機械式腕時計、手巻きを選ぶのか?自動巻きを選ぶのか?

FEATURE良質な時計の選び方
2019.03.25
オーデマ ピゲ 3120
オーデマ ピゲ 3120
スイッチングロッカー式の両方向巻き上げ自動巻きを載せた自動巻き。ムーブメントの下側に見えるのが、自動巻き機構である。コンパクトで摩耗しにくいが、ローターが重くないと十分に巻き上げできない。高級自動巻きが好むメカニズムだが、現在採用するメーカーは多くない。

●両方向巻き上げ自動巻き

頻繁に腕を動かす場合ゼンマイが良く巻き上がる、腕に伝わるショックが小さい
×自動巻き機構が複雑である

 両方向巻き上げ自動巻きは、現在ほとんどの自動巻きが採用する。腕に伝わるショックは小さいが、設計が良くないと巻き上がりにくいとされる。なお、両方向巻き上げ自動巻きには、主に3種類がある。

1.リバーサー式。大量生産に向く上、設計が良ければゼンマイも巻き上がりやすい。ただし一般的なリバーサーは、経年劣化で巻き上げが悪くなりやすく、また修理の度に交換の必要がある。代表例はETA2892A2、2824、ロレックス3100系など。2つの歯車を並列したものが一般的だが、最近はスペースを小さくするため、上下に重ねたものもある。

2.スイッチングロッカー式。かつての高級機が好んで採用した自動巻き機構。現在も、オーデマ ピゲやA.ランゲ&ゾーネ、ノモスの一部自動巻きが採用する。摩耗しにくく、サイズが小さいというメリットがあるが、ローターが重くないとゼンマイが巻き上がりにくい。

3.ラチェット式。爪でゼンマイを巻き上げる自動巻き機構。著名なものにはIWCの「ペラトン」、セイコーの「マジックレバー」などが挙げられる。歯車ではなく爪で引っかけて(あるいは押す)ゼンマイを巻き上げるため、自動巻き機構の抵抗は小さくなる。そのため理論上の巻き上げ効率は高い。しかし一方で、爪の部品が硬くないとすぐ摩耗する上、設計が良くないと、ゼンマイが巻き上がらない。