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【86点】ブランパン/フィフティ ファゾムス バチスカーフ フライバック クロノグラフ(1/4) 2015年01月号(No.56)

BLANCPAIN Fifty Fathoms Bathyscaphe Flyback Chronograph

ブランパンが新たに開発したハイビートクロノグラフムーブメント。これを徹底的に分解し、ムーブメントの構造や、普段は決して目に触れることのない構成部品の加工品質と装飾を検証した結果、我々はいくつかの驚くべき特徴を発見した。

イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
フォト・クリューガー: 写真 Photographs by WWW.PHOTO-KRUEGER.DE
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto


point
・傷に強いセラミックス製ケース
・エキサイティングなマニュファクチュールムーブメント
・高い精度

point
・ダイバーベゼルの動きが固い
・高額

ホイールの匠

集部の緊張感は一気に高まった。今回のテストのため、ハンブルクの時計宝飾店、ヴェンペの修理工房で、ブランパンの新作、フィフティ ファゾムス バチスカーフ フライバッククロノグラフと、そのエンジンである3万6000振動/時の新型ハイビート機、クロノグラフキャリバーF385が分解されることになったからだ。2014年のバーゼルワールドで発表されたこのダイバーズクロノグラフは、針やインデックス、ケースのフォルム、そして、ダイバーベゼルのデザインにおいて、前年に発表されたフィフティ ファゾムス バチスカーフを踏襲している。フィフティ ファゾムスが生まれたのは1953年。フランス軍の潜水部隊向けに開発された、逆回転防止ベゼル付きのダイバーズウォッチである。1950年代の終わりには、アワーマーカーに数字を使わず、バーとドットのインデックスを備えたバチスカーフがフィフティ ファゾムスの系譜に名を連ねることになる。

フィフティ ファゾムスの現行モデルは2007年にリリースされた。特徴的な数字が配されたダイバーベゼルは、膨らみを持たせたサファイアクリスタルで覆われている。2013年、フィフティ ファゾムスの第2のモデル、バチスカーフが息を吹き返した。そして2014年、新開発のハイビート機を載せたフライバッククロノグラフがバチスカーフの最新モデルとして登場する。

ねじ込み式か、押し込み式か

トランスパレントバックは12角形で、一見、ねじ込み式のように見えるが、実は押し込み式である。これは、作業台で体験した最初の驚きだ。セラミックスは非常に硬いという素材の特性のため、ネジ山を切るのが難しい。半面、スティールのように圧力によって歪んだりしないので、押し込み式でも問題はない。バチスカーフで秀逸なのは、押し込み式のトランスパレントバックであるにもかかわらず、水深300mまでの防水性が確保されている点である。

ブランパンは、キャリバーF385で初めて3万6000振動/時を達成した。この振動数は、理論的には10分の1秒まで計測できることを意味する。さらに、ブランパンは文字盤に5分の1秒刻みで正確に目盛りをペイントしているので、針は必ず、目盛りの上に位置するか、目盛りと目盛りの間に位置することになる。実際、文字盤のサイズと短い秒インデックスの恩恵により、計測秒を裸眼で明確に読み取ることができるのはうれしい。さらに、膨らみを持たせた文字盤の形状に沿うようにクロノグラフ秒針を曲げてあるため、運針がスケールに密着し、高い視認性が確保されている。ミニッツカウンターは、連続運針ではなく、毎分ジャンプしながら進むので、計測分がより明確に表示される。

秀逸なデザインながら、ブランパンというブランドを瞬時に認識するのは難しい。新作のバチスカーフは、回転ベゼルに載せられたポリッシュ仕上げのセラミックス製スケール、膨らみを持たせた文字盤、ドーム型サファイアクリスタル製風防、そして、サテン仕上げのセラミックス製ケースによって、高級感あふれる印象に仕上がっている。
ベゼルに配された数字とインデックスには、アモルファス合金のリキッドメタル(非晶質金属合金)が充填されている。セラミックスとの密着性が極めて良好なこの特別な素材は、これまでオメガでしか採用されていなかった。リキッドメタルのビッカース硬さは550で、ビッカース硬さが約220の軟らかいステンレススティールよりも傷にずっと強い。ベゼルのセラミックスにはあらかじめポリッシュがかけられているが、このセラミックスも硬いため、ベゼルの数字にサテン仕上げを施してもセラミックスの部分が輝きを失うことはない。
ただ、黒いベゼルの上では、ダークグレーの数字は今ひとつ視認性に欠け、蓄光塗料を塗布したベゼルのドットマーカーも文字盤のアワーマーカーほど明るく発光しない。その点、時刻は明るい場所でも暗所でもしっかりと読み取ることができる。小秒針も暗所で明るく発光するので、夜間に時計が動いているかどうかを確認するのに役立つ。しかし、蓄光塗料の盛られていないクロノグラフ針は、光の条件がどんなに良くても文字盤とのコントラストに欠ける。ただし、クロノグラフ秒針は、先端が赤くマーキングされていることから、判別しやすくなっている。

クロノグラフプッシャーは軽い押し心地で、始動、停止を素早く行うことができる。また、リュウズも扱いやすく、手前に回しながら簡単に緩めて引き出すことができる。時刻合わせにはストップセコンド機能と日付早送り機能が役に立つ。ただ、回転ベゼルは回すのにかなりの力が必要で、使い込んでも回しやすくなることはない。これは、遊びと間隙が少ないことに起因する現象で、汚れが入り込む余地がほとんどないことを意味している。

軽いセラミックス

セラミックス製ケースを備えたバチスカーフは軽く、快適に着用することができる。裏材がラバー仕様のしなやかなストラップも、装着性の向上に貢献している。セラミックス製バックルは角が鋭いが、手首の上では特に気にならず、装着感を損なう要因にはならない。ケース同様、セラミックス製バックルもサテン仕上げが施されていることから、時計の外観とマッチしているし、セイルキャンバスストラップも全体のデザインによくなじんでいる。
ストラップとバックルは頑丈な設計で、加工も非常にクリーンである。ちなみに、ケースがセラミックス製だからと言って、バックルも当たり前のようにセラミックスで出来ているわけではない。バチスカーフではバックルにセラミックスが使われていることから、バックルという酷使される構成部品ながらも傷がつきにくく、長年、新品であるかのような外観を維持してくれる。

同じことは、精密に面取りをした後で全体にサテン仕上げを施したセラミックス製ケースにも当てはまる。隅々まで黒いこのケースは並外れて傷に強いだけではなく、防水性も高い。ブランパンによれば、クロノグラフプッシャーを水中で操作しても問題ないらしい。
ムーブメントをケースから取り出す際、リュウズとクロノグラフプッシャーもチューブごと取り外した。チューブは、通常見られるような圧入式ではなく、メンテナンスしやすいように差し込み式になっており、クランプワッシャーを使ってケースの内部で固定されている。ニトリルゴムで出来たチューブ用の黒いパッキンと、同じくニトリルゴム製のふたつのプッシャーピン用のパッキンの恩恵により、クロノグラフプッシャーは通常のクロノグラフよりも水中で操作しやすい設計になっている。ケースバック用のパッキンには、ニトリルゴムより耐性がはるかに高い緑色のバイトンパッキンが使用されている。

加工が良好で、シンプルなフォルムの針を取り外すと、文字盤をより詳細に観察できるようになる。文字盤を裏返すと「RW」のロゴが入っている。Rubattel & Weyermannは、ブランパンと同様にスウォッチ グループに属し、ラ・ショー・ド・フォンに拠点を持つ名高い文字盤専門メーカーである。アプライドインデックスとスネイル仕上げのクロノグラフカウンターを持ち、表面に膨らみを持たせ、繊細なサンバースト仕上げが施された文字盤は、高級感にあふれ、ディテール豊かに仕上がっている。

ミニチュア版自動車

文字盤の下から姿を現すのは、ペルラージュ仕上げを施した地板である。通常、ユーザーの目には触れない部分だが、丁寧に装飾されている。もっと驚くのは、スケルトナイズされた筒車である。費用と手間を惜しまない筒車のデザインは、スポーツカーメーカー、ランボルギーニのホイールを想起させる。筒車の下にある日ノ裏車も同じデザインで、トランスパレントバックから見るだけでも、4番車と3番車がこのフォルムを持つことが分かる。このムーブメントには、同じデザインの歯車が合計5個、装備されている。
ブランパンがランボルギーニとパートナーシップを結んでおり、ブランパンGTシリーズが開催されることを考えれば、ランボルギーニを想起させる歯車が時計に搭載されていても不思議ではない。ブランパンの社長兼CEO、マーク・A・ハイエック氏自身もブランパンのレーシングチームに加わり、ランボルギーニ・ガヤルド GT3 FL Ⅱに乗ってレースに参戦している。ランボルギーニのミニチュアホイールは、ブランパンの他のモデルでもすでに採用されている。

今年、デビューしたキャリバーF385は、ブランパンに統合されたエボーシュメーカー、フレデリック・ピゲが1987年にブランパンや他のブランドのために開発した名高いキャリバー1180をベースとしている。厚さ3・95の手巻きキャリバー1180は、当時、世界で最も薄いクロノグラフムーブメントであった。その後、自動巻きのキャリバー1185と自動巻きのフライバッククロノグラフ、キャリバーF185が続くが、両者とも厚さ5・5と非常に薄い。2万1600振動/時、直径26・2、部品点数308点のキャリバーF185から、テスト機に搭載されているキャリバーF385が生まれた。キャリバーF385では、直径が31・8、厚さは6・65にサイズアップされている。その結果、より大きな香箱のためのスペースが確保され、パワーリザーブを犠牲にすることなくテンプの振動数を2万1600振動/時から3万6000振動/時に上げることができた。パワーリザーブは以前と変わらず約50時間である。キャリバーF385により、ブランパンは5Hzのハイビート機を初めて手に入れたのである。
最近、ハイビート機がトレンドとなっている。理論上は、振動数を上げれば精度も向上する。新型キャリバーでは、受け石の数は37個のままだが、部品点数は322点となり、14点ほどパーツが多くなっている。歯車と板バネはすべて旧型と同じ場所に取り付けられているが、デザインに少し変更が加えられた。テンプ受けは三角形になり、スケルトナイズされた。ブリッジのフォルムも変わり、開口部から歯車を見ることができる。

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