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モーリス・ラクロア/ポントス クロノグラフ(1/1) 2016年01月号(No.62)

MAURICE LACROIX
Pontos Chronographe

時計の魅力にはさまざまな要素があるが、購入の大きな決め手となるのは、やはりデザインであろう。
数あるクロノグラフに、心をくすぐる顔立ちが、またひとつ加わった。

アレクサンダー・クルップ:文
Text by Alexander Krupp
OK-PHOTOGRAPHY:写真
Photographs by OK-PHOTOGRAPHY
市川章子: 翻訳
Translation by Akiko Ichikawa

point

・優れたデザイン
・クロノグラフと日付表示の視認性が良い

point

・時、分、秒表示の視認性が低い
・姿勢差がやや開き気味の精度

 

 

容姿に想いをかきたてられて

計雑誌の編集者として仕事をしていても、その責務を忘れてしまいそうになることが時々ある。金庫の中には撮影待ちの時計がずらりと鎮座していて、これからテストを行い、それらについて書かなくてはならない。その現実を眼前にしているにもかかわらず、特定の別の1本が頭から離れない。そのメーカーは特に華々しくマニュファクチュールを謳っているわけでもなく、締め切りが迫っている今、そもそも余分なことに心を奪われている猶予はないのだ。しかし、そんなことはどうでもいい。ともかく、その時計の現物を目にしなくてはならぬ。実際に手にしてチェックし、使い心地を確かめ、長所を知りぬかなくては。何はともあれ、とりあえず腕に着けてみたい。

 ひと目惚れして、そんな思いにかられたのが、装い新たになったポントス クロノグラフだった。心を奪われた理由というのは、他のほぼすべてのラグジュアリーアイテムと同様に、そのデザインにある。スポーティーで、かつ、気品が漂う。独自性がありながら、突飛ではない。レトロ感はあっても、いかにもな懐古調にあらず。文字盤の適度に引き締まったカラーと配置は、クロノグラフ愛好家以外でも引き付けられる。立体感のある黒い積算計は、艶やかに白く塗られた文字盤の地色によく合い、整っている。こうなると、実際にクロノグラフの機能を利用するかどうかなど、大した問題ではないのだ。
 しかし実用するとなると、タイムキーパーとして使用できるだけではなく、タキメーターの目盛りを活用すれば、平均速度の測定も可能だ。青の目盛り上の、リュウズの位置するあたりが時速250㎞。そこから始まり、ぐるりと回って赤い目盛りの時速50㎞で締めくくられている。クロノグラフでは通常60㎞で終わっていることが多いが、このモデルではエンド位置を文字盤の12時位置ではなく、ぐっと右方向へずらして2時と3時の間に持ってきているのだ。目盛りの青い色は、クロノグラフ針と揃えてある。

   

 

 爽快感は見た目だけにあらず 
 魅力的な外観とともに、このクロノグラフにはクォリティの高さが数多く見受けられる。表と裏の両面をサファイアクリスタルで覆う、直径43㎜のケースや、面取りされたバックル、使い勝手の良いキノコ型のプッシュボタンは、それぞれの加工が丁寧だ。整然と磨き上げられたベゼルが、全体を一層引き立てる。縁を包み込んだセミボンベスタイルの焦げ茶色のカーフストラップも、すっきりとした仕立て上がりだ。セーフティロック付きの頑丈なバックルは、ストラップにクリップ式で留められているので、ポジションの調整も細やかに行える。
 このように、これといった欠点は見当たらないが、強いて挙げるとなると、通常の時刻がいかんせん若干見づらいことだろうか。きれいに面を整え、鏡面に磨き上げられた長針と短針は、先端が夜光塗料で白いため、白地の文字盤に同化してしまい、コントラストが良いはずのメタル部分はほとんどインダイアルに被っている時が多い。逆に積算計は、針がパーフェクトな長さの上に、先端の白さが黒地に際立って、よく読み取ることができる。視認性に関しては、メインタイムと積算時間を合わせて評価すると、まあ平均的といったところだ。
 さらに細かいことを言うならば、リュウズの形状が、爪を意識的に立てないと少々つまみにくい。そして、歩度は姿勢差がやや開き気味だったのが、弱点といえば弱点だろう。搭載されているムーブメント、セリタのキャリバーSW500〝スペシャル〟は、加工具合がETAの7750〝エラボレ〟と同等だが、どちらも3姿勢でのみ調整されている。しかし、平均日差は姿勢差に反して通常時でプラス5.6秒、クロノグラフ作動時でプラス1.8秒という数値が出た。
 
第一印象は大きな決め手
 長所だけでなく短所を認識しても、魅力が色あせないモデルとの出会いというのはあるものだ。34万円という価格は、つまみ食いのようにひょいと手を伸ばせる金額ではないのは事実だが、丁寧な仕上がりと個性的なビジュアルのクロノグラフとしては妥当だ。それでも面食いはなにか気が引けると尻込みすることもあろう。しかし、ひと目惚れから入っても、結局は誰しも己の直感が一番だと、経験的に知っているのではないだろうか。

ブラック文字盤にシルバーインダイアルのモデル。テストに使用したモデルとは正反対の配色であるが、写真のモデルは黒を基調にしたことによって、より精悍な顔つきになった。

技術仕様

モーリス・ラクロア/ポントス クロノグラフ

製造者: モーリス・ラクロア
Ref.: PT6288-SS001-130
機能: 時、分、秒(スモールセコンド)、30分および12時間積算計、日付表示
ムーブメント: セリタSW500スペシャル、自動巻き、2万8800振動/時、25石、ストップセコンド、クイックコレクトデイト、耐震軸受け(インカブロック使用)、調整用偏心ネジ付き緩急針、パワーリザーブ約46時間、直径30mm、厚さ7.9mm
ケース: ステンレススティール製ケース、ドーム型サファイアクリスタル風防(両面無反射加工)、5気圧防水
ストラップとバックル: カーフストラップ(セミボンベ仕様)、ステンレススティール製フォールディングバックル(セーフティロック付き)
サイズ: 直径43mm、厚さ15mm、総重量118g
バリエーション: ブラック文字盤シルバーインダイアルタイプ34万円
価格: 34万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

 

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

  平常時 クロノグラフ作動時
文字盤上 +8 +2
文字盤下 +11 +6
3時上 -2 -6
3時下 +11 +8
3時左 +9 +4
3時右 -3 -3
最大姿勢差: 14 14
平均日差: +5.6 +1.8
平均振り角:    
水平姿勢 322° 284°
垂直姿勢 293° 259°


 

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 4pt.
ケース(10pt.) 8pt.
デザイン(15pt.) 15pt.
視認性(5pt.) 3pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 12pt.
精度安定性(10pt.) 6pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 12pt.
合計 76pt.

>>モーリス・ラクロアのモデル一覧はこちら

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