チューダーからアメリカ海軍との歴史を感じさせる「ペラゴス FXD」の新作が発表

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2023.09.25

何十年にもわたり、アメリカ海軍ダイバーたちの腕元で任務を支えたチューダー。そんな同ブランドのウォッチにオマージュを捧げた、新たな「ペラゴスFXD」が順次発売となる。現代における究極の“ミリサブ”として、ストラップバー固定構造、チタニウム製ケース、高性能マニュファクチュールキャリバーと経過時間計測が可能な逆回転防止ベゼルを備えた実用性の高いモデルだ。

TUDOR「ペラゴスFXD」

TUDOR「ペラゴスFXD」Ref.25717KN
自動巻き(Cal.MT5602)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径42.0mm、厚さ12.75mm)。20気圧防水。54万100円(税込み)。


アメリカ海軍に評価されてきたチューダーのダイバーズウォッチ

 50年代半ばに、チューダーのダイバーズウォッチはアメリカ海軍の検査を受け、軍内の複数のチームにより評価されていた。1958年には正式に採用され、さまざまな部隊で活動するダイバーたちに支給するために購入された歴史がある。今回発表された新作「ペラゴス FXD」は、この時代のミッションに携行されたタイムピースの、精神性を現している。ケースにストラップバーが固定(Fixed)された、極めて頑丈な構造に名前を由来するFXDもミッションウォッチらしいディテールだ。往年の“ミリサブ”(ミリタリー サブマリーナーの略称)を想起させるスタイルだが、本作は最先端技術が投入された、現代ダイバーズウォッチでもある。

TUDOR「ペラゴスFXD」

セルフグリップ着脱システムによるファブリックストラップ、フォレストグリーンにレッドのセンターライン入り、テキスタイルモチーフがエンボスされたブラックのラバーストラップに、チタニウム製バックルが付属する。

 外観は60年代後半のチューダー オイスター プリンス サブマリーナー(Ref.7016)を彷彿とさせる。ケースと一体化したストラップバーは米軍仕様の要素だが、初期のチューダー サブマリーナーに見られたポインテッドクラウンガードのような、異なる時代のチューダーが手がけたプロダクトで見られたディテールも取り入れられている。

TUDOR「ペラゴスFXD」

アメリカ海軍は、1950年代後半から何十年にもわたり、チューダーのダイバーズウォッチを採用した。Navy SEALsが1962年の結成時から80年代後半まで、チューダーを着用して任務に就いていたことは有名な話である。


 チューダーウォッチは、水中破壊工作部隊、シービーズ(アメリカ海軍の建設工兵隊。戦地における基地や道路の建設、防衛が任務である。Construction Battalionの略称であるCBと蜂のように働き者であることから語呂合わせでハチのロゴを採用している)、海軍潜水学校の教官など、あらゆる水中任務で重宝されてきた。潜水学校では訓練生にスキューバダイビングの基本を授け、米軍内外の潜水艦基地では水中潜水艦の整備士のパートナーとなった。さらにチューダーの時計は、世界中の海面下で革新的な水中技術が生まれる瞬間にも一翼を担う存在だった。

TUDOR「ペラゴスFXD」

もとは現役の戦闘ダイバー部隊と共同で開発されたFXDのケースは、特殊任務に必要な独自の仕様を満たしている。より高い堅牢性と信頼性のためにチタニウム製ケースに固定されたストラップバーを例とした、チューダー コレクションの中でも異彩を放つ機能的特徴を備えているのはそのためである。ラグ同士をつなぐこの形状は本作の独特なシルエットのキーとなっている。もうひとつの特徴は、人間工学に基づいた、あ60ノッチを刻んだ逆回転防止ベゼルであ。

 このように、チューダーは数十年にわたり、ミッションウォッチのサプライヤーとしてアメリカ海軍をサポートしてきた。1965年発行の「Underwater Demolition Team Handbook(水中破壊工作部隊便覧)」の初版には、チューダー オイスター プリンス サブマリーナー(Ref.7928)がダイバーズウォッチに関する段落に掲載されている。この便覧は、新人工作員が水中破壊の手順を学ぶ際に欠かせない文献だった。

 1973年になると、アメリカ海軍の潜水マニュアルに、チューダー オイスター プリンス サブマリーナー(Ref.7016と7021)が海軍公認の潜水時計として掲載されている。翌1974年、アメリカ国防総省の供給システムを管理・追跡するため、ナショナル・ストック・ナンバー・システムが導入された。そして1978年からはコード6645-01-068-1088の下で、補給将校は信頼できる海軍承認の潜水時計を必要とする相応の船員または工作員にチューダー オイスター プリンス サブマリーナー(Ref.9411または後の76100)を購入し、支給することができるようになった。このコードは、実に2004年まで用品カタログに掲載されていたものである。

TUDOR「ペラゴスFXD」

新しいペラゴスFXDの意匠は、60年代後半から80年代前半にかけてアメリカ海軍の隊員たちが着用していたチューダーのダイバーズウォッチを着想源としている。

 軍人に支給される時計には通常、固有の管理番号が刻印されるが、アメリカ海軍に支給されたチューダーの時計はその限りではなかった。全軍で統一されたマーキングシステムは存在しなかったのだ。これらの時計は何の印もないか、あるとしても部隊単位で在庫管理の目的で刻印された程度であった。多くの異なるコーディングの類型があることも状況を複雑にしており、数十年のスパンで、複数の品番にわたる非常に多数のチューダー ウォッチがアメリカ海軍に納入されていたことが公式に記録されているにもかかわらず、それらの時計の多くには刻印が残されていない。そのためチューダーの軍支給時計の出自を特定することは難しく、今日の時計研究家を悩ませている。

TUDOR「ペラゴスFXD」

アメリカ海軍のダイバーは歴史的に主にナイロン製のブラックまたはグリーンのファブリックストラップを装着してチューダー ウォッチを使用していた。ペラゴスFXDに付属するふたつのストラップは、ブレスレットよりもストラップを好むこのミリタリー的伝統から着想を得て、さらに工夫を加えたものだ。中央にレッドのラインが入った、セルフグリップ着脱システム付きのグリーン ファブリックストラップが初期設定となっている。さらにテキスタイルモチーフがエンボスされたブラックのラバーストラップも付属する。

 時計全体のカラーはブラックで、暗闇の中での使用でも発光強度を最大化させるために、1969年に導入されたスクエアが先端についた“スノーフレーク針”やスクエア型のアワーマーカーが採用されている。他にも、発光塗料を用いたサンドブラスト仕上げのセラミック製インサートと逆回転防止ベゼルを採用し、ケース全体にサテン仕上げを施し、そのマットな質感によって光の反射を制限している。

TUDOR「ペラゴスFXD」

チューダーは2010年にいち早くファブリックストラップを採用している。フランスのサン・テティエンヌで150年以上家族経営を続けるジュリアン・フォール社によって、19世紀の織機を用いて生み出されるファブリックストラップは品質と快適さを両立する唯一無二の存在である。ペラゴスFXDのためにジュリアン・フォールとチューダーは、新しい構造のストラップを開発した。

TUDOR「ペラゴスFXD」

搭載されるムーブメントは約70時間のパワーリザーブを誇るMT5602である。 時針と分針、秒針を備え、他のチューダーのマニュファクチュールキャリバーと同様に、モノブロックのタングステン製ローターはオープンワークで細部にサンドブラストを伴うサテン仕上げ、さらにブリッジとメインプレートはサンドブラスト表面とレーザー装飾が交互に施されている。

 堅牢性、耐久性、信頼性そして精度を兼ね備えたこのムーブメントは2か所で固定されたトラバーシングブリッジによって維持される可変慣性テンプを有している。また耐磁性シリコンバランススプリングを備えるほか、MT5602はスイス公認クロノメーター認定を取得している。この認定ではムーブメントの状態で日差が-4秒から+6秒を基準としているが、チューダーはさらにその上、腕時計としてくみ上げられた状態で日差が-2秒から+4秒という、より高い基準を達成している。



Contact info:ステディスタディ Tel.03-5469-7110



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