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ロジェ・デュブイ / モネガスク クロノグラフ(1/1) 2013年01月号(No.44)

ROGER DUBUIS CHRONOGRAPH LA MONÉGASQUE

これまで、奇抜さを強く前面に押し出してきたロジェ・デュブイは、必ずしもドイツ市場をターゲットとしたブランドではなかった。だが、「モネガスク クロノグラフ」のような新しいモデルによって、ロジェ・デュブイは間もなくドイツ市場を席巻するだろう。

アレクサンダー・クルプ: 文 Text by Alexander Krupp
ニック・シェルツェル: 写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto


point
・ジュネーブ・シールが刻印された美しいマニュファクチュールムーブメント
・調和が取れつつもエキサイティングなデザイン
・良質な加工

point
・ストップセコンドが搭載されていない
・精度がマイナス寄り

原点回帰という新機軸

2011年1月のS.I.H.H.で、マニュファクチュール、ロジェ・デュブイは、これまで“ロジェらしい”とされてきた個性的なデザインとは異なる控えめな新コレクションで、来場者を驚かせた。“生粋のモナコ人”を意味する“モネガスク”が、新しいコレクションの名称である。モンテカルロのきらびやかなカジノの世界から着想を得たものであるが、その意匠にはロジェ・デュブイの原点である「シンパシー」へのオマージュを見て取ることができる。

近づいて観察してみると、世界の大富豪が集まるモナコ公国のカジノを連想させる、まばゆい光彩を放つ魅惑的な華やかさは、このモデルからはほとんど感じられない。しかし、だからこそモネガスクは、思慮深く、技術志向の強いドイツの時計愛好家にとって魅力的に映るのだろう。1995年に創業したマニュファクチュール、ロジェ・デュブイがこれまで発表してきた多くのモデルとは異なり、新コレクションでは、刻み目のあるいかついケースも、形を崩したローマ数字や、宝石を隙間なくセッティングした刺激的なカラーの文字盤もない。
新しいコレクションの中心的な存在は、スモールセコンドを搭載した「モネガスク オートマティック」と今回のテストウォッチである「モネガスク クロノグラフ」である。両モデルとも、ステンレススティールとローズゴールド製のケースで入手することができ、ほとんどクラシカルと評せるようなデザインを持つ。そこへ行くと、128本のみの限定生産で、すでに完売のクロノグラフの限定版、「モネガスク ビッグナンバー クロノグラフ」では、カジノの世界がより明確に表現されており、緑、赤、黒のカラーアクセントを備えたローズゴールドの文字盤が、カジノを象徴するルーレットを想起させる。

今回のテストウォッチであるモネガスク クロノグラフは、それよりもずっと控えめで、文字盤外周のフランジ(見返し)に転写された、さりげないダークレッドのタキメータースケールが、唯一のカラーアクセントとなっている。文字盤はこのほか、グレー、ブラック、シルバーでまとめられており、メインダイアルとサブダイアルには、白い目盛りが配されている。全体的な印象はおとなしいものの、文字盤には美しいディテールが満載で、観る者を楽しませてくれる。サンレイ仕上げを施した文字盤中央部に始まり、サーキュラーサテン仕上げのアワーリング、また、これに段差を付け、同心円状の模様彫りが刻まれたサブダイアル、そして、アプライドのアワーインデックスなど、あたかもつややかに塗装されたルーレット盤を眺めているようである。さらに、時刻を表示するシルバーカラーの3本の針と小さなクロノグラフ分針には中央を境にファセットが設けられ、センターのクロノグラフ秒針は先端部分が白くペイントされている。
文字盤の加工品質は、全体的に極めて高い。ただ、時計師が使うルーペで長時間、観察してみると、2時のアワーインデックスの左側の縁にわずかなにじみがあり、クロノグラフ秒針の先端のペイントにも微細なムラがあるのが分かる。

美しい大型ムーブメント。直径31mmのキャリバーRD680には、高い加工品質の証としてジュネーブ・シールが刻印されている。

大きなケースと美しい内部機構

一辺の長さが44mmのクッション型のステンレススティールケースは、文字盤以上に品質が高く、作り込みにはまったく非の打ち所がない。角とエッジがあるにもかかわらず、そのフォルムは全体的に流麗で柔らかい印象を与える。この印象は、先端部に丸みを持たせた伸びやかなラグや、ベゼル、ミドルケース、ケースバック、クロノグラフのプッシュボタンなど、サテン仕上げの面とポリッシュ仕上げのファセットを持つ構成部品によって、より一層強調されている。
クロノグラフのふたつのプッシュボタンは、フォルムが極めてスリムで、ケースにフライス加工で開けられた穴にぴったりと収まっている。リュウズ上側のスタート/ストップボタンは押し心地が極めて軽いが、下側のリセットボタンはやや強い力で押し込まなければならない。刻みの付いた大きなリュウズはねじ込み式ではなく、爪を使わなくてもスムーズに引き出すことができる。快適な操作を実現するために犠牲となってしまったのは、低く設定された防水性である。だが、5気圧防水なら、ドレスウォッチとしては十分な性能だろう。

特殊な形状の溝を持つ4本のネジで固定されたサファイアクリスタルのトランスパレントバックは、手首に心地よくなじむ。トランスパレントバックの内側で時を刻むのは、自動巻きキャリバーRD680である。クロノグラフ機構は、マイクロローターと魅力あるオープンな構造により、何物にも妨げられることなく観賞することができる。クロノグラフのスタート/ストップ機能は、コラムホイールを使用した伝統的な手法で制御され、クロノグラフは最新式の垂直クラッチによって始動する(写真ではテンプの右側)。垂直クラッチの恩恵により、クラッチホイールはその下にある4番車に確実に連結し、その結果、クロノグラフは針飛びなく始動する。歯車が同一面で横にスライドして噛み合う古典的な水平クラッチとは異なり、垂直クラッチでは連結する際にふたつの歯の先端が互いにぶつかり合うことがない。そのため、クロノグラフ秒針は、歯車にかかる負荷から衝撃を受けて前方にずれることなく、正確に始動することができるのだ。

ロジェ・デュブイの自社製ムーブメントのさらなる長所は、すべての構成部品に最高級の仕上げが施されている点である。非の打ち所のないコート・ド・ジュネーブやペルラージュ、ネジ頭のポリッシュやクロノグラフレバーのヘアライン仕上げはもちろん、エッジに施された面取りとポリッシュも、ロジェ・デュブイにとっては当然なされるべき仕事なのである。
ムーブメントの設計と同様に、仕上げにおいてもジュネーブ・シールの認定基準を満たしているロジェ・デュブイは、どのムーブメントにもジュネーブ・シールが刻印されている(写真ではテンプの上)。ロジェ・デュブイは一貫生産を行うマニュファクチュールとして、ムーブメント部品を専門メーカーからほとんど購入することなく、巨額の開発・製造コストを費やして部品を自製している。したがって、すべての製品にジュネーブ・シールが付与されている事実は、同社の高い技術力を示す何よりの証左である。

そのジュネーブ・シールの規定は2012年6月より改定され、認定対象が従来のようにムーブメントのみに留まらず、腕時計全体へと拡大された。そのため、ジュネーブ・シールは今後、エンドユーザーにとってこれまで以上に重要で信憑性のある、購入を後押しする要素となるだろう。ただし、現在、時計店で入手可能なモネガスクのモデルには、規定が改定される前にすでにジュネーブ・シールが付与されているため、新規定に基づいて認定された時計が店頭に並ぶのは、2012年末以降になるという。
余談だが、ロジェ・デュブイは、新モデルのファミリーを携えてドイツの購買者をやみくもに狙っているのではなく、ドイツ国内での販路の拡大にも注意を払っている。ドイツでは現在、ハンブルク、デュッセルドルフ、フランクフルト・アム・マインのブヘラや、ミュンヘンのヴェンペ、シュトゥットガルトのクッター、ケルンのタイム・スクエア、バーデンバーデンのサファイアなど、7つの時計宝飾店が、知名度がまだそれほど高くないものの高価格帯に属するこのブランドを取り扱っている。

シンプルなエレガンス。2011年発表の「モネガスク クロノグラフ」だが、2012年にはホワイトダイアルの新作がローズゴールドとステンレススティールのモデルにそれぞれ加わった。

長所ばかりではない

キャリバーRD680に果たして弱点はあるのだろうか? 答えはイエスである。まずは、ストップセコンド機能が搭載されておらず、スモールセコンドの針がリュウズを引き出しても動き続けているため、時刻を正確に合わせることができない点である。時計メゾンの長い歴史の中から生まれ、伝統を現代に受け継ぐべき運命を背負ったメカニズムならともかく、21世紀になってから開発されたムーブメントにストップセコンド機能がないのは、基本的に不釣り合いである。
ふたつ目は、緩急調整機構が緩急針のみを使用した極めてシンプルな構造になっている点である。マニュファクチュールムーブメントを搭載し、高価格帯に属する時計なら、バランスウェイトを備えたフリースプラングテンプか、ロジェ・デュブイが通常採用しているスワンネック型の緩急調整装置は期待したいところだ。とは言え、このムーブメントの場合、脱進機の上をセンターローターが回転するロジェ・デュブイのほかの自動巻きムーブメントとは異なり、マイクロローターが脱進機と同一の構造面に配されているために、スワンネック型の緩急調整装置を搭載するスペースがないのも事実である。

ムーブメント自体は本当に素晴らしいのだが、テストウォッチの精度が理想的とは言い難かった点は、3つ目の短所として述べておかなければならない。ウィッチ製歩度測定機で観察された最大姿勢差は、平常時で5秒、クロノグラフ作動時は6秒と、安定していたものの、残念ながらこの時計の平均日差は実際の着用時にもマイナス2・7秒/日で、この数値は平常時もクロノグラフ作動時も変わらなかった。
一方、ほとんどの姿勢において、平常時とクロノグラフ作動時で歩度と振り角に変化が観察されなかったのは、注目に値する喜ばしい結果である。これは、このクロノグラフ機構が省エネ設計であることを意味するとともに、ジュネーブ・シールの刻印が示す最高の品質、つまり、機能を司るすべての構成部品が摩擦をなるべく発生させずに連係プレーできるように、完璧に精密加工されていることの裏付けでもあるのだ。

ラグジュアリーウォッチはいずれにしても、時には数日間、腕から外し、再度、時刻を合わせ直すものなので、精度については実際、それほど差し障りがないにしても、視認性にやや難のある点が、着用テストでは日中に何度も気になった。文字盤と針はコントラストに乏しく、サブダイアルに配されたダークカラーの数字もほとんど認識することができなかった。その代わり、すべての針が適切な長さに設計されているのは好感が持てた。これは、ラグジュアリーウォッチといえども決して当たり前のことではない。有名な時計メゾンや、機能的なタイムピースで名高いブランドでさえ、すべての針をスケールにぴったり届くように設計するというディテールを徹底できていないことも多いのだ。

適切な長さの針のほか、モネガスク クロノグラフでは、センターのクロノグラフ秒針の白い先端部が文字盤のグレートーンから唯一、引き立つ要素として、安堵感を与えている。
視認性においてはやや欠如していた快適性だが、装着感は非常に心地よい。ストラップとバックルも、ケースバックと同様に手首へのなじみが良好だ。その上、ストラップとバックルは作りが極めて美麗である。手縫いのアリゲーターストラップはへり返し仕立てで、無垢材から削り出し加工されたセーフティーフォールディングバックルには入念にポリッシュ仕上げが施されている。テストウォッチとして編集部に送られてきた個体で唯一、気になったのは、アリゲーターストラップの表革に艶がなく、斑の入り方が美しくなかった点である。その他の要素があまりにも美麗なだけに、審美眼のある愛好家からは注意を怠ったと評されてしまうかもしれない。

こうした点を除けば、この時計は不注意とは無縁の仕上がりを見せている。すべての構成部品は品質が高く、部品同士は熟考を尽くした上で調整されている。モネガスク クロノグラフは、秀逸な機能、素晴らしい風貌、高い加工品質を備えたモデルなのだ。それでもやはり、224万7000円という価格はかなり高額な設定である。だが、新コレクションが控えめな造形美を特色としてはいても、この強気とも言える価格設定にこそ、奇抜なラグジュアリーブランド、ロジェ・デュブイの自信が表れているのである。ブランドの知名度や投資対象としての確かな価値を重視するよりも、新たな道を開拓したいと考えるのが、ロジェ・デュブイの時計を求める愛好家なのだ。そして、新たな道を歩むのにモネガスク クロノグラフほど気持ちよく、ふさわしい相棒はないのである。

完全無欠まであと一歩なのが残念。ストラップの加工自体は非の打ち所がないが、斑の入り方があまり美しくない。

技術仕様
ロジェ・デュブイ/モネガスク クロノグラフ

製造者: ロジェ・デュブイ
Ref.: MG44-680-90-00/0ER01/B
機能: 時、分、スモールセコンド、30分積算計を備えたクロノグラフ
ムーブメント: ロジェ・デュブイ製キャリバーRD680、自動巻き(マイクロローター搭載)、ジュネーブ・シール付き、2万8800振動/時、42石、緩急針による緩急調整機構、耐震軸受け(キフ使用)、コラムホイール、垂直クラッチ、パワーリザーブ約48時間、直径31mm、厚さ6.3mm
ケース: SS製、ドーム型サファイアクリスタル製風防(両面無反射コーティング)、4本のネジで固定されたサファイアクリスタル製トランスパレントバック、5気圧防水
ストラップとバックル: へり返し仕立ての手縫いアリゲーターストラップとSS製セーフティーフォールディングバックル
サイズ: 縦44×横44 mm、厚さ13.2mm、重量123g
バリエーション: ブラックPVDコーティングのチタン製ベゼルを備えたローズゴールドモデル(354万9000円)
価格: 224万7000円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時     / クロノグラフ作動時
文字盤上 -3 -3
文字盤下 -4 -4
3時上 0 +1
3時下 -1 -2
3時左 -3 -3
3時右 -5 -5
最大姿勢差: 5 5
平均日差: -2.7 +2.3
平均振り角:
水平姿勢 286° 285°
垂直姿勢 253° 253°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 4pt.
ケース(10pt.) 10pt.
デザイン(15pt.) 15pt.
視認性(5pt.) 2pt.
装着性(10pt.) 9pt.
ムーブメント(20pt.) 17pt.
精度安定性(10pt.) 6pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 10pt.
合計 81pt.

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