オメガ/シーマスター300

FEATUREアイコニックピースの肖像
2021.03.15

SEAMASTER 300 [Ref.233.30.41.21.01.001]
超耐磁性を備えた新生シーマスター 300

シーマスター300 [Ref.233.30.41. 21.01.001]
2014年初出。外観は1950年代のCK2913を思わせるが、ムーブメントには1万5000ガウス以上の耐磁性能を誇るマスター コーアクシャルを搭載。近年のオメガらしく外装の作りは優秀だ。自動巻き(Cal.8400)。38石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径41mm)。300m防水。64万円。

 1970年代に、第4世代までの変遷を遂げていたオリジナルシリーズが生産終了となって以降、復活したシーマスター300の名称は飽和潜水に対応する「プロフェッショナル」モデルのみに使われてきた。しかし2014年、そこにCK2913の純粋な復刻版である〝新生シーマスター 300〟が加わった。しかしオメガは、なぜ50年以上も昔の初代シーマスター300をモチーフに選んだのだろうか? 近年のオメガが復刻調のモデルを好むのは分かるが、少し古過ぎないか。この疑問に対してオメガ社長のステファン・ウルクハート氏は、「サロンQP」誌のインタビューで次のように答えている。

「(同じく復刻された)スピードマスター マークⅡは紛れもなく1970年代製であることを主張している。しかしオリジナルを知らない人にとって、シーマスター 300も昔のモデルには見えないだろうね」

 レトロフューチャーだが、昔の時計に見えないから選んだ、というわけだ。

 確かにケースや文字盤のデザインは、ファーストモデルにほぼ同じ。しかしこれは単なるレトロウォッチではない。ムーブメントには1万5000ガウス以上の耐磁性能を持つマスター コーアクシャルを採用し、ベゼルはリキッドメタルを象眼したセラミックス製となった。またブレスレットも、微調整可能なバックル付きである。つまりこの「レプリカ」は、外観こそアンティーク調だが、その中身は最新鋭なのである。

 正直、デイト表示を省いた腕時計が、愛好家以外に受け入れられるかは疑わしい。しかしそのルックスと高性能、そして適切な価格設定を考えれば、このモデルは間違いなく〝ワンダフル・バイ〟だ。加えて質感は、かつてのオメガとは比較にならないほど優れているという点も付記しておきたい。

(左上)最も変わったのは、回転ベゼルの構造だろう。かつてのシーマスター300は、ケースに風防を取り付け、その外周に回転ベゼルを置いていた。対して新しいシーマスター 300は、現代のダイバーズウォッチらしく、ミドルケースに直接風防を取り付けている。ベゼルの上面はセラミックス製。そこにリキッドメタルを用いてインジケーターを象眼している。(右上)ファーストモデルと同様、文字盤は2層構造。あえてクリーム色の蓄光塗料を用いることで、アンティーク風に仕上げている。表面を荒らし、その上にブラックラッカーを吹き付けた文字盤もCK2913に同じ。しかし高級感を出すためか、角度を変えても白くならない程度に、表面の荒らし方は抑えられた。(中)ケースサイド。300m防水となったためか、ミドルケースの厚みが増した。仕上げが優れていることは、側面の筋目仕上げが示すとおり。(左下)トランスパレントに改められた裏ブタ。姿を見せるのは、Cal.8500からデイト表示を省いたCal.8400。耐磁性能は1万5000ガウスを超える。(右下)ラグの形状も、初代モデルを忠実に模している。現代の時計らしく、弓管とラグのクリアランスはかなり詰まっている。ただし理想を言えば、まだまだ詰められるはずだ。