GMT機構 第3回「デュアルタイムとバリエーション」

FEATURE時計機構論
2017.04.28

ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート・ムーン」
「レベルソ」の反転式ケースの両面にデザインの異なる別々のダイアルをセットして、旅先でのデュアルタイム表示を可能にした「デュオ」のオリジナルは1994年に登場。同機能を受け継ぐ2017年のこのモデルは、ローカルタイム用の表ダイアルに日付カレンダーとムーンフェイズ、ホームタイム用の裏ダイアルにデイ/ナイト表示をそれぞれ配置。手巻き(Cal.853A)。

ジャガー・ルクルト「マスター・コントロール・ジオグラフィーク」
センターと6時位置に、いわば2つの時計を配したデュアルタイム。旅先で別の都市の時刻(第2時間帯)を参照する際には、6時位置のダイアルを使う。10時位置のリュウズで調整し、ダイアル最下部の窓から見える世界24タイムゾーンの主要都市を設定する。さらに第2時間帯の昼夜を区別するためのごく小さな24時間表示も装備。写真は2017年モデル。自動巻き(Cal.809A/1)。


 パテック フィリップ「トラベルタイム」の秀逸な点は、必要に応じて2本の時針を分離できるだけでなく、ダイアルも共用するので、表示がシンプルで見やすいところ。これに対して、デュアルタイムでも、ダイアル内に独立した表示を別に設けるタイプも少なくない。時針と分針が備わるもう一つの小さな時計が組み込まれているようなものなので、直観的にホームタイムを把握しやすい。最近のモデルでは、ヴァシュロン・コンスタンタン「ハーモニー デュアルタイム」、ロレックス「チェリーニ デュアルタイム」、それにオーデマ ピゲ「ロイヤルオーク デュアルタイム」などだ。また独立ダイアルによる別のタイプとしては、反転式ケースの表と裏で2つ異なる時刻表示が可能なジャガー・ルクルトの古典的な「レベルソ・デュオ」もシンプルで使いやすい。

 時針と分針を備える独立ダイヤルをもったデュアルタイムにひと工夫凝らしたのがジャガー・ルクルト「マスター・ジオグラフィーク」(1990年初出)だ。これは独立ダイアルと都市名とを連動させ、ホームタイムもしくは第2時間帯表示が世界のどこの時刻を指しているかが一目瞭然である。これも基本的にはデュアルタイムの延長だが、ワールドタイム的な表示要素を加味したところが秀逸だ。A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1・タイムゾーン」も、考え方としてはまったく同じだ。

 デュアルタイムをトリプルタイムに拡張して有名になったモデルに、フランク ミュラーの「マスターバンカー」がある。ダイアルの上部と下部に、時針と分針を備えた独立ダイアルを2つ追加しているのが最大の特徴だが、これら第2と第3の時刻がメインと同様に12時間表示になっていて、参照すべき地域の昼夜がわからなところが惜しまれる。