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ロレックス/チェリーニ タイム(1/1) 2015年05月号(No.58)

ROLEX Cellini Time

オイスター コレクションのあまりにも大きな成功に比べ、控えめな印象のチェリーニ コレクション。
自社製自動巻きムーブメントが搭載された今、チェリーニ コレクションは変革の時を迎える。

イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル: 写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

 
point
・自社製ムーブメントを搭載
・素晴らしいデザイン
・適正な価格

point
・日付表示がない
・トランスパレントバックではない

オイスターの陰で

レックスといえば高級実用腕時計の代名詞であり、同価格帯で比較すれば、どのブランドよりも多い売り上げ本数を誇っている。それを支えているのが、絶大な人気を誇るオイスター コレクションであることは紛れもない事実だ。それに比べて控えめな印象なのがエレガントなコレクション、チェリーニである。そのチェリーニから新たなモデルが発表された。まず、オイスター コレクションに搭載されているロレックスの自社製ムーブメント、キャリバー3132が、新しいチェリーニ タイムにもベースムーブメントとして採用された。このキャリバー3132は極めて堅牢で精度の高いムーブメントとして名高い。

高精度と堅牢さで高い信頼性を誇るロレックス自社製キャリバー3132。

さらに、チェリーニ コレクションではすべての機種がゴールド製ケースでのラインナップである。テストウォッチのホワイトゴールド製ケースは控えめな印象がかえってエレガンスを演出している。一見、ホワイトゴールドはステンレススティールと間違われやすいが、チェリーニ タイムのような気品のあるウォッチなら、その心配はないだろう。
チェリーニ タイムでは、そこかしこにロレックスのかつてのモデルを彷彿とさせるデザイン的要素がちりばめられている。故に、オイスター パーペチュアル サブマリーナーがそうであるように、高度に洗練された1950年代の古典的名作を思わせる。しかも、直径39㎜のケースは、まさに今の時代にふさわしいサイズだろう。
しなやかに伸びたラグ、ポリッシュ仕上げが施されたラインの流麗なケース、ドーム型のベゼルとフルーテッドベゼルを組み合わせたスリムなダブルベゼル、ポリッシュ仕上げのドーム型ケースバック、フレア型リュウズ、フラットでスリムなバックル、そして、シャイニーブラックのレザーストラップなどが、ロレックスの伝統と歴史を感じさせる要素である。両刃の剣のような形の長短針とファセットのあるアプライドインデックスを備えたダイアルもクラシシズムの体現に寄与している。一方、長いアワーマーカーを中央で分割するようにデザインされたミニッツトラックや、12時、3時、6時、9時の細長いローマンインデックスが、このモデルに独自性を与えている。
針の長さはどれも申し分ない。これは、美観上の効果があるばかりか、視認性の向上にも貢献している。また、白いダイアルからはっきりと浮かび上がるので、時刻を素早く把握することができる。ただ、良好な視認性が確保されるのは、周囲が十分に明るい環境であることが条件となる。チェリーニのエレガントなデザインを優先させるために、このモデルではロレックスが蓄光塗料を放棄したためである。

手放すことで得られるメリット

このことは日付表示にも当てはまる。日付表示に関しては、あったほうがありがたかったかもしれない。だが、ダイアルの構成がシンメトリーで日付表示用の開口部がないことから、チェリーニ タイムが美しい時計に仕上がっていることは事実である。つまり、時計を選ぶ際、何を重視するかが問われるのである。ここで、デザインを最も重視する愛好家がいても、まったく不思議ではない。
日付表示を放棄したことで、チェリーニ タイムではよりシンプルな操作が実現した。これはメリットと言えよう。まず驚かされるのは、フォルムの美しいリュウズがねじ込み式の仕様になっていることだ。防水性50mの時計においてさえ、より高い安全性を確保すべく設計されているのである。扱いやすいフレア型リュウズは容易に緩めることができ、ストップセコンド機能の恩恵により時刻合わせは簡単だ。バックルもトラウザーズのベルトのように、簡単に扱うことができる。
チェリーニ タイムは細部に至るまで入念に仕上げられており、加工品質が極めて高い。ダイアルと針は非の打ちどころがなく、ケースのポリッシュ仕上げは隅々までクリーンに施されている。ポリッシュ仕上げの完璧さは、特にラグとバックルの内側に見て取ることができる。この部分は、磨きがやや雑になる傾向があり、多くの時計でフライス加工の痕跡が発見される場所である。ラグのバネ棒にカーブを持たせ、ストラップがケースの形状によりフィットするように工夫されているのはいっそう素晴らしい。
加えて、バネ棒はラグのやや先端寄りに配されているため、時計の装着感は良好である。ドーム型のケースバックは滑らかで肌触りが心地よいが、使い始めはストラップが硬く、そのために時計が手首の上で揺れ動いてしまう。ただ、数週間もすればストラップもなじみ、この問題は解決する。だが、シャイニーブラックのストラップの場合、表面のラッカーに伸縮性があまりないため、ひび割れやすいのがデメリットである。わずかなひび割れくらいではチェリーニ タイムの印象や外観が損なわれることはないが、完璧さを求める愛好家にとっては気になる点かもしれない。
ポリッシュ仕上げのドーム型ケースバックも小さな傷が目立つことが予想される。理論的には、レクタンギュラーケースのチェリーニ ロレックス プリンスのようにトランスパレントバックにもできたはずだが、ロレックスはあえて内部機構を見せる選択をしなかった。オイスター コレクション同様、新しいチェリーニ コレクションでも残念ながら、自動巻きムーブメントはきちんと装飾されているにもかかわらず、一般ユーザーには見ることはかなわないままである。

オイスター パーペチュアル エクスプローラーでも時を刻むロレックスの自社製キャリバー3132は、サンブラッシュ仕上げを施したローター、ペルラージュ模様を装飾した地板、ポリッシュ仕上げのネジ頭、面取りを施した一部のエッジなど、装飾も十分で、本来、身を隠す理由などまったくない。ロレックスでは常のごとく、微調整のしやすさと安定した精度は、軸方向のアガキを調整できる両持ちのバランスブリッジや、特許技術であるニオブとジルコニウムの合金で出来たブルーのパラクロム・ヘアスプリング、また、テンワに取り付けられたマイクロステラナットによって確保されている。

  

細部に至るまで伝統を感じることができる。エレガントなバックルとシャイニーブラックのストラップは、往年のヴィンテージウォッチを想起させる。まるで鏡のように磨き込まれたケースバックは見事な仕上がり。だが、自分の顏よりもロレックスの自社製ムーブメントを見たいと思うのが多くの愛好家の真情だろう。

信頼性の高い技術

チェリーニ ロレックス プリンスが搭載している手巻きムーブメントと同様、キャリバー3132もパラフレックス ショック・アブソーバの採用により、衝撃を吸収する能力が最大50パーセントも向上し、天真の復元性もより強化されている。耐衝撃性は、ゴールド製ウォッチでは必ずしも試してみたい性能ではないが、あって邪魔になる機能ではないだろう。ロレックス製のマニュファクチュールムーブメントは、堅牢でロー・メンテナンス、そして、高精度を重視して設計されており、これまですでに何百万という個体でその信頼性が証明されている。スイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C.)によるクロノメーター認定書が付与されていることが、その何よりの証しである。オイスター コレクションとは異なり、チェリーニ コレクションではダイアルに“SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED”という表記がないことも、かえって好感が持てる。
今回も、精度はいつも通り、ウィッチ製歩度測定機、クロノスコープX1で検証した。着用時に観察されたプラス5秒/日という高精度は、歩度測定機による計測でも十分に裏付けられた。すべての姿勢において日差0秒/日からプラス6秒/日という結果は、最大姿勢差が6秒ということを意味しており、計算上の平均日差はプラス3・3秒/日と、極めて優秀である。
価格はどうだろう。マニュファクチュールムーブメントを搭載したゴールド製ウォッチとしては、145万円という価格は適正なのではないだろうか。同じムーブメントを搭載したエクスプローラーが62万円であることを鑑みれば、チェリーニ タイムのコストパフォーマンスは良好と言えるだろう。ただ、ロレックスのステンレススティール製のプロフェッショナルモデルに比肩するほど、チェリーニの価値が将来も安定して維持されるかについては、残念ながら疑問である。なぜなら、ゴールド製になると、プロフェッショナルモデルであってもそこまで安定した価値が見込まれないからである。
ひとつ確かなことは、エレガントで控えめなゴールド製ウォッチを探している時計愛好家が、今後はロレックスでも好みの時計を見つけることができる可能性が広がったという点である。チェリーニ タイムでは特に指摘すべき弱点は見当たらず、堅牢で精度の高い自動巻きマニュファクチュールムーブメントと抜群の加工品質には納得せざるを得ない。チェリーニがオイスター コレクションの陰から表舞台に出てスポットライトを浴びる時が、ついにやって来たのである。

チェリーニ タイムは細部に至るまで入念に仕上げられており、加工品質が極めて高い。ダイアルと針は非の打ちどころがなく、ケースのポリッシュ仕上げは隅々までクリーンに施されている。

時計師からひと言

     ロレックスはチェリーニ タイムという美しいドレスウォッチを世に送り出すことに成功しました。加工品質は極めて高く、秀逸なムーブメントには説得力があります。申し分ない長さの針、カーブを持たせたラグ、美しいフォルムのフレア型リュウズ、個人的なエングレービングを施すスペースのあるドーム型ケースバックなど、各構成要素のディテールも調和しています。価格も魅力的なのではないでしょうか。ロレックスの伝統と歴史を感じさせるデザインは、クラシシズムを重んじる愛好家のものと言っても過言ではありません。ただ、シャイニーブラックのストラップがひび割れやすいのが残念な点です。 
ライナー・メラート
ウルム、ケルナー時計宝飾店 オーナー兼マイスター時計師
   

技術仕様
ロレックス/チェリーニ タイム

製造者: ロレックス
Ref.: Ref.50509
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)
ムーブメント: ロレックス自社製キャリバー3132、自動巻き、C.O.S.C.認定クロノメーター、2万8800振動/時、31石、パラフレックス ショック・アブソーバ、マイクロステラナットを備えたテンワ、ブルー パラクロム・ヘアスプリング、パワーリザーブ約48時間、直径28.5㎜、厚さ5.37㎜
ケース: 18Kホワイトゴールド製、サファイアクリスタル製風防、ねじ込み式フレア型リュウズ、ホワイトゴールド製ねじ込み式裏蓋、50m防水
ブレスレットとクラスプ: アリゲーターレザーストラップおよびホワイトゴールド製バックル
サイズ: 直径39㎜、厚さ11㎜(実測値)、総重量87.5g(実測値)
バリエーション:  18Kホワイトゴールド製ケース×ブラックラッカーダイアル、18Kエバーローズゴールド製ケース×ホワイトラッカーダイアル、18Kエバーローズゴールド製ケース×ブラックラッカーダイアル(各145万円)
価格: 145万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差  秒/日、振り角)

   平常時         
文字盤上 +4  
文字盤下 +4  
3時上 +4  
3時下 +2  
3時左 +6  
3時右 0  
最大姿勢差: 6  
平均日差: +3.3  
平均振り角:    
水平姿勢 304°  
垂直姿勢 268°  

 

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 7pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 14pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.)  8pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 86pt.
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