GMT機構 第2回「GMTウォッチ Part.1」

FEATURE時計機構論
2017.04.21

ロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスター」
初代モデルは1955年に発表。24時間針(GMT針)と、赤と青で昼夜を区別した両方向回転24時間ベゼルによって全世界の第2時間帯表示を可能にしたこのモデルは、現代のGMTウォッチの基本を確立した。もともと航空会社のパイロットの要望に応えてロレックスが開発し、パン・アメリカン航空などのいくつかの航空会社が公式時計に採用した。個人蔵。
菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara

「GMT」を腕時計の品名に用い、この言葉を広めた意味でも功績が大きいのは、やはりロレックスだ。1950年代に入り、ジェット機による旅行が本格化するようになると、世界レベルでの時刻の把握は以前にもまして重要になった。そんな時代背景のもと、国際線のパイロットの要望に応じて1955年に誕生し、アメリカのパン・アメリカン航空のオフィシャル・ウォッチに採用されたことでも有名になったのが「オイスター パーペチュアル GMTマスター」だ。

 GMTウォッチのスタンダードを確立したといってもよいこの歴史的傑作の特徴は、見やすさと使い方が非常にシンプルな点だ。ダイアルに2本の時針があり、1本は12時間で1周する通常の時針、もう1本は、24時間で1周するGMT針である。GMT針は通常の時針と連動して回転し、先端の三角マークをベゼルに記された24時間目盛りに対応させて、別地域の時刻(セカンド・タイムゾーン=第2時間帯)を読み取れるという仕組みである。

 実際の旅行で「GMTマスター」を使うとこうなる。例えば東京からイギリス・ロンドンに旅行したとする。到着したら12時間表示の針を回して現地の時刻(ローカルタイム)に修正する。次に東京とロンドンの時差は9時間(サマータイムなら8時間)なので、ベゼルを9時間分回して、24時間表示のGMT針で東京の時刻(ホームタイム)を読み取るように設定する。この場合、ユーザーがふだん生活する東京が起点だから、それが概念上のGMT、つまり世界時間の基準と考えるわけである。