細かなモディファイが光る デュアルタイムの傑作 / ARNOLD & SON

2017.10.16

ダブルバランスGMT

細かなモディファイが光る デュアルタイムの傑作

際立った個性で、愛好家から支持を受けるアーノルド&サン。しかし同社の時計は、高い実用性をも兼ね備えている。その好サンプルが、限定モデルの「DBG スケルトン」だ。

Photographs by Eiichi Okuyama
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

インストゥルメントコレクション DBG スケルトン
DBGとは「ダブルバランスGMT」の意味。ローカルタイムとGMTタイムのふたつを表示できるプチコンプリケーションである。手巻き(Cal.A&S 1309)。42石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KRG(直径44mm)。30m防水。世界限定30本。423万円。
 アーノルド&サンの魅力とは、少量生産ゆえのユニークさと、戦略的な価格、そして高い実用性を備えた点にある。インストゥルメント コレクションに加わった限定モデルの「DBG スケルトン」は、そんな同社ならではの新作といえるだろう。ベースモデルは、ふたつのムーブメントで、ふたつの時間帯を表示するDBG。その文字盤を肉抜きし、表示機構の一部を露出したのが本作だ。
 驚かされるのが、使い勝手に対する細やかな配慮だ。3時位置のリュウズは、主ゼンマイの巻き上げと、3時にあるローカルタイムの調整用。対して9時位置のリュウズは、9時位置のGMT時間を調整するために使われる。なお12時位置に見える2本の針は、ローカルタイムとGMTタイムそれぞれの24時間を表示するもの。肉抜きされた針がGMT針に、平たい針がローカルタイム針に対応しており、ふたつを混同することがない。また主ゼンマイを3時位置のリュウズのみで巻き上げるため、DBGシリーズはムーブメントをシンプルにすることができた。結果、薄くでき、理論上は故障も起きにくい。
 最後に、誰も気づかないであろう、しかしアーノルド&サンらしい点をひとつ挙げたい。ベースモデルのDBGは、ムーブメントの面取りがすべて手仕上げだ。対して本作は、文字盤側の面取りをダイヤモンドカットに改めた。ただそれだけの改良だが、グレーのムーブメントに、太いダイヤモンドカットの面取りは見事に映える。見た目のために、仕上げを一新したアーノルド&サン。こういった配慮を加えるメーカーの時計が、駄作であったためしは一度たりともない。

ふたつのムーブメントを搭載するDBG スケルトン。右の文字盤がローカルタイム、左の文字盤がGMTタイムを表示する。12時位置に見えるのが、両者の24時間計。プロトタイプから針の仕上げが変更されたため、24時間計は見やすくなった。センターに見えるのは秒針である。

DBGのムーブメントをスケルトン化し、地板にグレーのNACコーティングを施したのが、Cal.A&S 1309。アーノルド&サンらしく、巻き上げ機構以外は完全にシンメトリーなレイアウトを持つ。厚さが3.5mmしかないため、ケース厚も9.89mmに留まった。

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