GMT機構 第2回「GMTウォッチ Part.1」

FEATURE時計機構論
2017.04.21

ロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ」
1983年には高機能に改良された「GMTマスターⅡ」が誕生。時計が動いたままメインの時針が分針や秒針から独立して前後に調整できるようになり、旅行先で迅速に時差修正ができる。この現行モデル(2007年発売)では、回転ベゼルにセラクロムを採用する新しいデザインに変わり、独自に開発された高性能の自動巻きムーブメントCal.3186を搭載。個人蔵。

 GMTウォッチの基本的な表示の区別は、12時間表示のほうは行く先々のタイムゾーンに合わせて変更するローカルタイム、24時間表示のほうは変更しないで表示させるホームタイムだ。メインの針が表示しているのが今自分がいる場所で使う時刻であり、自分が今いない別の場所の時刻は「セカンド」として扱う。そして回転ベゼルは、両者を媒介する時差調整器である。これを利用して「セカンド・タイムゾーン(第2時間帯)」を表示する仕方には、さらにこんな応用も可能だ。

 先のロンドン旅行の際に、GMTの起点となるホームタイムを東京に設定した。しかし、必ずそうしなくてはならないわけではなく、回転ベゼルでまた別の時差設定を行えば、ニューヨークなどの世界の別地域の時刻を表示させて使うこともできる。そうした参照時間という意味で、セカンド・タイムゾーンをホームタイムと限定せずに「リファレンス・タイム」と呼ぶこともある。

 ロレックスは1983年になって「GMTマスター」を一段と使いやすく改良した「GMTマスターⅡ」を発表した。初代「GMTマスター」との違いは、ムーブメントが動いている状態で分針や秒針に影響を与えることなく、リュウズ操作によりメインの時針のみを素早く前後に動かせるようになった点である。1時間単位で移動が可能なメインの時針は、時差に対応する仕組みになっており、時差修正(タイムゾーン変更)がいとも簡単にできるのである。先の東京とロンドンの例でいえば、東京からロンドンに移動したら、時針だけを9時間戻せばローカルタイムの表示になるから、GMT針で東京のホームタイムを表示させるのに、回転ベゼルで時差を調整する必要はなくなった。