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オリス/アクイス デプスゲージ(1/1) 2013年11月号(No.49)

ORIS AQUIS DEPTH GAUGE

オリスが発表した手に入れやすい価格のダイバーズウォッチには水深計が搭載されている。この時計を身に着けて、ひと呼吸で水深30mまで潜水し、その実力を検証する。

イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
OK-Photography(時計)、フレデリック・フランケ(潜水時): 写真 Photographs by OK-Photography, Frederik Franke
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto


point
・魅力的な価格
・良好な加工
・独自のデザイン
・ストラップの長さを調整できる範囲が広い

point
・最大水深が表示できない

水の精に贈る圧力計

プネアとも呼ばれるフリーダイビングは、古くから行われている潜水の様式である。何世紀も前から、人間は真珠や海綿を求めて海に潜ってきた。そして、より長い間、水中にいられるように、できるだけ長く呼吸を止める方法を身に着けていったのである。

水深計を搭載したダイバーズウォッチを市場に提供しているのはオリスだけではない。IWCやジャガー・ルクルト、ブランパン、パネライも、水深計を積んだダイバーズウォッチを製作している。パネライは電子式水深計を採用しているが、ほかのブランドでは機械式水深計が装備されている。機械式水深計では、薄い膜や板バネ、あるいはこれらに類する部品が水圧で押され、この動きが1本の表示針に伝達される仕組みになっている。ブランパンとIWCのモデルではこれに加え、スプリットセコンド機構を応用した最大水深を示す表示針が追加装備されている。ただし、ここで挙げたモデルは、価格がどれも100万円を大幅に上回ることを付け加えておかなければならない。

ボイルの法則に基づく水深計

オリスは、前述のブランドとはまったく別の方法で水深計を完成させた。水深計のためにオリスが応用した手法は、驚くほどシンプルなものだった。ボイルの法則である。ボイルの法則とは、一定の温度の下では気体の体積が圧力に反比例することを示した法則である。したがって、圧力が倍になれば気体の体積は半分になる。この原理を応用した水深計は、すでに以前から存在している。一方の端部がふさがれた、円形に曲げられた小さな導水管で構成されており、目盛りが付いている。圧縮された空気と浸入した水の境目部分で、水深を読み取る仕組みである。
そればかりか、このタイプの水深計を搭載した時計も新しいものではない。この水深計を搭載した初の腕時計はおそらく、ファーブル・ルーバが1966年に発表したバスィ50だろう。これ以外にも、ボイルの法則を応用した水深計とダイバーズウォッチを組み合わせたモデルを作るブランドはいくつかあった。だが、こうしたモデルでは、風防の上半分や外周に導水管が外付けされ、時計がやや粗野な印象に仕上がっていた。オリスは、水深計を風防と一体化させることに初めて成功したブランドである。これを実現するためには、風防の側面にフライス加工で均等な溝を施し、12時位置の水が浸入するための穴を風防の12時位置に外側から開ける必要があった。こうして彫られた溝を風防のガスケットで密封することで、水深計のための導水管が出来上がる。水深を示すメートル目盛りは風防内面に印字されており、導水管が隣接していることから、深度は非常に読み取りやすい。深度表示目盛りの色に黄色が選ばれたのは、さまざまな試験の結果、最も判読しやすい色と判断されたためである。

ネジ留めされたリュウズプロテクター、堅牢なラグ、サテン仕上げのブラックセラミックトップリング付き逆回転防止ベゼル、そして、黄色の深度表示目盛りが、存在感あふれる外観を演出する。

水深10mまでは正確な判読が可能

深度表示目盛りの特徴は、表示値が指数関数的に上昇することである。つまり、水深10mまでは正確な水深を知ることができ、10mから16mまでは1m単位で水深を判読することができる。水深が30mを超えると、10m単位での読み取りとなる。あまり深くない水中では有益な表示機能だが、水深が深くなればもちろんデメリットとなる。ただ、スポーツとしてダイビングを楽しむ場合は、いずれにしても30m以上は潜水すべきでないとされているし、アクイス デプスゲージは水深30mまでなら十分正確な深度を表示してくれる。針で表示するタイプの水深計を搭載した時計に比べてもうひとつメリットと言えるのは、慣性を利用した表示メカニズムではないことである。アクイス デプスゲージの水深計は構造上、摩擦がまったく発生しないことから、水中におけるいかなる垂直の動きにも敏感に反応する。これは、テストダイバーも称賛した点である。針で表示するタイプでは多くの場合、水深に大きな変化がないと表示針が反応しない。表示針を採用した機構では構造上、摩擦が発生することから、針が動き出すために比較的大きなエネルギーを必要とするためである。

水深計の測定精度について、実地テストでは驚くほど良い結果を得ることができた。ダイブコンピューターが24・7mと表示した場所で、オリスの水深計は約25mと表示した。その差はわずか1・2%である。オリスによると、ダイブコンピューターとの差は1%未満とされている。ダイブコンピューターでは、温度補正機能を持ち、ピエゾ効果(圧電効果)を利用した圧電センサーによって測定が行われる。海水の塩分濃度と同様、温度も測定精度に影響を及ぼすファクターだが、塩分濃度による影響はそれほど大きくない。オリスの水深計では、地中海の塩分濃度を基準に目盛りが設定されている。だが、ボイル式の水深計の場合は、その特殊な構造により、むしろ温度による影響のほうが懸念される。晴天下で気温40℃、水温20℃の環境では、海に入ることで時計が冷え、その結果、気体の体積が約5%縮小するからだ。より正確な測定結果を求めるなら、ダイビングの規則で指示されているように、潜降する前に時計を着用したまま一定の時間、水中に滞在し、時計が冷えるのを待てば、気体の温度差を最小限に抑えることができるだろう。
ダイブコンピューターをアクイス デプスゲージで代替することは不可能であり、本来の目的ではない。だが、緊急対策用に水深計をもうひとつ携行するのは、賢明と言えるのではないだろうか。緊急事態が発生した場合でもアクイス デプスゲージがあれば、水深5mでのセーフティストップ(訳注:潜水深度5mまで浮上して3~5分間とどまり、体内に溜まった窒素を放出する安全停止)だけは確実に実施することができる。通常3分間のセーフティストップを行う際は、扱いやすい回転ベゼルが停止時間を計測するのに役に立つ。

(右上)水中で検証すると、オリス アクイス デプスゲージの水深計が約25mを示す一方、ダイブコンピューターは24.7mを表示している。ごくわずかな差がアクイス デプスゲージの水深計の正確さを証明する。
(左)アプネアとも呼ばれるフリーダイビングは、ひと呼吸でどれだけ海深く潜れるかを競う競技である。オリスの水深計がその本領を発揮する場所だ。フリーダイビングにはさまざまな方法があり、フィンを着用して潜降するウィズ・フィンと素足で潜るウィズアウト・フィン、あるいは、ノー・リミットと言われる危険な潜水競技もある。ノー・リミットでは、ザボーラと呼ばれる乗り物(訳注:錘)に乗って潜降し、エアバルーンに空気を注入して再び浮上する。

扱いやすく傷に強いベゼル

風防と一体型の水深計は機能的で有意義な付加機能だが、回転ベゼルもまた、アクイス デプスゲージを秀逸なダイバーズウォッチたらしめる重要な要素となっている。テストダイバーが称賛したように、この逆回転防止ベゼルはとても扱いやすく、回すのに少し力が必要なものの、30秒刻みでクリーンに噛み合う。ベゼルのブラックセラミックトップリングにはサテン仕上げが施されており、美しさを演出するだけでなく、表面の美観を損ねる傷を防止する効果も併せ持つ。実際、実地テストを行った後で確認したところ、部分的にポリッシュ仕上げが施されたバックルには明らかな傷跡があったが、ケースには傷が見当たらなかった。刻み目付きの回転ベゼルは同時に保護機能も有しているのである。

視認性も良好で、ベゼルの夜光マーカーは針やインデックスと同様に暗所でもはっきりと発光し、光が減少する潜水中も潜水時間と時刻を迅速に把握することができる。オリスによる深度表示目盛りのさらなるメリットは、見やすく構成された文字盤を阻害する針を必要としない点である。

リュウズも簡単に操作することができ、ネジ留めされたリュウズプロテクターによって、衝撃が加わった場合でも安全が確保される。風防側面には水深測定のための溝が彫られているが、ねじ込み式裏蓋、厚い風防、そして、ねじ込み式リュウズの恩恵により、ケースは水深500mの水圧に耐える防水性を備えている。ダイビングには十分余裕のある防水性であり、10mの飛び板から飛び込んでも問題ない。

ラバーストラップを延長できるのは非常に有益である。フォールディングバックルにはバックルを開くための2個のセーフティーボタンのほかに、プッシュボタンが2個、追加装備されており、これらを操作することでストラップは4段階で最大約16㎜延長することができる。そのうえ、バックルにはピンが付いており、これを留めるラバーストラップの穴を変えることで、ストラップをさらに4㎝まで延長できるようになっている。このエクステンション機能を利用すれば、かなり厚みのあるドライスーツでもストラップの長さを合わせることができる。オリスの配慮はこれだけではない。ストラップの先端はイカリ型に成形加工されており、この部分を両側から押し縮めないとストラップがバックルから外れないようになっている。そのため、バックルのふたつのピンがストラップの穴から外れても時計が滑り落ちることはない。もっとも、ピンが穴から外れることは十中八九、起きないが。アクイス デプスゲージのセットにはこのほか、交換用ステンレススティール製ブレスレットと、ストラップを交換するための工具としてドライバーが同梱されている。

アクイス デプスゲージは、機能上、ダイビングに極めてふさわしく、がっしりとしたデザインによってひと目でダイバーズウォッチであることが分かる時計である。ネジ留め式の堅牢なラグ、ダイバーベゼルのサテン仕上げのブラックセラミックトップリング、水深を表示する黄色のメートル目盛り、そして、黒のラバーストラップが、この時計に非常にスポーティーな印象を与えている。その一方で、46㎜という堂々たるケース径にもかかわらず、アクイス デプスゲージはそれほど巨大には見えない。また、サイズが大きいことで着用時に不快感が生じることもない。ケースから伸びたラグと、長さを細かく調整できるフレキシブルなラバーストラップの恩恵により、驚くほどしっかりと手首に収まるのだ。ケースバックがなめらかであることと、バックルの下にラバーストラップの端部が収まっていることも、快適な装着感に貢献している。加工品質もなかなかのもので、隅々まで丁寧に仕上げられている。ただ、ラグの内側のみ、加工の痕跡が見られるのが残念だ。
メートルとフィートの換算表が刻印されたねじ込み式裏蓋の下では、セリタ製自動巻きムーブメントが時を刻む。オリスの象徴であるレッドローターでチューンアップされているが、セリタSW200は信頼性の高いETA2824の代替ムーブメントであり、堅固で扱いやすい構造を持つことで知られている。歩度測定機で行ったテストでも、それぞれの姿勢でプラス1秒/日からプラス5秒/日というプラス傾向の日差を示し、計算上の平均日差はわずかプラス2・5秒/日と、優秀な結果でその実力を証明してみせた。振り角もすべての姿勢で力強く、安定していた。

名高いETA製キャリバー2824の代替ムーブメントであるセリタSW200は、オリス・キャリバー733となって高い精度を叩き出す。

手に入れやすい価格の水深計付き機械式時計

高い精度に加え、コストパフォーマンスが素晴らしいのもアクイス デプスゲージの長所である。32万5500円を支払えば、ラバーストラップとステンレススティール製ブレスレット、ストラップ交換用工具、水深計のクリーニングを行うための専用ツールがセットになった水深計付き機械式時計を手に入れることができる。スペック、加工品質、巧緻を極めた数多くのディテールなど、すべてにおいて満足のいく内容で、価格がこれ以上だったとしても十分、納得できるだろう。水深計を搭載した機械式時計で現在、市場に出回っているモデルはオリスのほかに3機種あるが、どれもアクイス デプスゲージの何倍もの価格で販売されている。
水深計を必要としないユーザーには、アクイス デプスゲージと同じデザインでケース径が43㎜と小ぶりで、300m防水のアクイス デイトも用意されている。もちろん、黄色のメートル目盛りは付いていないが、16万8000円(ラバーストラップ仕様)で手に入れることができる。
テネリフェ島の海岸で行った実地テストでは、アクイス デプスゲージがダイビングにふさわしい理由が、信頼性の高い水深計にあるだけではないことが分かった。美しく、存在感あふれるスポーティーなこの時計は、高い加工品質と精度を備え、手に入れやすい価格であり、水中から上がっても、ひと呼吸よりもずっと長い間、堂々とした風貌を失わない。優れたダイバーズウォッチとしてはもちろん、陸上でもお薦めできる十分な実力を持っているのだ。

ダイバーへの配慮は完璧。ストラップは、バックルのプッシュボタンで段階的に延長できるうえ、バックルの位置を変えることでさらに延長が可能。

テストダイバーからひと言

「ボイルの法則に基づいて機能する水深計を搭載したダイバーズウォッチとは、型破りなコンセプトだと思います。水中で使用したところ、ダイブコンピューターの表示との差はごくわずかでした。水深30mを超えると大まかな深度しか把握できませんが、水深を表示する黄色のメートル目盛り問題なく判読できます。ストラップを延長できる範囲がかなり限られているダイバーズウォッチが数多くある中で、さまざまな厚さのダイビングスーツに合わせて長さを調整できるストラップとバックルは秀逸です。逆回転防止ベゼルは、初めのうち、動きがやや固いように感じますが、グローブをしたままでも簡単に操作することができます。また、ダイビングにおいては視認性がとても重要ですが、水深が深く、光の条件が悪くても、アクイス デプスゲージはとても良好な視認性を発揮してくれます」

フリーダイバー、ダイビングインストラクター、また、ドイツ・ウルムのダイビングスクール「スキューバマリン」のオーナーでもあるイェンス・ケッペ(右)。

技術仕様
オリス/アクイス デプスゲージ

製造者: オリス
Ref.: Ref.733 7675 4154
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付表示、水深計
ムーブメント: セリタSW200、自動巻き、2万8800振動/時、26石、耐震軸受け(インカブロック使用)、調整用偏心ネジ付きエタクロン式緩急調整装置、パワーリザーブ約38時間、直径25.6㎜、厚さ4.6㎜
ケース: ステンレススティール製、ブラックセラミックトップリング付き逆回転防止ベゼル、サファイアクリスタル製風防(両面球面カット、両面無反射コーティング)、ねじ込み式リュウズ、ステンレススティール製ねじ込み式裏蓋、500m防水
ストラップとバックル: ラバーストラップおよびステンレススティール製フォールディングバックル(セーフティーボタンとエクステンション付き)、交換用ステンレススティール製ブレスレット
サイズ: 直径46㎜、厚さ15㎜、総重量172g
価格: 32万5500円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時    
文字盤上 +2
文字盤下 +3
3時上 +5
3時下 +1
3時左 +1
3時右 +3
最大姿勢差: 4
平均日差: +2.5
平均振り角:
水平姿勢 300°
垂直姿勢 281°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 8pt.
デザイン(15pt.) 13pt.
視認性(5pt.) 5pt.
装着性(10pt.) 9pt.
ムーブメント(20pt.) 11pt.
精度安定性(10pt.) 9pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 14pt.
合計 83pt.

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