マイクロローターと複雑時計 / [マイクロローター新時代]コンプリケーションのプラットフォームとしてのマイクロローター

2017.07.14

VAN CLEEF & ARPELS

ピエール アーペル
ユール ディシ エ ユール ダイヨール

ふたつのジャンピングアワーを備えたGMTウォッチ。5時位置の時刻を切り替えることで、ふたつの時間帯を表示できる。マイクロローターの採用によりケース厚はわずか7.97mm。自動巻き。35石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KWG(直径42mm)。3気圧防水。402万5000円。問ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク Tel.0120-10-1906

ベースとなったのは、アジェノー製のマイクロローター自動巻き。巻き上げ効率を改善すべく、マジックレバー式の自動巻きを採用する(写真上)。また、主ゼンマイのトルクもマイクロローターの水準を超えるほど強いものである。もうひとつの特徴が、あえてある程度の厚みを持たせた点。その結果、受けには深い面取りを与えられるようになった。


 ただし、状況は変わった。今や各社はマイクロローターをコンプリケーションのベースとさえ見なそうとするようになった。大きな理由は、コンピューターの普及により、弱い力で動く付加機構を作れるようになったこと。今や永久カレンダーモジュールの中には、振り角に対する影響が10度以下というものさえ見られるようになった。これだけ軽ければマイクロローター自動巻きの弱いトルクでも十分動くだろう。

 また脱進機回りの進化によって、マイクロローター自動巻きがいっそう「省エネ」になった点も理由に挙げられそうだ。その最も分かりやすい例がシリコン製の脱進機である。脱進機を軽くすることで、理論上はパワーリザーブを増やすか、振動数を上げるか、またはテンプを大きくできる。仮に付加機構がトルクを消費しても、軽い脱進機は性能低下を帳消しにしてくれるだろう。最新のパテック フィリップや、ローラン フェリエのマイクロローターは、明らかに脱進機の軽量化を、性能の向上と拡張性という目的に向けている。