日付表示窓大型化への挑戦

2017.04.11

上下2層になった日付表示機構。歯車と櫛歯とによって駆動される連続型になっている。月の大小のプログラミングは、上側の日付ディスクの外周に設けられた月の長さに合わせた段差によって行われる。この月の大小の判別は、「4」の位置にあるピンを介して、図版では「2」の位置にある4つのスリットを持つ歯車に伝達され、ポインター式の月表示を動かす仕掛け。

裏蓋側にある閏年表示。レバーによって送られ、その調整はケースサイド9時位置の修正ボタンで行う。


2月末日から3月1日への瞬時の切り替えを表すイメージ図。

2層のディスクが永久カレンダーを革新

 何の情報も与えられず、この時計を初見で永久カレンダーだと見破れる人は、ほとんどいないであろう。2006年に「モーザー・パーペチュアル1」の名で登場し、その年のジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリで複雑時計部門の最優秀賞を受賞したのは、永久カレンダーを究極のミニマリズムで表現した点が高く評価されたから。一見、日付表示しか持たないと判断するだろうが、実際には時分針と同軸につつましく置く小さなアロー型針が指し示す時インデックスによって、月が判別できる仕掛けに。曜日表示を外したことで、ダイアルはより整理された。一方で、日付表示窓は視線を強く誘うほどに大きく、視認性は極めて良好である。

 日付表示の巨大化は、他社でも試みられている。10の位と1の位の各数字を異なるディスクで左右に並べた、いわゆるビッグデイトがそのひとつ。しかしH.モーザーは、ふたつの数字を分離することなく、日付表示窓の巨大化に挑んだ。それはただ、窓を大きくすれば済む話ではない。1枚のディスクに31日分の数字を刻んだ一般的な日付ディスクの場合、1日分に許される角度は、360/31で、わずか11.6度しかなく、窓の拡張には限界があるからだ。そこで同社は、日付ディスクを上下2枚に分けた。上側は2日分のスリットを設けたC型として1〜15の目盛りを刻み、16~31はそのスリットからのぞく下側のディスクに担わせた。結果、1日分の表示に許される角度は360/17=21度まで拡大され、表示窓を巨大化できたのである。