【84点】H.モーザー/エンデバー パーペチュアル・カレンダー

FEATUREスペックテスト
2014.10.03

自社製ムーブメントは裏側に閏年表示を置いたり、脱進機を交換可能なユニット式にしたりと、クレバーかつスマートな設計。ゴールドシャトンやフリースプラングのテンプ回りなど、目にも楽しい。

大型日付表示機構はどのように動くのか?

技術の粋を極めたH.モーザーの大型日付表示機構は、2枚上下に重ね合わせたリング状のデイトディスク(日車)によって表示される。上のディスクには「1」から「15」までの数字が記され、「1」と「15」の間には2日分に相当する縦長の穴が開けられている。また、下のディスクには「16」から「31」までの数字が記され、「31」と「16」の間の1日分は空白で何もプリントされていない。ディスクの内側の縁には歯が刻まれていて、そこにひとつの歯車が接して置かれ、上下のディスクに常に噛み合い、24時間ごとにディスクを翌日の日付まで送って動かす。2枚のディスクにはそれぞれ歯が欠けている部分があり、16日から31日までの期間は上のディスクが止まって動かなくなる。すると、上のディスクに開けられた穴から下のディスクの数字が文字盤の日付窓に現れる。逆に、日付窓に上のディスクの数字が出ている期間に、下のディスクの空白箇所が上のディスクに隠れて日付窓の下まで送られて来ると、下のディスクは停止して動かない状態になる。
15日から16日に切り替わる時は、上のディスクが1日分回って穴が日付窓の位置に移動する。この動きに伴い、下のディスクも空白部分から1日分動いて「16」が日付窓に現れる。この時、下のディスクは前述の24時間ごとに送る歯車と噛み合った状態のため、16日から31日までの毎日の日付送りが実行される。
月の末日である28日、29日、30日、31日(下のディスク)から月初めの1日(上のディスク)に切り替わる時は、上のディスクに刻まれた月の長さに合わせたそれぞれ異なる大きな4つの歯(ノッチ)によって変化が起こる。この歯に、制御バネが月の長さの4パターンに合わせて働き、下のディスクにもかかる。また、この制御バネは12ポジションで動く月長調整用歯車に働きかけ、文字盤中心に置かれた矢印形のポインターマンスの針を進ませる。さらに2月の調整用には1本のレバーがかかっていて、これによりケース裏側に置かれた閏年表示の歯車が動くようになっている。
月が替わると、下のディスクも上のディスクとともに毎日1日分回り、「31」と「16」の間の空白箇所まで来ると、ディスクの歯の欠けによって再び下のディスクの動きが止まり、その位置をキープする。
また、月替わりの時は上のディスクの「4」の位置にあるピンを介して、4本のスリット入りの歯車が中間車を経由して、ポインターマンス針に制御をかける。このピンは日付窓が4日を示した時に見えるのだが、考え抜かれた粋な技術に美観が少々譲歩したといったところか。
日付の瞬時切り替えは、レバーに制御された24時間で1回転するスネイルカムによって実行される。毎日の終わりに、レバーの先端がスネイルカムの突起部から崖下部に落ちると、バネが働いて歯車にかかっているカギ状の爪が歯を送ってディスクが動き、日付が切り替わる。
このように一瞬にして終了する交代劇も、舞台裏ではさまざまなパーツが連係して、それぞれの役割を担っているのだ。

技術仕様
H.モーザー/エンデバー パーペチュアル・カレンダー

製造者: H.モーザー
Ref.: 1341-0300
機能: 時、分、スモールセコンド(ストップセコンド仕様)、永久カレンダー(クイックコレクト式、ポインターマンス式、大型日付表示付き)、パワーリザーブインジケーター、閏年表示(裏側に装備)
ムーブメント: 自社製Cal.HMC 341、手巻き、1万8000振動/時、28石、耐震軸受け(インカブロック使用)、チラネジ付きテンワ、パワーリザーブ約7日間、直径34.0㎜、
5.8㎜
ケース: プラチナ製、ドーム型サファイアクリスタル風防、スクリュー式トランスパレントバック(4カ所ビス留め)、3気圧防水
ストラップとバックル: アリゲーター製ストラップおよびセーフティーロック付きフォールディングバックル
サイズ: 直径40.8㎜、厚さ11.1㎜、総重量154g
バリエーション ローズゴールドおよびホワイトゴールドケース(各640万円)、チタンケース(ダイヤモンドライクカーボンコーティング)(570万円)
価格: 830万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時    
文字盤上 +5
文字盤下 +7
3時上 +1
3時下 +5
3時左 +4
3時右 +7
最大姿勢差: 6
平均日差: +4.8
平均振り角:
水平姿勢 308°
垂直姿勢 265°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 8pt.
デザイン(15pt.) 13pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 8pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 12pt.
合計 84pt.