【81点】ウブロ/ビッグ・バン ウニコ

FEATUREスペックテスト
2014.08.03

自社製クロノグラフキャリバー、ウニコ HUB1242は、模様彫りがなくても美しい。

文字盤側から見えるコラムホイール

ノンカウルタイプのバイクのように、ビッグ・バン ウニコはスケルトンダイアルを備え、内部機構が文字盤側から見えるようになっている。ウブロの自社製クロノグラフキャリバー、ウニコが文字盤側から見ても魅力的な外観を備えていることは、常に内部機構を観察するチャンスに恵まれたユーザーにとってこの上ない喜びに違いない。こうした意匠が成功するのは稀なことである。ウブロは初めから、スケルトナイズされた文字盤を持つ時計をコンセプトとしてこのキャリバーを設計したのだ。そのため、コラムホイールと水平クラッチも文字盤側に移されている。水平クラッチは、その形状からバイクのリアサスペンションを想起させる。センターがスリット状にスケルトナイズされたアームを持つ歯車はあたかもバイクのリムようで、歯車の動きもはっきりと見ることができる。ブリッジは裏蓋側と同じようにマットグレーで、エンジンを彷彿とさせ、カップリングクラッチはサテン仕上げになっている。
文字盤をスケルトナイズしたからこそ発生するいくつかの難点もある。例えば、通常、文字盤に配されるロゴだが、文字盤がないことから適切なスペースを確保できなくなった。だが、ウブロは、サファイアクリスタル製風防の内側に印字するという洗練された手法でこの問題を解決している。スケルトナイズされた日付リングは、それ自体が芸術品のような価値を有するばかりか、内部機構をさらに見えやすくする効果も備えている。日付は3時位置にある60分積算計の開口部から判読する。ここでのデメリットは、日付を把握するのにかなり集中して見なければならない点である。
蓄光塗料をたっぷりと塗布した大きなインデックスは、ムーブメントの上を漂っているように見える。細いインナーリングで支えられたインデックスは、時計の立体的な印象を強めることに貢献している。幅の広い針と無反射コーティングが施された風防の恩恵もあり、文字盤がスケルトナイズされていても時刻はしっかりと読み取ることができる。サブダイアルを囲むクロム製リングは、バイクの計器を再現したようなデザインである。
3時位置の60分積算計によって2時と4時のアラビックインデックスがほぼ認識できないほど欠けてしまっているのは、残念な点である。また、60分積算計もクロノグラフ分針の幅が広いことから、正確に読み取ることが困難である。他方、クロノグラフの秒インデックスは、ベゼル内側の薄いリングの上にステンシル文字で印字されている。通常は小さな文字に適さないとされているが、同じくステンシル文字のアワーマーカーと同様、とても認識しやすい。ステンシル文字はさらに、この時計のテクニカルな性格をより強調するのに貢献している。
ウブロは、視認性を損なうことなくメカニズムを可視化することに成功した。加工も入念かつクリーンに行われており、ルーペを使用しても加工の痕跡を見つけられないほどである。ただし、コラムホイールの下段にのみ、拡大すると表面がやや波打っているのが見て取れる。

最新式のキャリバー

ウニコ・キャリバーの設計において、ウブロはコラムホイールと水平クラッチを搭載するなど、伝統的なクロノグラフの構造を踏襲している。精度の面で有利な垂直クラッチを採用しなかったのは、どちらかというとデザインを重視した判断によるものだろう。垂直クラッチでは、クロノグラフ機構の連結・解除の様子がほぼ何も見えないからである。
ビッグ・バン ウニコでは、水平クラッチのデメリットもよく見えてしまう。クロノグラフ始動時にクロノグラフ秒針がはっきりと前方へ飛ぶのだ。コラムホイールはその逆で、クロノグラフのプッシュボタンが非常にスムーズに操作できるため、コラムホイールならではの長所が明確である。
パワーリザーブについては、ウブロが昨今のトレンドに倣って長く設定したことは歓迎すべきである。ビッグ・バン ウニコは、動かさず、巻き上げなくても、約72時間、つまり3日間は動き続けてくれる。両方向巻き上げ式ローターは、重金属のタングステンで出来ており、メンテナンスフリーのセラミックス製ボールベアリングで支持されている。
秒積算計と60分積算計用にクロノグラフクラッチがふたつ装備された特別な制御機構により、フライバック機能も比較的容易に実現することができた。フライバックは、クロノグラフを停止し、針をゼロに戻さなくても、クロノグラフ作動中にリセットボタンを押せば新たな計時を開始することができる機能で、ラップタイムを計測する際などに有効である。ストップセコンド機能も装備されており、テンワがレバーで押さえられて止まる様子をはっきりと観察することができる。ウニコ・キャリバーは合計330点もの部品で構成されている。
ウニコでは、両側で支持するバランスブリッジが採用されている。一般的な片持ちタイプのバランスブリッジよりも頑丈な両持ちのバランスブリッジは、ロレックスの場合と同じように、軸方向のアガキを調整できるようになっている。緩急の調整は、ウニコの最終試作バージョンのようにテンワのバランスウェイトを使用するフリースプラング方式ではなく、歯が切られた緩急針と、同様に歯が切られ、バランスブリッジの上に取り付けられた調整ネジで行う。この方式では、調整時に姿勢差を取り除くことができないため、少し残念である。

微調整は並レベル

歩度測定機によるテストでは、最大姿勢差が11秒という結果だった。特に、平均日差はプラス11秒/日で、ここまで顕著な進み傾向については、もう少し精度の高い微調整を望みたいところである。水平姿勢から垂直姿勢への振り落ちも、40度以上と著しい。クロノグラフを作動させると精度は少し向上し、着用時はプラス7秒/日と、まだ安定していた。
価格については朗報と言える。改良され、さらに複雑化したケースに新しいストラップ交換システムを備え、秀逸な自社製ムーブメントが搭載されているにもかかわらず、ビッグ・バン ウニコの価格は先代モデルとほぼ変わらないのである。それでも、190万円という価格は、やはり高額である。だが、自社製クロノグラフムーブメントとディテール豊かなケースが手に入ることを考えれば、ビッグ・バン ウニコの価格設定は正当と言えなくもない。もちろんここでは、高級腕時計にムーブメントの装飾があって当たり前という考えは捨てなければならない。これだけの高額にもかかわらず、模様彫りが施されていないからである。だが、特殊な外観を備えていることから、ウニコは模様彫りを必要としないのだ。
ビッグ・バン ウニコは万人受けするモデルではない。だが、洗練された若い愛好家には熱狂的に受け入れられるだろう。クラシカルなオールドタイマーではなく、最先端のバイクに似た、正真正銘のウブロ製マシンなのだから。