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パネライ/ルミノール サブマーシブル 1950 3デイズ クロノ フライバック オートマティック チタニオ-47mm(1/1) 2016年05月号(No.64)

PANERAI
Luminor Submersible 1950 3 Days Chrono Flyback Automatic
Titanio-47mm

パネライは、1930年代から1960年代まで
イタリア海軍特殊潜水部隊に装備品を供給したことで
有名なブランドである。
だが、パネライはヴィンテージなモデルだけではなく、
クロノグラフを搭載した近代的なダイバーズウォッチも展開している。
今回のテストウォッチがそれを証明する。

イェンス・コッホ: 文
Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル、パネライ: 写真
Photographs by Nik Schölzel, Paneraiv
岡本美枝: 翻訳
Translation by Yoshie Okamoto

point

・完成されたデザイン
・自社製ムーブメント塔載
・極めて高い加工品質

point

・高額
・トランスパレントバックではない

ルーツを踏襲した
スタイリッシュなモダンダイバーズウォッチ

ネライの時計でヴィンテージの要素を持たない時計はない。ブランドのルーツは、1930年代から1960年代までイタリア海軍のために開発された特殊潜水部隊員用の時計である。大まかに言って、パネライにはふたつのモデルがあり、これらは今日もなお、クッション型ケースを備え、ラジオミールとルミノールという名で発展し続けている。ルミノールの特徴的なリュウズガードは、時計に完璧な防水性を与えるべく、パネライが1950年代の中盤に開発したものである。
 パネライの現行モデルのほとんどは、ルーツであるこれらのモデルの様式に極めて忠実である。そのため、パネライウォッチはすべて同じように見えると主張する、辛辣な意見もある。だが、これは正しい見方だろうか。ブラウンの文字盤やチタン製ケースでの展開など、小さな変化がいかに大きな効果をもたらすかを教えてくれるブランドは、逆に数えるほどしかないのではなかろうか。
 今回テストするダイバーズクロノグラフも、伝統を背景に持つ時計であることは興味深いが、パネライは、社史の中では特殊な背景を持つモデルに範を求めたようである。1943年、海軍准士官のためのクロノグラフが作られたことはあまり知られていない。「マーレ ノストゥルム」と呼ばれたこのモデルのケースは、当時のパネライの他のモデルとは異なり、クッション型ではなくラウンド型で、直径52㎜と大きかった。あまり多く生産されなかったこともあり、フラットで幅の広いベゼルを備えたこのクロノグラフのオリジナルは、たった1本しか現存していない。このように、テストウォッチのクロノグラフ機能とふたつのサブダイアルを持つ文字盤には、歴史的な裏付けがあるのだ。
 伝統的意匠は、とりわけ回転式ベゼルに強く表れている。ルミノール サブマーシブル 1950 3デイズ クロノ フライバック オートマティック チタニオ‐47㎜の回転式ベゼルは、1956年に作られた「エジツィアーノ」という珍しいモデルのデザインを踏襲している。特殊潜水部隊員のための時計は回転式ベゼル非装備なのが常だったが、パネライは1956年以降、直径60㎜の堂々たるケースを備えたエジツィアーノをエジプト海軍のために作るようになる。このモデルのケースもクッション型ではなくラウンド型で、当時、開発されたばかりのリュウズガードが装備されていた。また、回転式ベゼルには、15分ごとに数字を配した、少し出っ張った大きなピンと、5分ごとに小さなピンが付いており、テストウォッチと同様、12時位置には丸い蓄光マーカーが配されていた。当時のパネライの他のモデルと同じように、エジツィアーノにも、数字の丸の部分が閉じていないフォルムを持つ数字の6と9が与えられていた。これらの特徴的な数字はもちろん、テストウォッチでも見られるものである。
 新しいモデルはこれらの特徴を備えながら、よく知られたルミノール 1950のクッション型ケースにその身を包む。パネライがこの新モデルをルミノールのコレクションにカテゴライズしているのはそのためである。

豊かなディテールの数々。サテン仕上げが施されたチタン製ケースと、セラミックス製ベゼルは、多くのパーツで構成されている。

ヴィンテージなだけではない
 このように、ルミノール サブマーシブル 1950 3デイズ クロノ フライバック オートマティック チタニオ‐47㎜には、さまざまな歴史的モデルからヴィンテージの要素が多様に採り入れられている。だが、それでもなお、この時計がスタイリッシュかつ時宜にかなって見えるのはなぜか。詳細に観察すると、パネライが巧みな手法で、近代的な特徴をヴィンテージの要素にプラスしているのが分かる。幅の広い針や、黒いセラミックス製スケール、チタン製ケース、ブルーカラーのディテール、ラバーベルトは、とりわけスポーティーな仕上がりに貢献している。ヴィンテージとモダンが組み合わされているにもかかわらず、全体が粗野になることなく、調和が演出されているのは、デザイナーの功績だろう。今回のテストウォッチで成功している点は、このブレンドがまさに時計の魅力になっていることである。
 パネライはさらに、プロフェッショナルな要求に応える計器の製造というブランドのルーツに忠実でありながら、今日の視点から新たな解釈を与えている。ほとんど傷が付かないほど硬いセラミックス製ベゼルや、アコーディオンラバーベルトなど、新しい構成要素は実用的で高い機能性を備えており、潜水に付随して生じる諸問題を解決するのに役立つ。たとえば、海中では水圧でダイビングスーツが圧縮されて薄くなり、ダイビングスーツの上から着用した時計が手首から滑り落ちる原因になる。サブマーシブルのアコーディオンラバーベルトなら伸縮自在なので、時計はあるべき位置にとどまってくれるのである。
 ブルーカラーは、クロノグラフ機能に関連する要素であることをユーザーに示してくれる。少なくとも、クロノグラフ秒針と12時間積算計の針はブルーカラーである。クロノグラフ関連の表示機能の中で唯一、クロノグラフセンター分針のみスティールカラーだが、これは、同じフォルムを持つクロノグラフ秒針と区別するためである。双方ともとてもスリムで、クロノグラフが作動していない平常時は、パネライならではの整然とした文字盤を邪魔することがない。
 ステンレススティール製ケースよりもやや温かみのある色味を持ち、サテン仕上げが施されたチタン製ケースも、プロフェッショナルなルックスに貢献している。だが、チタン製ケースが優れているのはデザインの面だけではない。ステンレススティール製ケースは海水にさらされると点腐食が発生することがある。特に、気温が高い時期や、使用後にケースを淡水ですすがなかった場合にこうした危険が生じるが、チタン製ケースは海水に強いので潜水には最適な素材である。
 ルミノール サブマーシブル 1950 3デイズ クロノ フライバック オートマティック チタニオ‐47㎜はさらに、ダイバーにとって有用な特徴を備えている。暗所で着用しないと分からないが、潜水時間を計測するための目盛り、つまり、逆回転防止ベゼルのインデックスと分針が青く発光するのだ。そのため、緑色で発光する他の表示要素と潜水時間を明確に区別することができる。
 とはいうものの、視認性には改善の余地がなくもない。ダイバーベゼルに配された数字は水中で素早く読み取るには小さ過ぎるし、文字盤のミニッツインデックスについてはほとんど見えないため、クロノグラフで計測した時間を正確に判読することが困難である。

自社製メカニズム
 各種表示要素を駆動するキャリバーP.9100は、パネライが自社で開発、製造したものである。クロノグラフムーブメントを自社製造する、これはまさに偉業である。クロノグラフは実現が難しい複雑機構のひとつだからだ。コラムホイールによるエレガントな制御方式と近代的な垂直クラッチを備えたこのムーブメントは、合計302点ものパーツで構成されている。並列に配置されたふたつの香箱は約3日間のパワーリザーブをたたき出す。ボールベアリングで支持されたローターは、爪を利用して両方向に巻き上げるメカニズムによって効率よくエネルギーを供給し、薄くて長い主ゼンマイからは均等にエネルギーが放出される。微調整は、テンワに取り付けられたバランスウェイトスクリューで行われるため、ヒゲゼンマイは規制なく自由に振動することができる。
 キャリバーP.9100はチタン製のねじ込み式裏蓋にしっかりと守られている。クロノグラフ機構は大きな受けの下に隠れており、コラムホイールとテンプ以外、多くを見ることはできない。回転錘と受けに施されたヘアラインとサンバースト仕上げは美しく、エッジはきちんと面取りされ、テンプのカバープレートやネジ頭にはポリッシュがかけられている。
 クロノグラフのフライバック機能は、計測中、ストップ、リセットすることなく新たに計測を始められる便利な機能である。スタート/ストップボタンは10時位置に、リセットとフライバックのためのプッシュボタンは8時位置に配されている。ふたつのプッシュボタンは押し心地が軽く、ポジションが通常とは異なることから、押す操作は快適に行うことができるが、時計を手首に着けたままプッシュボタンを回して緩めたり、ねじ込んだりする動作はやりづらく、少々テクニックが必要である。
 クロノグラフ分針は、1分ごとにジャンプして進む。時刻合わせも、パネライが提供する便利な機能の恩恵により、容易に行うことができる。リュウズガードを開き、リュウズを第2ポジションに引き出すと、時針を1時間刻みで合わせることができ、別のタイムゾーンに移動する時や、サマータイムとウィンタータイムを切り替える際には、分と秒に影響を与えることなく素早く時刻を合わせることができるので快適だ。リュウズをさらに第3ポジションまで引き出すと秒針がジャンプしてゼロに戻るので、時報や電波時計との同期が容易に行える。

自社製キャリバーP.9100はフライバッククロノグラフ、フリースプラングテンプ、そして、ロングパワーリザーブを備えている。

精度
 だが、喜ばしいことに、時刻の同期はあまり頻繁に行う必要がない。歩度測定機で測定した結果、ルミノール サブマーシブル 1950 3デイズ クロノ フライバック オートマティック チタニオ‐47㎜は平常時で平均プラス1・8秒/日、クロノグラフ作動時はさらに優秀で平均プラス1秒/日という、納得の精度を見せてくれたからである。残念ながら、最大姿勢差はいずれも9秒と、かなり大きかったが、クロノグラフ作動時のテンプの振り角は、感動的と言えるほど安定していた。平常時に比べ、振り落ちは10度にも満たないのだ。クロノグラフ機構がいかに少ないエネルギーで作動しているか物語る数値である。
 価格はどうだろうか。ルミノール サブマーシブル 1950 3デイズ クロノ フライバック オートマティック チタニオ‐47㎜は199万円と、パネライの時計の中でも高価格帯に属するモデルである。だが、自社製クロノグラフキャリバーP.9100が搭載されていることを考慮すれば、価格設定は正当と言えるだろう。なぜなら、サブマーシブルのクロノグラフ非搭載モデル(PAM00389)でも128万円するからである。セラミックス製ベゼルが装備されていることも、価格を押し上げるひとつの要素である。ちなみに、セラミックス製ベゼルではないタイプは180万円である(PAM00614、12時間積算計の位置に日付表示)。自社製クロノグラフムーブメントを搭載したダイバーズウォッチでも、他のブランドからはもう少し安価で提供されている。例えば、オメガのシーマスター プラネット オーシャン クロノグラフは半額以下だし、IWCの自社製ムーブメントを搭載したアクアタイマーも格段に安い。ブランパンのフィフティ ファゾムス バチスカーフ クロノグラフのセラミックス製ケースのモデルでも、パネライよりも安価である。それを考えると、パネライのコストパフォーマンスは納得できるぎりぎりのラインと言ったところだろうか。
 高額であり、トランスパレントバックではないことが、批判的にならざるを得ないポイントだが、これらの点を除けば、デザインにおいても、加工においても、また、装着感や潜水への適合性についても、説得力のある仕上がりである。プラスアルファを支払っても困らない時計愛好家なら、ルミノール サブマーシブル 1950 3デイズ クロノ フライバック オートマティック チタニオ‐47㎜を手に入れれば、スタイリッシュな時計だけでなく、ダイビング時の心強い相棒を得ることができるのだ。

サテン仕上げのチタン製バックルとチタン製クローズドケースバックは、気密機構をしっかりと守る。

技術仕様

パネライ/ルミノール サブマーシブル 1950 3デイズ クロノ フライバック オートマティック チタニオ-47mm

製造者: オフィチーネ パネライ
Ref.: PAM00615
機能: 時、分、スモールセコンド(ストップセコンド仕様)、クロノグラフセンター秒・分針と12時間積算計(サブダイアル)を備えたフライバッククロノグラフ、潜水時間計測用目盛りを備えた逆回転防止ベゼル(スケール部はセラミックス製)
ムーブメント: 自社製キャリバーP.9100、自動巻き、2万8800振動/時、37石、耐震軸受け(インカブロック使用)、グリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約72時間、直径31mm、厚さ8.15mm
ケース: チタン製、ドーム型サファイアクリスタル製風防、チタン製ねじ込み式裏蓋、リュウズガード、ねじ込み式プッシュボタン、30気圧防水
ストラップとバックル: ラバーベルト、チタン製尾錠
サイズ: 直径47mm、厚さ19mm、重量156g(実測値)
バリエーション:
価格: 199万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時 クロノグラフ作動時
文字盤上 +3 +3
文字盤下 +7 +6
3時上 +3 +1
3時下 -2 -3
3時左 +2 +2
3時右 -2 -3
最大姿勢差: 9 9
平均日差: +1.8 +1
平均振り角:
水平姿勢 303° 296°
垂直姿勢 272° 263°


評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 14pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 17pt.
精度安定性(10pt.) 7pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 11pt.
合計 83pt.
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