ブルガリ/ブルガリ・ブルガリ

FEATUREアイコニックピースの肖像
2020.04.11

BVLGARI BVLGARI [1977]
スナップバックの市販最初期モデル

ブルガリ・ブルガリ Ref.BB33GLD

ブルガリ・ブルガリ Ref.BB33GLD
1977年初出。ブルガリ・ローマの意匠を受け継ぎながら、実用性を高めた市販型。搭載するのは手巻きではなく、デイト付きのクォーツムーブメント。77年のモデルと形状は同じだが、バックケースの刻印と製造番号から判断すると、この個体は1980年代後半以降に製造されたものだろう。ブルガリに大躍進をもたらした立役者であり、初出から40年近くを経てなお、その存在感は色褪せない。クォーツ。18KYG(直径33mm)。30m防水。ブルガリ蔵。

 ブルガリ・ローマのいわば量産型が、1977年のブルガリ・ブルガリである。製作の指揮を執ったのは、やはりジャンニ・ブルガリ。意匠は76年のモデルに似ているが、細部には手が入れられた。大きな違いはバックケース。同じくスナップバックながら、巻き芯まで覆われたものに改められ、非防水から30m防水になった。搭載するムーブメントも異なり、76年のオリジナルは手巻きだが、77年以降は、一部のモデルを除いてクォーツに改められた。3時位置にデイト表示を付けたのは、実用性に対する配慮である。

 超富裕層向けというブルガリのイメージを変えたかったジャンニは、この薄型2針を新しいアイコンに育てようと考えた。ブルガリ・ブルガリが、当初から大メーカーも顔負けの緻密なラインナップを揃えた理由である。まずはケースサイズ。当初33㎜のみであったケースは、すぐに30㎜、26㎜、そして23㎜が加えられた。またハイジュエラーには珍しく、ブルガリはステンレスという〝新素材〟にアレルギーを持っていなかった。1981年にスティールケースの「BB 33 SLD」と、そのブレスレット付きのバリエーションを追加。その人気に拍車をかけた。なおベゼルとミドルケース、そしてラグを一体にしたブルガリ・ブルガリのケースは、スタンピング加工(冷間鍛造)に向いていない。しかしデザインを一切変えることなくSSケースに改めたのは、ブルガリの心意気というものだろう。

 70年代以降、大がかりな世界進出に成功するブルガリ。その原動力となったオリジナルピースに、同社が愛着を持ったことは間違いない。77年以降、ブルガリ・ブルガリは素材違いやデザイン違いなどさまざまなバリエーションを加えることになる。しかしクォーツを載せたオリジナルのBB33は、ほぼ同形状を留めたまま、生産が継続されたのである。

(左上)手彫りからスタンピング加工に変更されたロゴ。その深い彫りは、以降のブルガリ・ブルガリに共通する要素となった。なお文字盤は、ポリッシュラッカーから表面を荒らしたグレイン仕上げに変更された。文字盤で見るべきはプリントされた印字。黒地とほぼツライチで収まっている。象眼を思わせる精密な印字は、後にも先にも、他に似た例がない。(右上)トルクの小さいクォーツを搭載したためか、針は立体的なものから平たいダイヤモンドカットに変更された。ただし女性用の手巻きムーブメント搭載機(例えばBB23など)は、相変わらず立体的な針を載せていた。(中)ケースサイド。側面が縦に伸ばされ、ラグの取り付けも斜めからに変更された。(左下)最大の変更点がバックケース。巻き芯までカバーした一体型のスナップバックに改められた。なお最初期型はバックケースに「BVLGARI」または「BVLGARI QUARTZ」とのみ刻まれ、ホールマークがない場合もある。ただし初期のブルガリ・ブルガリは刻印の変更が多いため、何を最初期型とするかはコレクターの間でも定義が分かれる。(右下)ラグとケースの関係。ブルガリ・ローマに比べてラグの幅はかなり細くなった。茶色いヌバックのストラップはこの時計に不可欠な要素として、後年まで継承された。