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ロレックス/オイスター パーペチュアル シードゥエラー 4000(1/1) 2015年01月号(No.56)

Rolex Oyster Perpetual Sea-dweller 4000

実際に潜るダイバーたちに定評がありながら、惜しまれつつ舞台上から一度は消えたシードゥエラー。2014年、一層のたくましさを備えて復活したが、先発モデルと後発モデルがダイバーウォッチの座を占める中で、立ち位置を確保できるのだろうか。

イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
フォト・クリューガー: 写真 Photographs by WWW.PHOTO-KRUEGER.DE
市川章子: 翻訳 Translation by Akiko Ichikawa


point
・完成された定番デザインを踏襲
・仕上げ加工が最上級レベル
・優良な自社製ムーブメントを搭載

point
・調整にあと一歩の踏み込みが足りない
・身構えてしまうような価格

兄と弟の間に

弟姉妹の中で、一番上でも一番下でもない間の存在というのは、なにかと厳しいものだ。長子は優遇され、末っ子は目をかけられる。しかし、中間の子は居場所を確保するにもひと苦労するのは、多くの人々が経験済みだろう。

オイスター パーペチュアル シードゥエラー 4000のシチュエーションも、それと少し似ている。ロレックスのダイバーウォッチは、外装面ではもっと厚みが少なくエレガントなサブマリーナーが見せ場を飾り、防水性能では3900m防水を誇る大型のロレックス ディープシーの出番となる。1953年生まれのサブマリーナーとその後に発表されたロレックス ディープシーに、年代的にも挟まれて1967年に生まれたのがシードゥエラーだ(ロレックス ディープシーは、2008年に以前のシードゥエラーに代わるものとして発売開始)。そして今、装いも新たにシードゥエラー 4000として復活を遂げた。しかし、そのポジションをどこに見いだすべきだろうか?
シードゥエラー 4000の外観をサブマリーナーと比較すると、直径は40㎜と変わらないが、厚さは15・1㎜と、2・6㎜厚くなっており、明らかに重さが増している。一方、ロレックス ディープシーは直径が44㎜、厚さは18㎜と、大きさではこちらが見るからに凌駕している。さらに細かく見て行くと、シードゥエラー 4000は、風防がサイクロップレンズのないフラットタイプ。ますます中間にいる様相を呈している(サブマリーナーはサイクロップレンズ付きフラット風防、ロレックス ディープシーはサイクロップレンズなしのドーム型風防)。潜水タイム計測のために必要な分の目盛りの置き方は、ロレックス ディープシーと同じ。ダイバーウォッチの特性である防水耐圧性についても、サブマリーナー(約300m防水)とロレックス ディープシー(3900m防水)の間の1220m防水という位置付けだ。つまり、装備についても明らかに中間的で、どちらかにあるものは載せ、どちらかに欠けているものは載せていないといった塩梅だ。
それはロレックス ディープシーと同様に、新生シードゥエラーにも備えられているヘリウムガスのエスケープバルブについても言える。もっともこれはコメックスの作業時には必要だろうが、一般的な個人のダイバーにはなくても困らないものだろう。

シードゥエラー 4000(中央)の登場で、サブマリーナー デイト(左)とロレックス ディープシー(右)の三兄弟が揃ったダイバーウォッチ群。それぞれの特性を生かした選択に、悩むのも楽しみのひとつだ。

コメックスとロレックス

ところで、フランスの潜水探査専門会社コメックスと来れば、シードゥエラーとは切っても切れない結び付きがあるとされている。これはまことしやかな噂が元になっているのだ。それによると、1961年にアンリ︲ジェルマン・ドゥローズによりマルセイユに創設されたこの特殊な会社のヘリウムガスエスケープバルブの開発には、シードゥエラーが関与したという。しかし、これは実際のところは事実ではない。この噂をもっともらしくしているのは、海洋研究のひとつであるシーラブ計画だ。これはダイバーを起用した米国海軍の海底居住実験のプロジェクトで、高圧閉鎖環境下における呼気が人間にどのような影響を及ぼすか調査するものであった。海中では水の中から出る時に圧力調整室に入るのだが、この時、ものによっては腕時計の風防が破裂してしまう。シーラブ計画に参加したあるダイバーがそれについてロレックスに話し、圧力調整のためのヘリウムガスが危険なく放出できるバルブを設けてはどうかと提案したとされている。ロレックスにおいてエスケープバルブが実現したのは、こうした顛末があったから、という風に広まっていったわけだ。
ロレックスとコメックスの共同開発は、1970年代初頭になって初めて着手されている。ヘリウムガスエスケープバルブ付きのシードゥエラーは1967年に発表されていたので、すでに市場に出回っていた頃だ。ロレックスの当時の社長であるアンドレ・ハイニガーは、コメックス創始者のドゥローズと契約を締結し、コメックスのダイバーウォッチはすべてロレックスが担当することになった。その際にプロ集団たるダイバーの経験が生かされ、開発にひと役買ったということらしい。コメックスは潜水時の指針となる時計を追求するにあたって、時によってはバラックのような状態の石油プラットホーム(海底油田やガス田付近の探査のため海上に設営された足場)によじ登るという荒業もやってのけたそうだ。このためダイバーは自身で工夫した工具を携帯し、酸素ボンベの調合も実験したという。コメックスは潜水深度の新記録を数多く樹立しているが、それはダイバーの腕上で過酷な試練に耐えたシードゥエラーの功績もあってのことだろう。それらの記録の一部には、シードゥエラーの宣伝用のために達成されたものも含まれている。
1972年には、ふたりのダイバーが610m防水の高圧室内に50時間滞在することに成功、後に水深500m以上の記録も達成した。そして1992年、コメックスのダイバーは単独での高圧室内滞在で、水深701mにも至ったのである。このように、ヘリウムガスエスケープバルブを備え、優れた耐圧性を持つシードゥエラーは、コメックスにとって欠くべからざる存在だ。そして、耐圧1220m防水という性能は、人間が着用する時計としてはコメックスにとっても十分足りるものにもかかわらず、同社は水深3900mの防水性を備える巧みなケース構造のロレックス ディープシーの開発にも協力している。
ところで、シードゥエラーのデザインだが、すでに1967年に登場した時点で、回転ベゼル付きの初期のダイバーウォッチのひとつに挙げられる1953年発表のサブマリーナーに範を取っていた。それ以降もデザインは踏襲し続けられている。

そのアイコンとも言うべき、ベゼルを取り巻く目盛りは、キズ見を必要としないほどの明瞭さがますます際立っている。デザインについてひとつ難を挙げるならば、日付表示はもう少し外側に置くべきだろう。図案は60年以上も前に作られたにもかかわらず、外装は今の時代とずれがない。これは現在のハイテク素材であるセラミックスをベゼルに採用したところにも表れている。
ベゼルは片方向回転式(逆回転防止ベゼル)を採用しているが、これはダイビングに向いているだけではない。他のシチュエーションにおいても、分単位で正確なタイムスパンを把握できる。逆三角形の印を分針に合わせると、そこから何分経過したかはベゼルでいつでも読み取れるのだ。必要な時にベゼルはスムーズに回すことができ、そのクリック感にはあたかも金庫のダイアル錠のような心地よい手応えがある。
黒いセラミックリングの表面はとりわけ硬く、傷の入る隙はない。かつて使用されていたアルミニウムリングは、たちまち傷だらけになってしまったことからすると、これはひとつの進化と言える。もっとも、セラミック素材といえども破損は起こり得るわけで、そうなるとパーツ交換はアルミニウム素材に比べて明らかに高くつくだろう。リング内にうずまるように置かれた数字と目盛りには、プラチナの粉末が使用されている。膨らみを持たせてコストを掛けた作りのホワイトゴールド製の針や、同じくホワイトゴールド製のインデックスとの釣り合いが取れた格好だ。
このモデルにもサブマリーナーやロレックス ディープシーのように、〝クロマライト〟と名付けられた青い蓄光パーツがはめられている。これは非常に明るく発光し、薄暗がりの中でもよく見分けがつく。青い色はクールな印象で、目にも至極快適。文字盤12時位置の逆三角形インデックスと、6時位置と9時位置のバーインデックスは、瞬時の見極めに役立つ作りだ。ベゼルのゼロ位置に置かれた箇所も、同じく明るく発光する。なお、クロマライトは秒針にも置かれているので、作動の確認にも有効だ。

ケース側面には減圧のためのヘリウムガスのエスケープバルブを備える。ベゼル上を途切れ目なく取り巻く目盛りとともに、装備はプロ仕様である。

好感が持てるのは着用感についても言える。これは何よりもフラットなケース裏と、同じくフラットなクラスプの内側、そして、しなやかなブレスレットの賜物だ。新型のフラップ式セーフティーロック付きクラスプは、がっしりした仕上がりで、ブレスレットの長さを微調整できる。これによりスポーツの後や暑い日には、素早く風通しを良くすることも可能である。さらにはエクステンション機能を利用すると、約26㎜まで延長できるため、ダイビングスーツの上からでも着けられるようになっている。この機能はロレックス ディープシーにもあるが、サブマリーナーには備わっていない。
クラスプは、覆い被さるようにセッティングされたセーフティーロックパーツの下で、やや盛り上がった部分が噛み合うようになっているため、不意に外れてしまうようなことがない作りだ。しっかり留まるが、それでいて開閉は、つまみやすいリュウズやベゼル同様に操作は軽やか。ブレスレットとクラスプの加工も、全体と釣り合ったクォリティの良さを見せる。側面を鏡面に磨き、表側にはサテンを入れ、ケースと揃えた仕上がりだ。ダイバーにとってとりわけうれしいのは、5つのパッキンで水気をシャットアウトするねじ込み式のトリプロックリュウズだろう。このリュウズはロレックスのすべてのダイバーウォッチに導入されている。また、ケースとブレスレットに使用されているのは耐塩水性のステンレススティール904L。これはロレックスではダイバーウォッチに限らず、すべてのステンレススティールモデルで採用されている素材だ。

ブレスレットは段階的に延長できるエクステンション仕様。ウェットスーツの上からも着用できるほど延長可能である。

そして、自社製の自動巻きムーブメント、キャリバー3135は、ベースキャリバーとしてたいていのロレックスのモデルに使用され、ダイバーウォッチでは日付表示機構付きで搭載されている。しかしムーブメントは、いつものことながらスクリューバックのケースの内部に潜んでいて、姿は見えない。対面できるのは時計師のみにもかかわらず、装飾が施されている。部分的にくり抜かれたローターと自動巻き機構のブリッジにはサンレイ装飾が入れられ、ペルラージュで飾られたブリッジも目に入る。細やかなストライプが付けられたブリッジはエッジが面取りされ、ネジ頭は鏡面に磨かれている。自動巻き機構に組み込まれた磨耗の少ないアルミニウム製の歯車のアルマイト加工の赤い色と、パラクロム・ヘアスプリングの青い色は目にも楽しい。酸化被膜を発生させることで青く発色するこのヘアスプリングには、磁界の影響をまったく受けないニオブとジルコニウムから成る合金が使われている。
このキャリバーは自動巻きとして最高のもののひとつとして挙げられよう。何よりも頑丈で耐久性があり、考え抜かれた構造で非常に精密な調整ができる。テンプ受けはよくある片持ちではなく、しっかりした両持ち。これにより、テンワは受けの両端にあるふたつのネジで位置決めされる。ブレゲエンドカーブを持つヘアスプリングを均等な動きに整えるのは、テンワの内側にセットされたマイクロステラスクリューだ。ロレックスの腕時計が精密に調整可能なのは、このシステムのおかげである。
着用テストを行うと、1週間に2秒の進みという、新記録に迫るようなデータが出た。しかし、電動式歩度測定機クロノスコープX1に掛けると、結果は必ずしもパーフェクトとは言えないものであった。最大姿勢差が12秒というのは、いささか開き過ぎの感がある。ところが、全姿勢の平均日差はプラス1秒と出て、これも最高と言える域に達した。

赤い歯車とブルーのパラクロム・ヘアスプリングも目に鮮やかなキャリバー3135。裏蓋に隠れてしまうところでも、丁寧な装飾は欠かせない。

価格の面ではどのような位置か

さて、価格についてだが、シードゥエラー 4000は95万円。まさにサブマリーナー デイト(81万円)とロレックス ディープシー(105万円)の中間に位置している。この3つはそれぞれ好ましいイメージがあり、価値も高い。3つとも同じムーブメントを搭載し、ケースやブレスレット、文字盤や針の仕上げ加工の良さは等しく、傷に強いセラミックベゼルをすべて使用していることを考慮すると、コストパフォーマンスの高に関してはサブマリーナーが優勢ということになろう。
しかし、本当にダイビングをする時に使おうとするならば、より高い耐圧防水性に着目すべきだ。ことに、長い時間を潜る場合、実用性の高さを考慮すると、シードゥエラー 4000やロレックス ディープシーが有利になる。そして、細かく異なるデザインも選択する時の決め手のひとつだ。直径40㎜のサブマリーナーが小さすぎると感じるならば、押し出しの強いロレックス ディープシーを選ぶのもよし。しかし、その大きさと厚さが気に入らず、ロレックスの典型であるサイクロップレンズが好みに合わないとなると、ここはシードゥエラー 4000に決定だろう。我々編集部が一番気に入っているのも、やはりシードゥエラー 4000である。
長子と末っ子に挟まれた真ん中の子でも、どっこい居場所は確保できる。結局、どの子も誕生した背景ではなく、個々の特徴がものを言うのだから。

技術仕様
ロレックス/オイスター パーペチュアル シードゥエラー 4000

製造者: ロレックス
Ref.: Ref.116600
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付表示(クイックコレクト仕様)
ムーブメント: 自社製Cal.3135、自動巻き、2万8800振動/時、31石、耐震軸受け(キフ使用)、マイクロステラスクリュー付きグリュシデュール製テンワ、ブルーのパラクロム・ヘアスプリング(ブレゲエンドカーブ付き)、パワーリザーブ約48時間、C.O.S.C.認定クロノメーター、直径28.5㎜、厚さ5.37㎜
ケース: 904Lステンレススティール製、サファイアクリスタル風防、ねじ込み式トリプロックリュウズ、スクリューバック、122気圧防水
ブレスレットとクラスプ: 904Lステンレススティール製グライドロッククラスプ(小刻みに調節可能なエクステンション)付きオイスターブレスレットおよびセーフティーロック付きフォールディングクラスプ(フリップロック式)
サイズ: 直径40㎜
価格: 95万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時    
文字盤上 +4
文字盤下 +3
3時上 -1
3時下 0
3時左 +6
3時右 -6
最大姿勢差: 12
平均日差: +1
平均振り角:
水平姿勢 293°
垂直姿勢 259°


評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 14pt.
視認性(5pt.) 5pt.
装着性(10pt.) 10pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 7pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 90pt.
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