【81点】オメガ/スピードマスター ムーンウォッチ “ダークサイド・オブ・ザ・ムーン” VS. ブライトリング/クロノマット GMT ブラックスチール

FEATUREスペックテスト
2014.02.03

バランスウェイト付きフリースプラングテンプ、シリコン製ヒゲゼンマイ、コーアクシャル脱進機は、まさにオメガのお家芸である。

独自の解決策

クロノマットGMTブラックスチールの30分積算計は、1分ごとに針がジャンプする。オメガは、クロノマットとは異なる手法でクロノグラフカウンターを設計した。12時間積算計と30分積算計は別々のインダイアルで配置されるのが通例だが、キャリバー9300では3時位置のクロノグラフカウンターに12時間積算計と60分積算計がひとつにまとめられているのだ。
とはいえ、この同軸積算クロノグラフカウンター、視認性にはあまり貢献していない。2本の針は長さがはっきりと違うので、分と時間を読み違えることはないものの、プリントされた数字が時間を示していることから、分を判読する際に一瞬、戸惑ってしまうのだ。計測時間を時刻と同じように読み取ることができるのは便利だが、分については30分積算計が独立したブライトリングの方が、オメガよりも1分を示すスケールの間隔が広いこともあって読み取りやすい。結論としては、30分未満の計時の場合はブライトリングが便利で、数時間単位で計測するならオメガの方が優れていると言えるだろう。
オメガでもブライトリングでも、時刻合わせと日付調整の手順は同じである。リュウズの2段目のポジションでは秒針が止まり、通常と同じように時針と分針を合わせることができる。ブライトリングの場合、ここではGMT針も同時に動く。リュウズを1段引き出すと、時針を1時間刻みで合わせられるため、午前零時を越える時点で日付も合わせることができる。日付表示は、時針を進めても戻しても調整することができる。日付早送り機能のように素早くというわけにはいかないが、別のタイムゾーンに移動する場合や、サマータイムとウィンタータイムを切り替える際に、秒や分を変えることなく時刻を合わせられるのは便利である。なお、ブライトリングのGMT針は、このポジションでは動かない。〝ダークサイド・オブ・ザ・ムーン〟はセカンドタイムゾーン非搭載モデルだが、キャリバー9300は搭載を見据えた設計となっている。
世界限定1000本のクロノマットGMTブラックスチールではさらに、第3のタイムゾーンを表示することもできる。ミニッツスケールを配した逆回転防止ベゼルを備えるクロノマットGMTのスタンダードバージョンとは異なり、両方向回転式の24時間ベゼルを備えているためである。ベゼルは1時間刻みで噛み合い、文字盤にも24時間目盛りが配されているので、この第3タイムゾーンは実際に機能する。

キャリバー9300とキャリバーB04は双方とも、2週間に及ぶクロノメーター検定に合格している。そのため、これらのムーブメントは分解される前に、歩度測定機でその実力を証明してみせなければならなかった。ブライトリングの場合、日差はごくわずかで、平常時はどの姿勢でもマイナス1秒/日からプラス3秒/日の範囲内で、計算上の平均日差はプラス1・2秒/日だった。クロノグラフ作動時も最大姿勢差は6秒で、平均日差はマイナス1・3秒/日と小さい。振り角も力強かった。垂直姿勢でやや振り落ちが見られたものの、それでも優秀な数値である。

ブライトリングとオメガ いずれ劣らぬ精度

オメガも、平常時で最大姿勢差がわずか3秒、平均日差がプラス2・3秒/日という高精度を叩き出し、クロノグラフを作動させても最大姿勢差は4秒、平均日差はプラス2・2秒/日と、精度はあまり落ちなかった。振り角も驚くほど安定しており、クロノグラフを作動させ、水平姿勢から垂直姿勢に変えても、キャリバー9300では平均して10度しか落ちなかった。ブライトリングの振り落ちと比較すると約3分の1という安定感である。
視認性に関しては、両者とも両面に無反射コーティングを施したサファイアクリスタル製風防を備えており、あまり違いはない。オメガの方が、文字盤の構成がシンプルであることからポイントが高いが、文字盤は強く反射する。ブライトリングの場合は、多くの表示要素や目盛りがあるために、必要な情報をピンポイントでとらえるまでに少し時間がかかる。暗所ではオメガの方がやや明るく発光するが、ブライトリングも時刻は十分に読み取りやすい。