PANERAI ラジオミールを継承するモデル / [マイクロローター新時代]薄型化と頑強さ、高精度を実現した 常識を覆すパネライ Cal.P.4000

2017.07.04

ラジオミール 1940
スリーデイズ オートマティック アッチャイオ-45mm

ラジオミール 1940のケースにマイクロローターを採用した新型自動巻きムーブメントCal.P.4000を搭載。このステンレススティールケースのモデルはブラックダイアルに夜光アラビア数字とバーインデックス、9時位置にスモールセコンドを配する。ねじ込み式リュウズ。自動巻き(Cal.P.4000)。SS(直径45mm)。10気圧防水。114万円。

Cal.P.4000
自動巻きムーブメントとして、初めてマイクロローターを搭載。これによりムーブメントの厚さを3.95mmに抑えることができた。ステンレススティールモデルのマイクロローターはタングステン合金製(レッドゴールドモデルは22Kレッドゴールド製)。ムーブメント径31mm。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。部品数203点。


 ラジオミール1940に搭載された、パネライ初のマイクロローター搭載自動巻きがキャリバーP.4000だ。マイクロローターの利点はその薄さにある。センターローターのキャリバーP.2003とムーブメントの厚さを比較すると、P.2003が厚さ8㎜に対し、P.4000は3・95㎜と大幅に薄い。さらに、最も普及している汎用自動巻きムーブメントETA2892A2(センターローター、直径25・6㎜、厚さ3・6㎜)と比較しても、P.4000は厚さにおいては0・35㎜しか厚くなっておらず、マイクロローターを受けと同じレイヤーに組み込んだ成果が出ている。しかし、頑強さにおいては上下2層のツインバレルをしっかり押さえる大きな受けと、両持ちテンプのため、ETA2892A2を圧倒的に凌駕している。

 それだけでも魅力的なムーブメントなのだが、P.4000の特徴は数多い。まず、パワーリザーブが約72時間(3日巻き)ということ。これは、これまでのマイクロローター搭載機では実現しなかったスペックである。ゼンマイを収納する香箱が上下2層構造のツインバレル式を採用しているため、可能になった。パワーリザーブとも関係してくるが、いかに効率よく動力を生み出せるかということはマイクロローターの長年の命題でもあった。従来のマイクロローターではローターが左右に回転しても、そのほとんどが一方向でしか主ゼンマイを巻き上げることができなかった。P.4000ではそのデメリットを解消するために、センターローターでは最早スタンダードなリバーサー(切り替え車)を使った両方向巻き上げ式を採用した。この2枚の切り替え車は、マイクロローターの下にコンパクトに収められている。これにより巻き上げ効率の低さを大幅に改善することができたのである。


ムーブメント厚の半分以上を占めるタングステン合金製のマイクロローター。その下に両方向巻き上げを可能にする2枚のリバーサーが収められる。緩急針を廃したフリースプラングや3日間のパワーリザーブを実現したツインバレルなど、これまでの自社開発で蓄積したノウハウにマイクロローターの利点を組み合わせた画期的な新設計のムーブメントだ。

 次いで、精度の高さの実現である。パネライでは、ガンギ車の歯と爪石の当たり(接触距離)を厳密に詰めることで、トルクロスを軽減し、調速機の精度を高める。また、ツインバレルによる3日巻きのロングパワーリザーブは、輪列へのトルク供給を安定させ、これも高精度に貢献している。また、従来のマイクロローター搭載機に見られた緩急針を廃し、フリースプラングを採用することで、衝撃が加えられた際に歩度が狂うリスクも低減する。このように多くの改良点により精度を高めることに成功したのだ。
 3つ目は、その頑強さである。「マイクロローター」=「薄型ムーブメント」=「高級ドレスウォッチ」というイメージの連鎖が出来上がっているが、パネライはラグジュアリーではあるがスポーツウォッチでもある。すなわち、スポーツウォッチだからこそ、ムーブメントの頑強さは不可欠なのだ。パネライのこれまでの自社開発ムーブメント、キャリバー2000系、3000系、5000系に共通する特徴である両持ちのテンプ受けとムーブメントの大半を覆うブリッジ。頑強さを実現するこの構造は、確かにP.4000にも受け継がれている。


Contact info: オフィチーネ パネライ Tel.0120-18-7110

【マイクロローター新時代】
Part.1:[なぜマイクロローターは開発されたのか?]