを上げたのは、セラミックスやタングステンカーバイドなどの超硬素材の精密加工を得意とするメーカー「バンゲルター・マイクロテクニック」。CEOのマーク・バンゲルター氏は言う。

「当社からの営業の結果、セラミックベゼルを作ってほしいという依頼を受けました。素材を提案し、最終的にリシャール・ミルからOKをもらったのです」