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ウブロ/ビッグ・バン ウニコ(1/1) 2014年09月号(No.54)

Hublot Big Bang Unico

ウブロが彗星のごとく躍進を遂げることができたのは、スポーティーでテクニカルなデザインや、異素材を組み合わせた複雑なフォルムのケースなど、時計のコンセプトによるところが大きい。ウブロのアイコニックモデルに待望の自社製クロノグラフムーブメントが搭載され、ビッグ・バン ウニコが完成した。

イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル: 写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto


point
・ディテール豊かなケース
・見ていて飽きない自社製ムーブメント
・テクニカルなデザイン

point
・歩度が顕著な進み傾向にある
・高額

ウブロ製マシンの真価

統を重視する時計の世界において、ウブロは彗星のごとく現れ、現在では名だたるウォッチメーカーと肩を並べるまでの大躍進を遂げたブランドである。だが、その始まりはやや静かなものだった。フランス語で「舷窓」(船の側面の採光用の小窓)の意味を持つウブロは、1980年にカルロ・クロッコ氏が創業し、ドレスウォッチでありながら、舷窓をモチーフとしたデザインを取り入れ、ゴールドとラバーなど、当時としては異色の素材を組み合わせることで、時計愛好家たちを驚かせた。それでもウブロは、ジャン‐クロード・ビバー氏が2004年に株式を取得し、CEOに就任するまで、ニッチなブランドだった。天才的な企業家であるビバー氏は、ウブロを率いる前からすでに、ブランパンやオメガを圧倒的な成功に導いた経歴を持つ人物である。今やブランドのアイコン的存在となったビッグ・バンのようなクールなモデルや、サッカー、F1、音楽産業との幅広いパートナーシップにより、ビバー氏はブランドの潜在能力を極限まで高め、4年間で売り上げを約10倍に伸ばした。市場調査会社『クロノリティクス』のデータによると、ウブロはヨーロッパとアジアにおいて、最も愛されるブランドランキングの第6位に位置しており、北米では第7位となっている。

ウブロが本格的に高級時計マニュファクチュールの仲間入りを果たしたのは、ウブロ初の自社製ムーブメントを発表した2010年のことである。ウブロは、マニュファクチュールムーブメントの開発において安易な道を選ぶことをせず、量産可能な自動巻きクロノグラフムーブメントという野心的な目標を当初から掲げていた。ウブロ初の自社製クロノグラフキャリバー「ウニコ」が最初に搭載されたのは、キング・パワー ウニコである。2013年以降、ウニコはビッグ・バンにも搭載されるようになった。ウブロのアイコニックモデル・ライン、ビッグ・バンとウブロ自社製クロノグラフキャリバー、ウニコが、ついに融合したのである。ビッグ・バン ウニコでは、デザイン面でも手が加えられ、ディテールがさらに豊かになった。それに加え、自社製クロノグラフムーブメントのウニコに組み込まれたコラムホイールや構成部品の数々を文字盤側から見ることができることから、ビッグ・バンの持つ〝複雑なマシン〟という性格がより強化されている。

複雑であることの魅力

ビッグ・バン ウニコの高級感あふれる印象は、こうした複雑さと深く関係している。ネジを見せるデザインのベゼルは、オーデマ ピゲのロイヤル オーク オフショアを彷彿とさせるが、ビッグ・バン ウニコは、ブラックグラスファイバー製のケースサイド、ストラップを交換するための新しい台形型プッシュボタン、ダイアル側からはコラムホイールで制御される水平クラッチ式クロノグラフ機構の精緻な動作が、ケースバックからは自動巻きローターやテンプの動きが確認できるムーブメントを搭載し、よりディテール豊かな外観に仕上がっている。ケースは60点以上ものパーツから構成され、そのすべてが機能上、不可欠でないにもかかわらず、複雑な構造に手間とコストを惜しまない姿勢は一目瞭然である。
ウブロがディテールに込めた愛情がいかほどか、ネジひとつにも見て取れるのは、観察者に感動を与える要素である。「H」の文字をかたどったウブロ独自のネジ頭は、以前のビッグ・バンのモデルとは異なり立体的である。マット仕上げの「H」の面を一段高くなったポリッシュ仕上げの縁が囲むデザインで、極小の面積の中にもコンビ仕上げの面白さが表現されている。仕上げの違いによる相互作用は、ケースの他の部分にも反映されており、エッジと側面にポリッシュ仕上げが施されたベゼルは、サテン仕上げの上面や、ブラックグラスファイバー製のケースサイドまた、部分的にラバーコーティングされたリュウズとのコントラストが美しい。プッシュボタンは、以前のような長方形ではなく丸型で、側面に溝が刻まれており、エンジンのピストンを想起させる。ビッグ・バン ウニコは、ノンカウルタイプのバイク(訳注:エンジン等を覆う外装がないタイプのバイク。ネイキッドバイク)とどことなく類似している。「見せる」デザインだからこそ、すべてのディテールが妥協なく緻密に設計されているのである。

デザイン面だけでなく、〝ワン・クリック〟のストラップクイック交換システム用のプッシュボタンなど、機能性を有するパーツも精巧に設計されている。このプッシュボタンは、エンドピースに配されたふたつのネジの間にあり、盛り上がった縁の部分はサテン仕上げで、その内側の面がブラスト加工されている。こうした精緻な仕上げがウブロの高級感をさらに向上させているのである。
ストラップは実際、クイック交換システムの恩恵により簡単に取り外し、別のものと付け替えることができる。黒いラバーストラップは、表面に溝が入っており、レース用バイクのタイヤを想起させる。動きのスムーズな2個のセーフティーボタンを備えたチタン製のバックルもディテール豊かで、簡単に操作することができ、時計を安全かつ確実に手首に留めてくれる。ただ、このバックルは開いた状態だとエッジが非常に鋭く、着用時にやや不快な圧迫感があるのが残念な点である。では次に、サファイアクリスタル製風防と、同じくサファイアクリスタル製の大きなトランスパレントバックを通して、ビッグ・バン ウニコの素晴らしさをさらに発見してみよう。

複雑な構造物。ビッグ・バン ウニコのケースは60点以上ものパーツで構成されている。

模様彫りを廃したムーブメント

ブリッジに模様彫りがひとつも施されていない時計が190万円もすると聞くと、まずは唖然とするかもしれない。それでも、このムーブメントは美しい。それは、模様彫りがなくても見る価値のある要素をいくつも発見できることが理由だろう。今日では残念ながら、数多くのブランドが、ムーブメントのほぼ全域を覆い隠すほど大きなブリッジを採用している。この手法は、歯車に装飾を施す手間が省けるものの、時計愛好家にとっては内部機構を観察する機会が奪われることになる。ウブロはこの点、ありがたいことにすべてを「見せる」デザインにしてくれた。サークラージュ(円形装飾)を施したローターは、スケルトナイズされていることから、同じくスケルトナイズされた歯車への視界を遮らない。ブリッジも程よくスケルトナイズされており、他の歯車もよく観察することができる。歯車の非対称に肉抜きされた形状は、レース用バイクのリアホイールを想起させる。模様彫りこそ施されていないが、ブラスト加工されたマットグレーのブリッジにより、ウニコのムーブメントは鋳鉄製のエンジンと似た印象を与えている。これには、テンプやローターの巻き上げ車を載せ、ネジ留めされたブリッジがよく似合う。ローター中央のリング状のパーツには穴が開けられており、多孔式のブレーキディスクを思わせる。
だが、ウブロがレース用バイクを踏襲しているのはデザイン面だけではない。軽量化や摩擦軽減のために最新素材を投入することも類似した手法である。ウブロは青いシリコン製のアンクルやガンギ車を装備することで、摩擦と摩耗の軽減に成功した。シリコン製パーツにはさらに、ムーブメントの中で最も重要な機構のひとつである脱進機の注油の問題を軽減する役割がある。

自社製クロノグラフキャリバー、ウニコ HUB1242は、模様彫りがなくても美しい。

文字盤側から見えるコラムホイール

ノンカウルタイプのバイクのように、ビッグ・バン ウニコはスケルトンダイアルを備え、内部機構が文字盤側から見えるようになっている。ウブロの自社製クロノグラフキャリバー、ウニコが文字盤側から見ても魅力的な外観を備えていることは、常に内部機構を観察するチャンスに恵まれたユーザーにとってこの上ない喜びに違いない。こうした意匠が成功するのは稀なことである。ウブロは初めから、スケルトナイズされた文字盤を持つ時計をコンセプトとしてこのキャリバーを設計したのだ。そのため、コラムホイールと水平クラッチも文字盤側に移されている。水平クラッチは、その形状からバイクのリアサスペンションを想起させる。センターがスリット状にスケルトナイズされたアームを持つ歯車はあたかもバイクのリムようで、歯車の動きもはっきりと見ることができる。ブリッジは裏蓋側と同じようにマットグレーで、エンジンを彷彿とさせ、カップリングクラッチはサテン仕上げになっている。
文字盤をスケルトナイズしたからこそ発生するいくつかの難点もある。例えば、通常、文字盤に配されるロゴだが、文字盤がないことから適切なスペースを確保できなくなった。だが、ウブロは、サファイアクリスタル製風防の内側に印字するという洗練された手法でこの問題を解決している。スケルトナイズされた日付リングは、それ自体が芸術品のような価値を有するばかりか、内部機構をさらに見えやすくする効果も備えている。日付は3時位置にある60分積算計の開口部から判読する。ここでのデメリットは、日付を把握するのにかなり集中して見なければならない点である。
蓄光塗料をたっぷりと塗布した大きなインデックスは、ムーブメントの上を漂っているように見える。細いインナーリングで支えられたインデックスは、時計の立体的な印象を強めることに貢献している。幅の広い針と無反射コーティングが施された風防の恩恵もあり、文字盤がスケルトナイズされていても時刻はしっかりと読み取ることができる。サブダイアルを囲むクロム製リングは、バイクの計器を再現したようなデザインである。
3時位置の60分積算計によって2時と4時のアラビックインデックスがほぼ認識できないほど欠けてしまっているのは、残念な点である。また、60分積算計もクロノグラフ分針の幅が広いことから、正確に読み取ることが困難である。他方、クロノグラフの秒インデックスは、ベゼル内側の薄いリングの上にステンシル文字で印字されている。通常は小さな文字に適さないとされているが、同じくステンシル文字のアワーマーカーと同様、とても認識しやすい。ステンシル文字はさらに、この時計のテクニカルな性格をより強調するのに貢献している。
ウブロは、視認性を損なうことなくメカニズムを可視化することに成功した。加工も入念かつクリーンに行われており、ルーペを使用しても加工の痕跡を見つけられないほどである。ただし、コラムホイールの下段にのみ、拡大すると表面がやや波打っているのが見て取れる。

最新式のキャリバー

ウニコ・キャリバーの設計において、ウブロはコラムホイールと水平クラッチを搭載するなど、伝統的なクロノグラフの構造を踏襲している。精度の面で有利な垂直クラッチを採用しなかったのは、どちらかというとデザインを重視した判断によるものだろう。垂直クラッチでは、クロノグラフ機構の連結・解除の様子がほぼ何も見えないからである。
ビッグ・バン ウニコでは、水平クラッチのデメリットもよく見えてしまう。クロノグラフ始動時にクロノグラフ秒針がはっきりと前方へ飛ぶのだ。コラムホイールはその逆で、クロノグラフのプッシュボタンが非常にスムーズに操作できるため、コラムホイールならではの長所が明確である。
パワーリザーブについては、ウブロが昨今のトレンドに倣って長く設定したことは歓迎すべきである。ビッグ・バン ウニコは、動かさず、巻き上げなくても、約72時間、つまり3日間は動き続けてくれる。両方向巻き上げ式ローターは、重金属のタングステンで出来ており、メンテナンスフリーのセラミックス製ボールベアリングで支持されている。
秒積算計と60分積算計用にクロノグラフクラッチがふたつ装備された特別な制御機構により、フライバック機能も比較的容易に実現することができた。フライバックは、クロノグラフを停止し、針をゼロに戻さなくても、クロノグラフ作動中にリセットボタンを押せば新たな計時を開始することができる機能で、ラップタイムを計測する際などに有効である。ストップセコンド機能も装備されており、テンワがレバーで押さえられて止まる様子をはっきりと観察することができる。ウニコ・キャリバーは合計330点もの部品で構成されている。
ウニコでは、両側で支持するバランスブリッジが採用されている。一般的な片持ちタイプのバランスブリッジよりも頑丈な両持ちのバランスブリッジは、ロレックスの場合と同じように、軸方向のアガキを調整できるようになっている。緩急の調整は、ウニコの最終試作バージョンのようにテンワのバランスウェイトを使用するフリースプラング方式ではなく、歯が切られた緩急針と、同様に歯が切られ、バランスブリッジの上に取り付けられた調整ネジで行う。この方式では、調整時に姿勢差を取り除くことができないため、少し残念である。

微調整は並レベル

歩度測定機によるテストでは、最大姿勢差が11秒という結果だった。特に、平均日差はプラス11秒/日で、ここまで顕著な進み傾向については、もう少し精度の高い微調整を望みたいところである。水平姿勢から垂直姿勢への振り落ちも、40度以上と著しい。クロノグラフを作動させると精度は少し向上し、着用時はプラス7秒/日と、まだ安定していた。
価格については朗報と言える。改良され、さらに複雑化したケースに新しいストラップ交換システムを備え、秀逸な自社製ムーブメントが搭載されているにもかかわらず、ビッグ・バン ウニコの価格は先代モデルとほぼ変わらないのである。それでも、190万円という価格は、やはり高額である。だが、自社製クロノグラフムーブメントとディテール豊かなケースが手に入ることを考えれば、ビッグ・バン ウニコの価格設定は正当と言えなくもない。もちろんここでは、高級腕時計にムーブメントの装飾があって当たり前という考えは捨てなければならない。これだけの高額にもかかわらず、模様彫りが施されていないからである。だが、特殊な外観を備えていることから、ウニコは模様彫りを必要としないのだ。
ビッグ・バン ウニコは万人受けするモデルではない。だが、洗練された若い愛好家には熱狂的に受け入れられるだろう。クラシカルなオールドタイマーではなく、最先端のバイクに似た、正真正銘のウブロ製マシンなのだから。

難攻不落。プッシュボタンを備えたフォールディングバックルは安全かつ確実。

技術仕様
ウブロ/ビッグ・バン ウニコ

製造者: ウブロ
Ref.: 411.NX.1170.RX
機能: 時、分、スモールセコンド(ストップセコンド仕様)、60分積算計を備えたフライバッククロノグラフ、日付表示
ムーブメント: 自社製クロノグラフキャリバー ウニコHUB1242、自動巻き、2万8800振動/時、38石、日付早送り調整機能、耐震軸受け(インカブロック使用)、緩急針と調整ネジによる緩急調整、パワーリザーブ約72時間、直径30㎜、厚さ8.05㎜
ケース: チタン、ブラックグラスファイバー製、フラットサファイアクリスタル製風防(両面無反射コーティング)、サファイアクリスタル製トランスパレントバック(6カ所ネジ留め、内側に無反射コーティング)、10気圧防水
ストラップとバックル: ラバーストラップ、チタン製セーフティーフォールディングバックル
サイズ: 直径45㎜、厚さ15㎜、重量132g
バリエーション: チタン製ケースとセラミックス製ベゼル(210万円)、18Kキングゴールド製ケースとベゼル(403万円)、18Kキングゴールド製ケースとセラミックス製ベゼル(371万円)、セラミックス製ケースとベゼル(オールブラック、201万円)、カーボンファイバー製ケースとベゼル(222万円)
価格: 190万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時     / クロノグラフ作動時
文字盤上 +14 +8
文字盤下 +17 +14
3時上 +6 +7
3時下 +12 +6
3時左 +10 +8
3時右 +7 +6
最大姿勢差: 11 8
平均日差: +11 +8.2
平均振り角:
水平姿勢 330° 295°
垂直姿勢 284° 254°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 10pt.
デザイン(15pt.) 14pt.
視認性(5pt.) 3pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 15pt.
精度安定性(10pt.) 6pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 12pt.
合計 81pt.

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