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ロレックス/オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ(1/1) 2014年05月号(No.52)

ROLEX OYSTER PERPETUAL GMT-MASTER

ロレックスの生んだ古典的名作、GMTマスターⅡが、青と黒のツートンカラーのベゼルを伴って登場した。セカンドタイムゾーンを搭載した有名なモデルの最も美しいバリエーションを検証する。

イェンス・コッホ 文 Text by Jens Koch
OK-PHOTOGRAPHY: 写真 Photographs by OK-PHOTOGRAPHY
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto


point
・高い精度
・設計の秀逸なムーブメント
・卓越した加工品質

point
・サイクロップレンズにより視認性が損なわれている

ブルーアワー

ルーアワーとは、日の入りから夜のとばりが下りるまでの、空が魔法にかかったような藍色に染まる時間帯を指す。ロレックスが新しいGMTマスターⅡでセラミックス製ベゼルに配された24時間目盛りの半分に選んだ色も、特別な色味のブルーである。GMTマスターは、60年前にリリースされた時、すでにツートンカラーの24時間ベゼルを備えていた。セカンドタイムゾーンで日中と夜間の時刻を明確に区別することができたのは、その恩恵によるものである。後に、よりエレガントな仕様としてベゼルが黒一色のバリエーションが導入されることになるが、時刻をより素早く認識できるツートンカラーの24時間目盛りは初めからGMTマスターのコンセプトの一部だった。2色で区別されていた方が、旅先から自宅に電話できる時刻かどうか、あるいは、皆すでに就寝している時刻なのか、ひと目で知ることができるからである。

変化は2007年に起きた。リファレンスナンバー16710が生産終了となり、この年に後継モデルとしてリリースされた116710LNは、黒い単色ベゼルのみでの供給となったのである。その直前に発表されたゴールドとロレゾールのバリエーションにも単色ベゼルが搭載されていた。116710LNでも単色が採用された原因は、ベゼルの素材にあった。以前、使用されていたアルミニウムに代わり、傷に強いハイテクセラミックスが採用されたからである。このベゼルは単色とはいえ、数字とインデックスをフライス加工で削り取り、そこにロレックスの特許技術でゴールドまたはプラチナの粉末を盛り込むことで、視認性がしっかりと確保されていた。当時はまだ、ツートンカラーのセラミックス製ベゼルは技術的に実現不可能と思われていた。

ツートンカラーのセラミックス

だが、2013年4月、その定説が覆される。その年のバーゼルワールドで、ロレックスがツートンカラーのセラミックス製ベゼルを搭載したGMTマスターⅡを発表したのである。関心は非常に高かった。ロレックスのブースのクリーニングチームは、ショーケースに押し付けられた好奇の「鼻」の跡を5分ごとに拭き取らねばならなかったほどである。
GMTマスターの伝統色である赤/黒、あるいは赤/青の配色に代わり、セラミックス製ベゼルは青と黒のツートンカラーで登場した。控えめな印象の配色ながら、ベゼルは美しい輝きを放つ。ロレックスは、セラミックスを焼結する前にベゼルの半分に金属塩を浸透させる工程によって、ワンピース構造のベゼルにふたつの色を与えることに成功した。鮮やかな色は、ベゼルに添加された化学物質が焼結炉の中で化学反応を起こすことで発生する。これは、ロレックスが独自に自社開発し特許を取得した手法である。GMTマスターの旧モデルではベゼルの退色がよく観察されたが、新しいベゼルは紫外線に強いことから、こうした心配はおそらく無用だろう。セラミックス製ベゼルを伝統的なカラーコンビネーションの赤と黒で実現可能だったかは、疑問である。赤いセラミックスを製造するのは、技術的に極めて困難だからだ。
いずれにしても、新しいカラーコンビネーションは極めて美麗で、日中の時刻を表す目印としては、青のほうが赤よりも理にかなっていると言えるだろう。ただ、光の条件によっては色の違いを見分けるのが困難な場合もある。とはいうものの、赤よりも青のほうがずっと控えめなことから、この時計はスーツにも合わせやすい。GMT針もベゼルに合わせ、慣れるまでに少し時間のかかる緑で0はなく、青になっているが、黒ベゼルのステンレススティール製モデルでは緑のGMT針が搭載されている。文字盤の“GMT-MASTER Ⅱ”の文字も、新しいモデルでは緑ではなく、他の文字列と同じ白で記されている。こうして、新しいGMTマスターⅡは全体的に非常に調和の取れた印象に仕上がっている。

幻想的な青をベゼルとGMT針に配した2013年発表のGMTマスターⅡ。手にする喜びだけでなく、その青の美しさと細部にまで込められたロレックスの意匠を存分に感じてほしい。

時代を超越した意匠

デザインについては、唯一、ベゼルの数字がモダンな書体にマイナーチェンジされたほかは、隅々まで初代GMTマスターの意匠が踏襲されている。オリジナルモデルのもともとのデザインに改善すべき点がほぼなかったことが、その理由だろう。GMTマスターは、時代を超越したクラシカルな意匠として、その地位を築き上げてきたのである。GMTマスターⅡのデザインは、ベゼルのディテールとGMT針を除けば、サブマリーナーとほぼ同一である。だが、一見、微々たる違いに思えて、全体の印象に驚くほど大きな影響を与えているのが、ケースの厚さである。GMTマスターⅡのケースは厚さ12・1㎜で、サブマリーナーよりも0・4㎜、薄いのだ。その分、サブマリーナーが300mの防水性を備えているのに対し、GMTマスターⅡでは100mの防水性しか備わっていない。ケースがここまで薄く、快適に着用できるスポーツウォッチが今日では少なくなってしまったのは残念である。ケース径40㎜というサイズは大多数のユーザーにとって、過度に巨大な直径を持つモデルよりもずっと使いやすいだろう。
緩やかなカーブを持つコマで出来たブレスレットも、手首に心地良くなじむ。手首は、気温が高い場合や、腕を激しく動かすような動作をした際に、血行が良くなり膨張することがあるが、オイスターロッククラスプには、こうした問題を簡単に解消できる実用的な機能が備わっている。オイスターロッククラスプの下に隠された可動式のハーフサイズのコマを引き出せば、ブレスレットの外観を変えることなく、長さを約5㎜、延長することができる。

ケースとブレスレットの品質と表面加工には非の打ちどころがなく、輝きの美しさが際立つ。

簡単な操作

オイスターブレスレットに備えられた質の高いオイスターロッククラスプは、加工の点でも操作性においても、ほぼ完璧な仕上がりである。クラスプが閉じている状態では、セーフティキャッチのメカニズムをほとんど見ることができない。ロレックスの王冠を持ち上げてセーフティキャッチを開くと、その下にあるレバーが見えてくる。クラスプを開くには、このレバーを持ち上げるだけでよい。
サイズの大きなリュウズも、快適な操作に貢献している。手前に回して緩めれば、巻き上げ動作を楽に行うことができる。リュウズを1段引き出したポジションでは、別のタイムゾーンに移動した時などに、通常の時針のみを1時間刻みで前後に動かして合わせることができる。ここでは、日付表示も時針の動きとシンクロして前後に瞬時に切り替わる。リュウズを2段引き出すと、分針を動かしながらGMT針と通常の時針も修正することができる。通常の時針をローカルタイムに合わせ、GMT針はホームタイム、あるいは、パイロットにとって重要なグリニッジ標準時に合わせて使用すれば、非常に有益なトラベルウォッチとして機能する。
さらに、1時間刻みでしっかりと噛み合うベゼルも、別のタイムゾーンの時刻を一時的に表示するのに使用することができる。例えば、ドイツにいてアメリカの会社と共同プロジェクトを行う際などに便利な機能である。ベゼルを任意のタイムゾーンに設定しておけば、ビジネスパートナーに連絡できる時間帯を常に把握することができる。このように、GMTマスターⅡは、この上なく実用的なセカンドタイムゾーン機能を提供してくれる時計なのだ。

マニュファクチュールムーブメント

この時計を駆動するのは、ロレックスの自社製自動巻きキャリバー3186である。ロレックス製スポーツウォッチのご多分に漏れず、重厚なねじ込み式裏蓋の内側に隠されたキャリバー3186には、ロレックスが自社開発したパラフレックス ショック・アブソーバを除き、赤いアルマイト処理を施した両方向巻き上げローターのためのアルミニウム製リバーサー(切り替え車)や、片側で支えるこれまでのバランスブリッジに代わって搭載された頑丈な両持ちのバランスブリッジ、また、常磁性のあるニオブとジルコニウムの合金で出来た自由に振動する巻き上げ式ヘアスプリングなど、ロレックスが提供できるすべてのイノベーションが詰まっている。テンプには温度補正機能が備わっているので、テンプの振動数が温度変化に左右されることはない。ヘアスプリングとテンワは温度が上昇すると熱膨張するので、振動数が下がってしまうのが普通なのだが、ロレックスの新型ヘアスプリングは、温度が上昇しても振動数が変わらないように弾性が調整されているのだ。
また、テンワに配されたマイクロステラナットで緩急の調整を行うフリースプラング方式なので、専用ツールを使用すればムーブメントを分解しなくても非常に繊細な微調整が可能である。ロレックスの他の時計と同様に、スイスの公式クロノメーター検定所であるスイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C.)が公式に発行したクロノメーター証書によって、温度や姿勢が変わってもムーブメントが最高の精度を提供することが約束されている。
ロレックスは徹底して、安定した精度、耐久性、そして、堅牢性が確保されるようにムーブメントを設計している。それだけではなく、ペルラージュなどの模様彫りもきちんと施している。ただし、ハンドエングレービングやそれに類するレベルの装飾は、ここで期待すべきではない。

キャリバー386は、両持ちのバランスブリッジ、フリースプラング方式のテンプ、自社製ヘアスプリングを搭載し、堅牢で精度が高い。

精度の高さ

着用テストでは、一定してプラス1秒/日というわずかなプラス傾向により、秀逸な設計のムーブメントであることを手首の上でも証明してみせた。歩度測定機を使用したテストでは、ムーブメントはすべての姿勢でマイナス2秒/日からプラス2秒/日の間の精度を示した。最大姿勢差も相応に小さく、わずか4秒だった。計算上の平均日差は、わずかプラス0・7秒/日である。精度が優秀だったのに比べると、水平姿勢から垂直姿勢への振り落ちは平均的だった。
GMTマスターⅡの7200ユーロという価格は、中程度の価格帯に属する。セカンドタイムゾーンを装備したマニュファクチュールムーブメント搭載モデルには、GMTマスターⅡよりももっと安価なモデルもあるが、高額なものもある。だが、将来、安定した価値が見込まれることを考慮すれば、ロレックスに比肩し得るモデルはないだろう。
青と黒の新型ベゼルを搭載することで、ロレックスはこれまでで最も美しいGMTマスター Ⅱを完成させた。デザインは過去60年間、ほとんど変わっていないが、GMTマスターはアイコンモデルとしてその地位を確立し、決して時代遅れにはならない、むしろ時代の流行に左右されないクラシカルなルックスを持つ。
ロレックスは絶え間なく技術の向上に励んでおり、自社製のヘアスプリングやセラミックス製ベゼルによって持てるイノベーションを遺憾なく発揮している。ロレックスの技術はすべて、機能性を重視した結果であり、エクステンションからムーブメント、タイムゾーンの設定に至るまで、緻密に熟考されている。精度、視認性、装着性のどれをとっても、レベルが極めて高い。これでトランスパレントバックだったなら、どれほどうれしかったことだろう。GMTマスターⅡは、ブルーアワーだけではなく、いつでもどこでも使える時計なのである。

時計師からひと言

GMTマスターのデザインは過去60年間ほとんど変わっていません。ディテールの改善はわずかにとどまっており、弱点のほとんどない素晴らしい時計です。緩やかなカーブを持つコマで出来たブレスレットとオイスターロッククラスプは特に美しい仕上がりで、手首の形状に沿って完璧になじみます。ただ、加工品質が高いだけに、ディテールの甘さが目立つのが残念です。例えば、クラスプ内部にレーザーエングレービングで配されたロレックスのロゴは、もっと丁寧に入れるべきだったでしょう。

ライナー・メラート
ウルム、ケルナー時計宝飾店オーナー兼マイスター時計師

技術仕様
ロレックス/オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ

製造者: ロレックス
Ref.: 116710BLNR
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付表示、セカンドタイムゾーン
ムーブメント: 自社製キャリバー3186、自動巻き、2万8800振動/時、31石、耐震軸受け(キフ使用)、マイクロステラナットを備えたグリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約48時間、直径28.5㎜、厚さ6.4㎜、C.O.S.C.認定クロノメーター
ケース: 904Lステンレススティール製、サイクロップレンズ付きフラットサファイアクリスタル製風防(無反射コーティングなし)、ねじ込み式トリプロックリュウズ、904Lステンレススティール製ねじ込み式裏蓋、10気圧防水
ストラップとクラスプ: 904Lステンレススティール製オイスターブレスレットおよびオイスターロッククラスプ(約5㎜のエクステンションリンク内蔵)
サイズ: 直径40㎜
価格: 80万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時    
文字盤上 +2
文字盤下 +2
3時上 -1
3時下 +1
3時左 +2
3時右 -2
最大姿勢差: 4
平均日差: +0.7
平均振り角:
水平姿勢 304°
垂直姿勢 275°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 14pt.
視認性(5pt.) 5pt.
装着性(10pt.) 10pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 9pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 92pt.
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