年次カレンダーの視認性革命

2017.04.13

小の月の日送り。ともに日車の上に載った大の月/小の月制御カムが月表示ロッキングアームを押し出し、その突起が24時間車と同軸にある月表示ロッキングアーム回し爪と噛み合い、日車を1日分余分に回す。

大の月の日送り。日車上にある月表示ロッキングアームはカムで押されることがなく、結果その突起は、24時間車の上にある月表示ロッキングアーム回し爪と噛み合わず、余分に日車を送ることなく1日分だけを進める。


 こうした配置は、歯車を組み合わせた構造が可能とする。月の大小に合わせ、月末に日・月の各表示を正確に送るメカニズムは、レバーを用いた方が部品点数を減らせる。翻って歯車に頼る設計では、パーツ点数が増える。パテック フィリップの例では、年次カレンダーのムーブメントの部品点数は、レバー式を採る永久カレンダーより80個も多い。しかし、日送り機構自体は年次カレンダーの方がはるかにコンパクトだ。これが歯車の利点であり、パテック フィリップの設計の妙だ。レバーと違い、歯車は上下に積層した構造が採れる。パテック フィリップの年次カレンダーでは、日送り機構をふたつのユニットに積層した。結果、極めてコンパクトになった日送り機構は、ムーブメント上での設置位置の自由度が高く、月表示をダイアル外周ぎりぎりにまで寄せられるようになった。またスペース的なゆとりにより月表示ディスクは大きく、日表示ディスクも幅広にでき、それが大型の窓をかなえ、視認性を向上させた。ちなみに曜日表示は、月の大小にかかわらず常に7日周期なので、日送り機構とは別のユニットが作動させている。

 機構をコンパクトにする優れた設計が、年次カレンダーをかくも美しくしたのだ。

Contact info: パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109

【美しいカレンダー表示を求めて】
Part.1:カレンダー表示進化論
Part.2:日付表示窓大型化への挑戦