ブレゲ/マリーン

FEATUREアイコニックピースの肖像
2019.07.09

MARINE 5817
大径化と防水性強化を成し遂げた〝第2世代マリーン〟

マリーン 5817

マリーン 5817
第1世代のデザイン要素を残しつつ、100mの防水性を与えたマリーンの大ヒット作である。2004年初出。自動巻き(Cal.517GG)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SS(直径39mm)。100m防水。168万円。

 古典的なブレゲに、スポーティネスをうまく接ぎ木した1990年のマリーン。その後継機にあたるのが、2004年に発表された、通称「マリーンⅡ」である。大きな違いはサイズ。防水性能を100mに高めた結果、直径は39mmに拡大された。またラフに使えるラバーストラップと、後にはSSブレスレットが追加された。

 従来までのトーンを守りつつ、よりスポーティーさを増した第2世代のマリーン。可能にしたのは、ケース製法の進化である。かつて、側面にコインエッジを彫ったケースをSSで成形するのはほぼ不可能だった。しかし、1996年、ブレゲはアエロナバルでコインエッジ入りのSSケースを採用。そのノウハウを、より高級なマリーンに転用したのである。満を持して採用しただけあって、その仕上げはブレゲに相応しいものだった。

 もっとも、SSモデルが加わったといっても、マリーンは決して「エントリーモデル」ではなかった。その証拠に金を彫り込んだギヨシェ文字盤や、青焼きの針はそのまま残されたうえ、ブレスレットも、相変わらず凝ったものだった。なお2005年に追加されたブレスレットは、第1世代のコンビモデルを思わせる4連(正しくは6連)のブレスレットである。しかし、14年の新しいブレスレットは、よりスポーティーさを強調した2連に改められた。ブレゲは、高級さを損なわない範囲で、このモデルを時代に合ったものに進化させたわけだ。それを象徴するのが2004年に発表された本作である。6時位置に設けられたラージデイトは、当初ブレゲらしくないと批判を受けたが、たちまちマリーンのアイコンとして認識されるようになった。

 スポーティネスを加えたコレクションから、よりスポーティーさを強調したモデルへ。第2世代のマリーンは大ヒット作となり、ブレゲの定番として認識されるようになる。

(左)第2世代からは、時分針にも夜光塗料が施された。スポーツウォッチに比べると発光量は弱いが、スポーティーウォッチとしては十分以上だろう。6時位置に見えるのは、第2世代マリーンのアイコンとなったビッグデイト。簡潔な構造を持つこの日付表示は、ブランパンでも好まれた。
(右)立体感を増したギヨシェ彫りの文字盤。他のコレクションに同じく、ベースは18Kゴールド製で、すべて手彫りである。スポーティーさを強調すべく、文字盤の外周部には、夜光塗料が施された。

ケースサイド。マリーンが、多くのスポーツウォッチと一線を画した理由は、薄さにある。マッシブなケースを持つにもかかわらず、ケース厚は11.82mm。そのため、細身のシャツの袖口にも無理なく収まった。なおリュウズの脇に見えるのは、リュウズガード。

(左)フレデリック・ピゲ1150を全面改良したCal.517。発表当初のモデルはトリオビス緩急針付きだったが、途中から、写真のようなフリースプラングテンプとシリコン製ヒゲゼンマイの組み合わせに変更されている。
(右)ケースに合わせて太くされたラグ。第1世代のラグも、標準的なブレゲに比べるとわずかに太かったが、第2世代は明らかに幅が広くなった。