年次カレンダーの視認性革命

2017.04.13

パテック フィリップ「Ref.5205 年次カレンダー」
ツートーンのダイアルに3つの大きな表示窓を配置。ムーンフェイズに備わる24時間計は、カレンダー調整時の目安となる。ケースサイドとラグは大胆にえぐられている。自動巻き(Cal.324 S QA LU 24H)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWG(直径40mm)。3気圧防水。485万円。

Cal.324 S QA LU 24H
パーツ点数は多く、その分駆動効率は落ちるが、パテック フィリップらしい完璧な加工と各パーツの磨き込みによって、摩擦を最小限にし、また各バネのテンションもぎりぎりまで落とすことで、駆動時の抵抗を抑えた。コストと時間をかけることで歯車を高効率にしているのだ。


設計の妙が創出する年次カレンダーの美

 年に一度、3月1日以外はカレンダーの調整が不要──年次カレンダーは、パテック フィリップによる発明のひとつで、1996年にファーストモデルが誕生した。月の大小を時計が自動で判別するという点では、永久カレンダーと同じ。同社の永久カレンダーが、伝統的なメインレバーで作動させる非連続型であったのに対し、新たに設計された年次カレンダーは動作の大半を歯車が担う設計となっている。

 ご覧の通り、日・月・曜日の各表示窓は、ダイアルの外周、時インデックスを置くサークル上に間隔を置いて並べられている。結果、動きが遅い時針でも、3つの表示窓には干渉しない。分針は窓に重なることもあるが、動きが速いため、その時間はせいぜい3分程度と短い。つまり視認性に優れたレイアウトなのである。曜日と月表示の窓は植字の時インデックスに寄り添うように、日付表示窓はインデックスを兼ねる位置にあり、これもまた時刻の読み取りを邪魔せず、デザイン的に整理されてもいて、いささかも込み入った印象を与えない。