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ラグジャリースポーツがなぜ人気なのか?2022年03月16日14:25
さて、本日は今人気沸騰中のラグジャリースポーツ(通称ラグスポ)というジャンルがなぜこれほどまでに人気なのかについて私見を述べたいと思います。飽くまで私見ですので、違う意見をお持ちの方はぜひコメントを残してください。ラグスポ人気の火付け役は、皆さんご存知の通りAPのロイヤルオークと、パテックのノーチラスです。どちらも巨匠ジェラルド・ジェンタの作品ですが、歴史は意外に古く、ここまで人気が出るのに40年近くかかっています。もちろん、時計好きの間では長く知られた存在でしたが、ここまで人気が沸騰するということは誰も予想できなかったのではないかと思います。実際、10年前まではいずれも定価ないし定価以下で買う事が出来ました。さて、それがどうして今のような状況になってしまったのか?考察してみたいと思います。

理由➀ ロレックスの人気と慢性的品薄

実用時計の王様ロレックスですが、ロレックスはデイトナを中心に長年人気の高級時計ブランドです。サラリーマンでも頑張れば買える価格帯と、タフなSSケースによる日常使い勝手の良さ、そして高級時計ブランドとしての知名度の高さステータス性が人気の主な理由です。加えて、目的毎に「プロフェッショナルモデル」が展開されており、クロノグラフ、ダイバーズ、GMTなどいずれも比類なき完成度の高さを誇っています。私自身、最初に買ったロレックスはデイトジャストの黒文字盤でしたが、それ以降ヨットマスター2本(ロレジウムとPGコンビ1本ずつ)、デイトナSS3本、デイトナメテオ2本(レザーストラップと無垢1本ずつ)、GMTマスターII、サブマリーナ―2本、そしてまたデイトジャストのシルバー文字盤と、合計12本ものロレックスを購入してきました。ワケあって現在は1本も手元に残っていませんが、この理由についてはまた別ブログでアップします。

そんなロレックスですが、今は正規店で購入するのはまず不可能です。厳密に言えば、マラソンと呼ばれるいつ終わるとも分からない正規店行脚をすれば買えますが、普通に仕事をしている人にとってはほぼ不可能です。並行店での購入は可能ですが、正規価格の3倍から5倍というプレ値を出す必要があります。確かにロレックスの時計は完成度が高く、満足度も極めて高いです。それでいてタフな日常使いにも耐えます。クルマに例えるならメルセデスベンツのような存在です。そんなロレックスですから、人気なのは当然ですが、さすがに今の状況は異常です。買いたくても、買うお金があっても、百貨店の外商さんが付いていても買えません。こうした状況に閉口した人は(私もその1人ですが)少なからずいると思います。そもそもいくらロレックスとは言え、SSの実用時計に400万円も500万円も出すのはさすがに馬鹿馬鹿しいと多くの時計好きは思っていると思います。

そんな「元ロレックスファン」の多くが次に目を付けたのがAPやパテックが展開するラグスポ、というワケです。そもそも定価ベースでは雲上ブランドらしく、どちらも高いです。ロレックスのSS最上位のデイトナが160万円台なのに対し、ロイアルオーク、ノーチラスいずれも3針でも300万円台後半という超ハイプライス。しかしながら、ロレックスの一部モデルのバカげたプレ値よりはそれでも定価なら安かったワケです。で、世界的に需要が殺到した結果、そもそも年産数がロレックスとは文字通り桁が違う雲上ラグスポはあっという間に市場から消え、セカンドマーケットでもロレックスが青ざめるほどの超プレ値になってしまった、というワケです。ロレックスの人気と品薄状態がここまでなければ、私は今のようなラグスポブームは無かったと見ています。そして、手に入らないとなると益々躍起になって手に入れようとするのが人間の悲しい性で、それが今の狂気の相場を生んでいるのだと思います。

理由② ライフスタイルの変化

高級機械式時計というのは本来欧州貴族の時代から「紳士の嗜み」でした。当然貴金属が使われ、社交場で身に着けることを前提とした繊細な時計が主流でした。しかし、鬼才ジェラルド・ジェンタにより、本来はとても硬く加工するのが難しいステンレススティールという素材がラグスポという新たなジャンルを生み出しました。ラグスポの黎明期はまだまだ高級時計と言えば一部雲上ブランドが作るコンプリケーション系でした。どれだけクォーツ時計が普及しようが、当初年次カレンダーなどの複雑機構は機械式時計でしか実現出来ず、こうした複雑機構こそが高級機械式時計の真骨頂でした。しかし時が流れ、今はスマホ全盛の時代です。もちろん、ステータスシンボルとしての機械式時計はむしろその存在価値を増していますが、機能面ではもはやスマホに太刀打ちできるハズもありません。大変な誤解を恐れずに言えば、コンプリ系は21世紀に於いては「オワコン」となってしまいました。

そんな中、精確な時間が読めて、タフなステンレスケースを持ち、防水性も備え、それでいてロレックスが霞むほどのステータス性を持つ雲上ラグスポはまさに時代の寵児となったわけです。世界中の時計好き、ニューリッチ層などが雲上ラグスポに群がった結果、一昨年までは定価で購入できていたVCのオーヴァーシーズまでもが1000万円というプレ値を掲げるに至りました。現在、ノーチラスで2000万円超え、ロイヤルオークは1500万円超えという超絶プレ値となっています。一体この狂気のような状況はいつまで続くのでしょうか?個人的には買い支える人がいる限り続くと思います。最近では雲上ブランド以外のブランドでも、いわゆる「ラグスポ」に当てはまるモデルは価格が上がり始めている始末。長引くコロナ禍やウクライナ有事も相俟って、スイス時計業界の生産性が向上する見込みはありません。今後上がる事はあっても、下がる事はまず無いでしょうから、欲しい人は本当に早く決断して買うべきだと思います。とはいえ、私自身はSSの3針時計に今のような価格はとても出せませんけど、ね。

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