ケースと外装、何が理想的な素材なのか?

FEATURE良質な時計の選び方
2019.06.29
パイロット タイプ20 クロノグラフ エクストラ スペシャル
ゼニス「パイロット タイプ20 クロノグラフ エクストラ スペシャル」
ブロンズの持つ風合いを生かしつつ、アレルギーを抑えた試み。裏蓋にはアレルギーの起こりにくいチタン合金を採用する。

●銅合金のアレルギーには注意

 意外と知られていないのが、銅合金のアレルギー性だ。時計業界で使われている銅合金には主に以下のものがある。

真鍮(=黄銅/銅65%、亜鉛35%)
砲金(=青銅、ブロンズ/銅90%、スズ10%)

 最近、砲金(ブロンズ)をケースに採用するメーカーも増えつつある。独特の質感があるうえ、経年変化も楽しめるが、アレルギーを起こす可能性がある。そのため一部の時計メーカーは、肌に接する部分の素材を、ブロンズではなく、チタンなどに変えている。ゼニスの「パイロット」、パネライの「ブロンゾ」などが好例だ。

●普段使いなら、硬さも考慮すべし

 時計の外装に使われる素材は、硬さが大きく異なる。硬さの基準としてビッカース硬さ(HV)というものがあり、数値が大きいほど硬い。以下は主な素材のビッカース硬さである。

・純銀 HV25
・純金 HV25~30
・純プラチナ HV40~50
・18Kゴールド HV70~150
・チタン HV110~150
・SUS304/316 HV200
・セラミックス HV1500
・人工サファイア HV1750

※いずれも参考値

 もっとも、素材の硬さはケースの製法によって大きく変わる。例えば、18Kゴールドのケースは、叩いて成形する冷間鍛造という手法を使うと、最大100近くHVが上がる。ケースが硬ければ、ラフに使っても傷はつきにくくなる。

●新素材のケース、硬くて丈夫だが……。

 上で挙げた素材の中でも、例えば人工サファイア(HV1750)やフォージドカーボン(HV1500~5000)、セラミックス(HV1500)といった「新素材」などは、硬くて傷がつきにくい上、金属アレルギーも起こさない。時計の素材としては理想的だ。しかし、こういった素材は、金属素材と違い、仕上げ直すことがほぼ不可能である。そのため、傷がついたり、割れたりすると、外装全体を交換する必要がある。ケースが傷つくと、修理費は高くつく場合がある。

 これは、表面を硬化処理したケースも同様だ。表面処理をしたケースは傷がつきにくく、金属アレルギーもほとんど起こさないが、仕上げ直しは難しい。新素材、もしくは表面処理された外装の時計を選ぶ際は、そのメリットとデメリットを考えること。

SBGJ229
グランドセイコー「キャリバー9S 20周年記念限定モデル SBGJ229」
メンテナンス性を考えたのが、「キャリバー9S 20周年記念限定モデル SBGJ229」だ。ミドルケースをブライトチタン(チタン合金)で作り、その外側にセラミックス製の外郭を組み合わせている。仮にセラミックスが割れた場合でも、その部品だけを交換すればよい。