MEMBERS SALON

オメガ/シーマスター アクアテラ(1/1) 2016年05月号(No.64)

OMEGA
Seamaster Aqua Terra

デザイン、技術、そして、ブランドの持つ力。
この三拍子がうまく揃ってこそ、
定番モデルとなり得るが、
そこがなかなか難しい。
誰もが憧れる存在の魅力とは、
どのようにして作り出されるのか探ってみよう。

アレクサンダー・クルップ: 文
Text by Alexander Krupp
OK-PHOTOGRAPHY: 写真
Photographs by OK-PHOTOGRAPHY
市川章子: 翻訳
Translation by Akiko Ichikawa

point

・良質な仕上げ加工
・革新的な技術のムーブメント
・考え抜かれたデザイン
・操作が簡単

point

・装着中にケースが片寄りやすい
・暗がりでは分針が見づらい

黄金の3要素

しなべてブランドというものは、デザインと技術が調和すれば、すべてがうまくまとまるものだ。時計の世界においても、一般的にはこのようにくくられている。だが実際のところは、当然ながらもう少し事情が込み入っているのだ。ブランド性はさまざまなやり方でもって調和を示すことが可能であると同時に、諸々の理由から意味のないことにこだわり続けたりもする。デザイン的にはうまく構成できても、時代に見合っていない場合や、それとは逆に、流行に左右されないことを、はなから想定していないような場合さえある。その上、大変な苦労の末に、革新的で魅惑的な技術を編み出したとしても、そんなことは日々の使用においてユーザーにはまったく重要視されないこともある。  オメガは、「デザイン」「技術」「ブランド性」の3つの柱をすべてしっかり打ち立てている。デザインは時代にかなっており、それでいて色あせない。テストウォッチのムーブメントは、コーアクシャル脱進機搭載のクロノメーターで、1万5000ガウスまでの耐磁性を備え、日常使いにはまさにうってつけだ。オメガは、使い勝手が非常に良い魅力的な時計を長年にわたって作ってきたので、時計ファンはそのブランドの価値を精密さ、正確さ、真に意義深い革新性に、これまで以上に結びつけることができるだろう。

新色はブラウンが決め手

シーマスター アクアテラは、2014年のバーゼルワールドで発表され、従来のアクアテラのスポーティーエレガンスのデザインに新しいカラーで活気を与えている。これまでのアクアテラの顔立ちは2008年に出来上がったものだ。今回取り上げたアクアテラは、今までより控えめなシルバーとブラック、シャンパン、グレーあるいはブルーの組み合わせだが、ケース素材がステンレススティールかゴールドかで、針の色目も変わる。秒針と分の目盛りには、どぎつくならないようにオレンジをあしらってある。ストラップも新しくなり、ミドルブラウンがアクセントとして調和していて、見事な構成だ。

 

マニュファクチュールムーブメントのマスター コーアクシャル 8500は、耐磁仕様に加えて装飾が美しい。まさに才色兼備なムーブメントだ。

テクニカルフリーク

 オメガが2007年に導入したキャリバー8500は、当時すでに技術的なハイライトとして紹介されていた。巧みな設計で、機能性が高く、細やかな仕上がりである上に、付加機能のモジュールを搭載することも視野に入れてある。これをもとに、さまざまな観点から新たな進路に踏み出したのだ。連動するふたつの香箱は、硬く磨耗に極めて強いダイヤモンドライクカーボンの被膜をまとい、両方向巻き上げ式のローターは新たな切り替え構造になり、加えて、セラミックベアリングが効果を発揮して、気になる作動音がなくなった。歯車の歯先の形も変わり、特製のグリースが輪列全体の磨耗を抑えている。極めて精緻に作られたオメガ独自のコーアクシャル脱進機は、当初のガンギ車を新しいものに替え、3重構造になった。テンプ受けは、テンワをがっしり受け止める両持ちのブリッジとなり、高さがある分、空間のあがきがうまく作用する。
 同時にムーブメントの表面にも、独特の仕上げが加わっている。キャリバー8500は、ローターと文字盤側のブリッジをロジウムメッキにしただけではなく、「コート・ド・ジュネーブ・アラベスク」という名の装飾研磨を施しているのだ。ブリッジ群はエッジを面取りして、そのわずかな面を鏡面に磨いている。ビスは黒く仕上げられ、テンワや香箱によく映えるようになった。そして地板はペルラージュで飾られている。
 2013年には、さらにアップグレードされた。同年に登場したシーマスター アクアテラ 15000ガウスは、可動パーツを耐磁素材で作ったのだ。テンワはチタン製、天真は、オメガ、ETA、ASULAB、ニヴァロックス‐FARで共同開発した新しい合金であるニヴァガウス製、耐震軸受けにも別の特殊素材を使用。ヒゲゼンマイに使われているシリコンや、地板、歯車、ブリッジに従来通り使われている真鍮は、もともと耐磁性素材だ。
 2014年には、同じ系統のキャリバー8400が耐磁仕様になってシーマスター 300に搭載された。続いて2015年にはシーマスター アクアテラのほとんどのバージョンに耐磁ムーブメントのキャリバー8500が装備された。このムーブメントは、正式には「オメガ マスター コーアクシャル 8500」と言い、「マスター」には耐磁仕様という意味が込められている。マスターシリーズは、最低でも1万5000ガウスもしくは1・5テスラの磁力に耐えられることが試験で確認されている。実際に、オメガが右記の最大磁力を検知できる磁気共鳴トモグラフィ装置に掛けたことは、『ウーレンマガジン』2014年第6号掲載の同誌独自のテスト記事にも記述されているが、我々クロノスドイツ版編集部では、日常生活において機械式ムーブメントに対して脅威となり得る強力な磁気をもってシミュレーションを行った。その上、オメガは昨年からマスター コーアクシャルのムーブメントを、スイス連邦計量・認定局(METAS)に測定させている。
 これらのことから分かるのは、オメガは自身の技術に真面目に向き合っており、それにより製品は日常生活での有用性を非常に高めるに至った、ということだろう。つまるところ、磁界はあらゆるところに潜み、機械式ムーブメントの規則正しい精度を脅かす第一の存在なのだ。ちなみに、我々がテスト用に借りたモデルを歩度測定機に掛けたところ、文字盤下のポジションでは、キャリバー8500系搭載モデルを取り上げた今までのテストでは見られなかったほど遅れが出ている。従って、最大姿勢差は7秒と大きくなってはいるが、平均日差はプラス1・5秒と極めて優秀なので、なんら陰りを感じることはないようだ。数週間に及ぶ着用テストでは、平均日差の数値はさらに下回り、いつもゼロからプラス1秒の間であった。これはもう、ほとんど完璧な結果と言っていいだろう。

名実ともにトップのブランド
 パーフェクト、もしくは、少なくともかなり喜ばしいことには間違いない、というのは価格にも表れている。57万円という金額は、自社開発ムーブメントを載せた使い心地のよい自動巻きには、魅力的な価格だ。装着感については、144ページの評価表のポイントを参照されたい。オメガは羨望の的の高級ブランドとして確立されているが、こういう価格帯をラインナップから排除しないあたり、余計なお世話ながら、それでもメーカー側としては構わないのかと、問いたい気持ちすら起こる。つまり手短に言うと、それでこそ手の届くトップブランドの名にふさわしい存在なのだ。

オメガの戦略とは?
 ビエンヌの老舗ブランドであるオメガは、技術的に優れた魅惑的な時計を作り続けているが、愛用者に有名人が多いことでも知られている。例を挙げると、アポロ計画のミッション時には宇宙飛行士にスピードマスター プロフェッショナルが〝ムーンウォッチ〟として公式採用されている。また、かのジェームズ・ボンドが1995年から装着しているのはシーマスターだ。ブランドのイメージキャラクターは、長年各界のトップスターが務めており、ジョージ・クルーニーやニコール・キッドマン、ローリー・マキロイなどの顔ぶれで親しまれている。しかし、こうしたマーケティングの何よりも、オメガを信頼に導くものは、精密さ、確実性、そしてコストパフォーマンスだろう。

オメガのシーマスター アクアテラにはダイアルカラーやケース素材など、さまざまなバリエーションが存在する。これはステンレススティール製ケースにブルーダイアルのモデル。57万円。

技術仕様

オメガ/シーマスター アクアテラ

製造者: オメガSA
Ref.: Ref.231.12.42.21.01.002
機能: 時、分、秒(センターセコンド)、日付表示
ムーブメント: 自社開発Cal.8500(耐磁パーツ使用によるマスター コーアクシャル)、自動巻き、C.O.S.C.認定クロノメーター、2万5200振動/時、39石、ストップセコンド仕様、コーアクシャル脱進機搭載、シリコン製ヒゲゼンマイ、緩急調整用スクリュー4点付きフリースプラングテンプ、ツインバレル、耐震軸受け(ニヴァショック使用)、パワーリザーブ約60時間、直径29mm、厚さ5.5mm
ケース: ステンレススティール製、ドーム型サファイアクリスタル製風防(両面無反射加工)、ねじ込み式リュウズ、トランスパレントバック(ねじ込み式)、15気圧防水
ストラップとバックル: カーフ製ボンベストラップおよびステンレススティール製バタフライクラスプ
サイズ: 直径41.5mm、厚さ12.95mm、総重量92g(実測値)
バリエーション: ケース素材、文字盤カラー違い各種あり
価格: 57万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時
文字盤上 +0
文字盤下 -3
3時上 +2
3時下 +4
3時左 +3
3時右 +3
最大姿勢差: 7
平均日差: 1.5
平均振り角:
水平姿勢 290°
垂直姿勢 253°


評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 8pt.
デザイン(15pt.) 14pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 19pt.
精度安定性(10pt.) 7pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 14pt.
合計 87pt.
前の記事

パネライ/ルミノール マリーナ 1950 3デイズ アッチャイオ-47mm

次の記事

パネライ/ルミノール サブマーシブル 1950 3デイズ クロノ フライバック オートマティック チタニオ-47mm

おすすめ記事

pick up MODEL

正規時計販売店

正規時計販売店

高級時計を取り扱う全国の正規時計販売店をご紹介。各店が行うフェア情報やニュースもお届けします!

時計ランキング

時計ランキング

その年の新作モデルや、機構、仕上げの完成度など、毎回決められたテーマの中から、優れた10本を時計ジャーナリストたちが選出します。

スペックテスト

スペックテスト

クロノスドイツ版の人気連載「TEST」の翻訳記事。腕時計のデザイン、機能などをポイント性によって評価します!

基礎からの時計用語辞典

基礎からの時計用語辞典

時計の部品、機構、ブランド名など、基礎から専門用語まで、広範囲にわたって解説します。時計の知識を深めるための用語辞典です。

PAGE TOP